5月も終盤に入り、新年度の慌ただしさが落ち着いて将来のライフプランをじっくり考える時間を取りやすくなった方も多いのではないでしょうか。
セカンドライフを視野に入れ始める50歳代・60歳代にとって、特に高い関心を集めるのが「老後資金」の問題。
その資金計画の土台となるのが、誰もが加入している「公的年金」です。
本記事では、2026年度の年金額改定(基礎年金1.9%・厚生年金2.0%増額)という最新動向を押さえながら、年金制度の基本的な仕組みを分かりやすく解説します。
さらに、現役時代の働き方が将来の受給額にどう影響するのか、「5つのライフコース別」の具体的なシミュレーションもご紹介。
将来に向けた確実な備えを進めるために、まずはご自身の年金受給の目安を正しく理解していきましょう。
1. 公的年金の基本「3つの保障」と「2階建て構造」をわかりやすく解説
日本の公的年金制度には、老後の生活を支える老齢年金のほかに、2つの大切な保障機能があります。
1つは、けがや病気が原因で仕事や生活に制限が生じた場合に受け取れる「障害年金」です。
もう1つは、家計を支えていた方に万が一のことがあった場合に、遺された家族が受け取れる「遺族年金」です。
一般的に「年金」というと、リタイア後の「老齢年金」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
1.1 【基本】国民年金と厚生年金、その違いとは?
日本の公的年金は「2階建て構造」と表現されることがあります。
1階部分が「国民年金(基礎年金)」、2階部分が「厚生年金」で構成されており、現役時代の働き方によって将来受け取る年金額が大きく変わる仕組みです。
ここでは「国民年金」と「厚生年金」の基本的な違いと、それぞれの老齢年金の受給額について確認します。
1.2 1階部分にあたる「国民年金」の概要
加入対象者は?
- 原則として日本国内に住む20歳から60歳未満のすべての人(職業や国籍は問いません)
年金保険料は?
- 加入者全員が同じ金額ですが、年度ごとに見直されます(※1)
老齢年金の受給額は?
- 保険料を全期間(480カ月)納めると、65歳から満額(※2)の老齢基礎年金を受け取ることができます
※1 国民年金保険料:2026年度の月額は1万7920円です。
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度の月額は7万608円です。
1.3 2階部分にあたる「厚生年金」の概要
加入対象者は?
- 会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所(※3)に勤務し、一定の条件を満たす人(国民年金に上乗せして加入します)
年金保険料は?
- 収入に応じて保険料が決まります(上限額が設定されています)(※4)
老齢年金の受給額は?
- 加入していた期間や納付した保険料額によって、個人ごとに異なります
このように、国民年金と厚生年金とでは、加入対象者や保険料の決まり方、老齢年金額の計算方法に違いがあります。
このため、現役時代にどの年金制度に加入していたかによって、実際に受け取る老齢年金額には個人差が生じるのです。
※3 特定適用事業所:1年のうち6カ月以上、厚生年金保険の被保険者(短時間労働者や共済組合員は除く)の総数が51人以上となる見込みの企業などを指します。
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)と標準賞与額(上限150万円)に保険料率を乗じて計算されます。
1.4 2026年(令和8年)の年金支給日一覧:原則は偶数月の15日
公的年金は、原則として「偶数月の15日(※5)」に、前の2カ月分がまとめて支給される後払い方式です。
2026年の「年金支給日」と、その日に支給される「対象期間」は以下の通りです。
- 2026年2月13日(金):2025年12月・2026年1月分
- 2026年4月15日(水):2月・3月分
- 2026年6月15日(月):4月・5月分
- 2026年8月14日(金):6月・7月分
- 2026年10月15日(木):8月・9月分
- 2026年12月15日(火):10月・11月分
※5 支給日の15日が土曜日、日曜日、祝日にあたる場合は、その直前の金融機関営業日に前倒しで支給されます。
2. 次回6月15日振込分から「厚生年金・国民年金」どちらも年金額アップ
2026年度の年金額は、前年度と比較して基礎年金(国民年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の増額となります。
この改定後の新しい年金額は、4月と5月分がまとめて支給される6月支給分から適用されます。
2.1 2026年度における国民年金・厚生年金の受給額モデル
- 国民年金(老齢基礎年金・満額・1人分):月額7万608円(+1300円)
- 厚生年金(夫婦2人分のモデルケース):月額23万7279円(+4495円)
※昭和31年4月1日以前に生まれた方の老齢基礎年金の満額は、月額7万408円(前年度比+1300円)です。
※厚生年金のモデルケースは、平均的な収入(賞与を含む月額換算で45万5000円)の男性が40年間就業した場合に受け取り始める年金額(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金満額)の給付水準を示しています。
厚生労働省は、今回の年金額改定の発表に際して、現役時代の働き方や収入に応じた「多様なライフコース別の年金額」の例も公開しています。
3. 現役時代の働き方別《65歳以降の年金水準》5つのパターン別に確認!
年金の加入期間や現役時代の収入によって、将来の受給額はどのように変化するのでしょうか。
厚生労働省は、2026年度の年金額改定とあわせて、「多様なライフコースに応じた年金額」として、加入状況や年収ごとの年金額例を公表しました。
これは「2026年度に65歳になる人」を想定した年金額の概算で、男女別・加入履歴別に合計5つのパターンが示されています。
3.1 【パターン1】男性・厚生年金中心のケース
年金月額:17万6793円
- 平均厚生年金期間:39.8年
- 平均収入:50万9000円※賞与を含む月額換算。以下同様。
- 基礎年金:6万9951円
- 厚生年金:10万6842円
3.2 【パターン2】男性・国民年金(第1号被保険者)中心のケース
年金月額:6万3513円
- 平均厚生年金期間:7.6年
- 平均収入:36万4000円
- 基礎年金:4万8896円
- 厚生年金:1万4617円
3.3 【パターン3】女性・厚生年金中心のケース
年金月額:13万4640円
- 平均厚生年金期間:33.4年
- 平均収入:35万6000円
- 基礎年金:7万1881円
- 厚生年金:6万2759円
3.4 【パターン4】女性・国民年金(第1号被保険者)中心のケース
年金月額:6万1771円
- 平均厚生年金期間:6.5年
- 平均収入:25万1000円
- 基礎年金:5万3119円
- 厚生年金:8652円
3.5 【パターン5】女性・国民年金(第3号被保険者)中心のケース
年金月額:7万8249円
- 平均厚生年金期間:6.7年
- 平均収入:26万3000円
- 基礎年金:6万9016円
- 厚生年金:9234円
これらはあくまで一例ですが、厚生年金への加入期間が長く、現役時代の収入が高いほど、老後に受け取る年金額も多くなる傾向がわかります。
また、国民年金と厚生年金のどちらを中心に加入していたかが、年金水準に大きく影響していることも見て取れます。
4. 厚生年金と国民年金の平均受給月額はいくら?男女差や分布も確認
老後に受け取る年金額は、現役時代の加入状況によって一人ひとり異なります。
ここでは、60歳から90歳以上のすべての受給者を対象に、厚生年金と国民年金の受給額がどのように分布しているかを見ていきましょう。
4.1 厚生年金の平均月額:男女差と受給額の分布
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の全体の平均年金月額は15万289円でした。
男女別の内訳は以下の通りです。
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金部分を含んだ金額です。
年金月額の階級別受給者数
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金の平均月額は全体で15万円台ですが、男女で差があり、男性は16万円台、女性は11万円台となっています。
また、月額1万円未満の人から25万円を超える人まで受給額は幅広く分布しており、個人差が大きいことがうかがえます。
4.2 国民年金の平均月額:男女差と受給額の分布
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金の全体の平均年金月額は5万9310円でした。
男女別の内訳は以下の通りです。
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
年金月額の階級別受給者数
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の平均月額は男女ともに5万円台で、最も多い層は「6万円以上~7万円未満」です。
多くの人が満額に近い年金を受け取っている一方で、月額1万円に満たない人も一定数いることがわかります。
5. まとめ:自身の年金見込額を確認することから始めよう
この記事では、公的年金の基本的な仕組みや2026年度の最新情報、そして現役時代の働き方が受給額にどう影響するかを見てきました。
分布データからもわかるように、厚生年金で月額30万円以上を受給している人は全体の0.1%未満です。
現役時代と同じ水準の生活費を年金だけでまかなうのは、容易ではないのが実情です。
将来に対して漠然とした不安を感じる前に、まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を活用して、ご自身のリアルな受給見込み額を確認してみてはいかがでしょうか。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構 年金用語集「た行 特定事業所」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「Q.年金はいつ支払われますか」
- LIMO「次回6月支給分から「厚生年金・国民年金」ともに年金額が増えます「現役時代の5つの働き方パターン別」65歳からの受給額目安をチェック!」
マネー編集部年金班
