育休取得後の男性社員が、復帰直後に転勤を命じられたとしてカネカが炎上したことは記憶に新しいでしょう。しかしこの件に限らず、「制度はあるけど使えない」という事態は多くの企業で起こっています。周囲や上司への後ろめたさ、仕事の偏り、管理側の負担など制度を整えるだけでは解決できない“働き方改革”の問題は山積みです。

こうした問題に本気で取り組んでいるのが、ブライダル企業の株式会社ノバレーゼ。制度を整えるだけでは解決できない、現場の空気醸成や不平等さをなくす努力などの取り組みについて、総務人事部長の小高直美さんに取材しました。

「有休を取ってもいい」空気作りのための取り組み

2000年に創業した株式会社ノバレーゼは、婚礼施設、ドレスショップ、レストランを全国に展開。グループ企業を合わせた従業員数はパートやアルバイトを含めて2,279人となっています(2018年12月31日現在)。

厚生労働省によるとブライダル業界にあたる「生活関連サービス業・娯楽業」の平成30年における有休取得率は36.5%にとどまりました。そんな中ノバレーゼは2015年より、全社員の有休取得率100%を義務化する制度を導入。昨年は有休取得率86.5%に加え、産休・育休取得率100%、産休・育休復職率86.4%と非常に高い水準を維持しています。

社員の6割が女性だというノバレーゼ。小高さんによると、女性が多いからではなく「自分たちが心身健康で幸せでなければお客様も幸せにできない」という創業者が持つ企業理念のもと制度を整えていった面が強いと言います。

有休取得率100%の義務化においては、「みんなが休んでいないのに自分だけが休みづらい」という社員の遠慮がネックになります。その課題を解決するため、ノバレーゼでは年初に各人の有休希望日に応じた年間の取得予定表を作成。システム化することで、業務分散の効率化を図っています。

さらには、計画表通り有休を取れているかについてのランキングを社内で定期的に発表。等級ごとの研修時には、有休取得義務化の目的についてグループディスカッションをさせるなど、あらゆる立場や役職の人が有休取得に対して意識を高く持つような取り組みも。

“奨学金の肩代わり”で不平不満が出ない理由は

ノバレーゼの特筆すべき制度は他にもあります。まずは3年に一度、有休に加えてリフレッシュに使える30日間休暇制度。昨年は117人もの社員が取得しました。

海外旅行や資格の勉強など、各々が自由に使える年間30日の休暇。取得者の仕事に対するモチベーションが大幅に向上したことで、コストを超える大きな効果を発揮しているそう。

また、「奨学金返済の負担が大きい」という奨学金を返済する社員の声をもとに、2012年には企業が奨学金を肩代わりする支援制度もスタート。勤続年数が5年と10年の社員に対し、奨学金の返済資金として最大200万円を支給しています。