また、栄養分では、ウナギはアナゴの約5倍にも上るレチノール(ビタミンA)を含み、ビタミンB1、B2、D、E、カルシウムなどもウナギの方が断然多いことが分かっています。さらに、近年話題になっているEPA(血液中のコレステロール減少に効果があるとされる)やDHA(脳の活性化に有効とされる)も、ウナギの方が多いことが判明しています。

こうして見ると、栄養分ではウナギに軍配が上がります。土用の丑の日の夏バテ予防効果という観点では、少なくとも、アナゴよりウナギを食べる価値の方が高いことは間違いないでしょう。

天然ウナギの握り

アナゴの漁獲量も激減、直近23年間で約4分の1へ

さて、近年はウナギ(注:正確には「ニホンウナギ」)の稚魚が激減したため、ウナギの流通量も大幅減少となり、その結果として価格高騰となっているのは前述の通りです。しかし、アナゴに関しては、同じような品不足や価格高騰のニュースをあまり聞かない気がします。現在、アナゴの漁獲量はどうなっているのでしょうか。

結論から言うと、アナゴの漁獲量も激減しています。1995年に約1万3千トンあった漁獲量は、2018年には約3千500トン(速報値、前年比+100トン増)へ減少しました。23年間で約▲73%減ですが、この減少ペースは、同期間における全体の漁獲量の減少度合(同▲46%減)と比べても大きなものとなっています。

一方で、アナゴの輸入量(主に中国や韓国から)は増えている模様であり、駅弁、回転寿司などで使われるアナゴは、その大部分が輸入品と考えられます。

ウナギの消費市場規模は激減してもアナゴの6~7倍以上ある

こうした状況にもかかわらず、ウナギに比べて、アナゴの品薄に関するニュースが少ないのは、市場規模と嗜好の差なのでしょうか。ちなみに、輸入品(注:加工品を含む)を含めた年間のウナギ生産量(=ほぼ消費量に近い)は2018年実績で約4万8,410トンあります。この数字は、9年前(2007年実績)の半分以下の規模です。

一方、養殖がほとんど実施されていないアナゴを同じベースで換算することは難しいですが、前述の漁獲量3千500トンに輸入品を含めても、高々7千~8千トンでしょう(筆者推計)。市場規模としてはウナギの約6分の1~7分の1と推察されます。これだけ市場規模が小さければ、品薄のニュースが少ないのも仕方ないことかもしれません。

やはり、日本人には“ウナギ神話”が根強く残っていると言うのは言い過ぎでしょうか。今一度、アナゴのおいしさも見直したいところです。

葛西 裕一