気になるのは当時の所得状況です。1971年の大卒初任給(平均、男性。以下同)は46,400円でした。48年前はこういう金額だったのですね。一方、ハンバーガーの価格は80円で、初任給に対する割合は0.17%でした。ちなみに、少し古いデータですが2017年の大卒初任給は206,100円、ハンバーガーの価格は100円(税込み)ですから、割合は0.05%です。

しかし、この初任給は額面金額であり、税金や社会保険料などを控除された実際の手取り額は、おおよそ▲15%くらい減ると見られます。すると、1971年の割合は0.2%、2017年は0.06%と推計されます(筆者の試算)。さらには、消費税の影響も加味しなければなりませんが、いずれにせよ、ハンバーガーの実質価格は約3分の1に下落したと言えましょう。

また、1971年の大卒初任給は、消費者物価指数の変動を加味した現在の貨幣価値で表すと、約152,000円と推計されています。同じ割合で試算すると、発売当時80円だったハンバーガーの現在価格は約262円にもなります。この計算方法だと、3分の1までは行きませんが、この48年間で約▲6割下落したことになります。

ハンバーガーは安くなり過ぎたのでしょうか? それとも、販売当初が高過ぎたのでしょうか?

決して安くなかったハンバーガーを大衆に広めたマクドナルドの功罪

1つ気になるのは、最大手のマクドナルドの価格推移です。現在は1個100円で安定していますが、バブル経済期~1990年代前半までは概ね200円でした。ところが、1995年からいきなり130円に値下げし、1990年代後半には期間限定で最安65円も登場します。

そして、2000年代に入ってから“平日65円”が始まり、期間限定では最安値59円が登場しました。その後、2003年に80円に値上げし、2005年からはさらに100円へと再値上げして現在に至っています(注:2013年は120円)。

こうして見ると、マクドナルドの価格戦略の意図が不透明であるように感じてしまいます。そして、こうした安売り戦略が、ハンバーガーをデフレ時代の代表的な食品へと導いたと言えます。確かに、ハンバーガーは身近な食品になりましたが、お世辞にもハンバーガーの「価値」を高めたとは言えない気がします。

ハンバーガーは多種多様、“適正価格”を算出するのは無意味?

ちなみに、他のハンバーガー店での価格(ハンバーガーの単品、税込み)は、ロッテリアが180円、ドムドムが200円、モスバーガーは220円です。ハンバーガーといっても、全く同じ商品ではありませんが、随分と価格差があるのは事実です。個人の嗜好は様々ですから、ハンバーガーの“適正価格”を出すのは難しいようです。

ただ、食材の価格高騰等により値上げが相次ぐ外食産業の中において、ハンバーガーは全くといっていいほど値上げが実施されていないメニューの1つでもあります。

そんなことに思いを巡らせながら、ハンバーガーの日に改めて、ハンバーガーを味わうのも悪くないのではないでしょう。

葛西 裕一