今年も夏本番の7月に入ったものの、沖縄地方を除くと梅雨明けもまだ先になる見込みで、「もう暑くて暑くてやっていられない!」という日は少ないようです。また、大雨に見舞われた地域も多く、早く夏らしい気候になってほしいと願っている人も多いでしょう。

最近は価格高騰のウナギ、代替魚も登場

さて、7月に入ると世間が盛り上がってくるのが「土用の丑の日」。今年は7月27日ですが、土用の丑の日といえばウナギ。栄養豊富なウナギを食べて夏本番を乗り切ろうという、江戸時代に始まった風習です。

しかしながら、近年はウナギの流通量が激減しているのはご承知の通りです。供給不足から価格も高騰しており、一部の輸入品を除くと、庶民の食べ物としては高嶺の花になりつつあるようです。確かに、昨年から養殖ウナギの生産量増加等による流通量増加で一時の“狂乱価格”は脱したものの、劇的な改善には程遠い状況と言えましょう。

一方、こうした事情を背景に、ウナギの代替食品(代替魚)も登場しており、ナマズやパンガシウス(注:東南アジア産の白身魚、ナマズの仲間)などがスーパーの売り場にも並んでいます。食した人の感想によれば、ウナギの味とよく似ており、言われなければ分からないとの評判も少なくないようです。

ところで、ウナギに近い食材として、穴子(アナゴ)を思いつく人は筆者だけではないでしょう。味は明らかにウナギと違いますが、見た目はよく似ています。それに、ウナギに負けず劣らず美味しいですし(注:筆者の感想です)、栄養分も高いような印象があります。にもかかわらず、ウナギの代わりに食するという話をあまり聞きません。

なぜでしょうか。そこで、「穴子の日」でもある7月5日を迎えるにあたって、その背景を考えてみます。

そもそも、アナゴとはどういう魚なのか?

アナゴは「ウナギ目アナゴ科」に属する魚類の総称です。ウナギによく似た細長い体型の海水魚で、食用や観賞用に利用される種類を多く含んでいます。その種類は意外に多く、150種類以上あることが知られています。

ただ、私たちが“あー、美味しい”と食べるアナゴは、浅い海の砂泥底に生息している「マアナゴ」と見ていいでしょう。なお、ここから先は、注記のない限り「アナゴ」=「マアナゴ」とします。

さて、アナゴの特徴を理解するには、見た目がよく似ているウナギと比較するのが分かりやすいかもしれません。

両方とも同じ「ウナギ目」に属しますが、ウナギは「ウナギ科」、アナゴは「アナゴ科」であり、全然別物なのです。まず、生態の違いを見てみると、ウナギは降河性の回遊魚(海で産卵し、ふ化した後に淡水域に遡上して河川や湖沼で成長する魚)であるのに対して、アナゴは海水魚(その一生を海で過ごす)です。

したがって、基本的には、川や湖でアナゴが獲れることはありません(一部地域の河口周辺を除く)。また、養殖もほとんどありませんが、最近は研究が進んでいるようです。

ウナギに含まれる栄養分はアナゴを圧倒

そして、最大の違いは、その栄養分と味です。ウナギはアナゴの約2倍の脂質を有しているため、ウナギの方が高カロリーで“こってり”とした味がします。一方、アナゴは低カロリーで“さっぱり”とした味です。