年金の支給月が近づくと「自分は給付金の対象になるのか」と気になる方も多いのではないでしょうか。
「年金生活者支援給付金」は、一定の所得以下の年金受給者に対して年金に上乗せして支給される制度です。物価上昇が続くなか、家計の支えとして注目されていますが、対象者や支給額、手続き方法は意外と分かりにくい部分もあります。
本記事では、2026年度の給付額や支給要件、申請の流れを整理するとともに、社会保険の加入対象拡大(いわゆる「106万円の壁」見直し)についてもあわせて確認していきます。
1. 【2026年度】年金生活者支援給付金の給付額はいくら?
「年金生活者支援給付金」は、公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準に満たない場合に受け取れる給付金です。
老齢年金、障害年金、遺族年金のそれぞれの年金に給付金が設けられており、2カ月に一度、公的年金に上乗せして支給されます。また、給付額は公的年金と同様に、年度ごとに見直しがおこなわれます。
1.1 年金生活者支援給付金「2026年度の給付額」はいくら?
2026年度の「年金生活者支援給付金」の給付額は、前年度より+3.2%引き上げが決定しており、6月支給分の「4・5月分給付金」から増額率が適用されます。
各給付金の2026年度月額は以下の通りです。
- 老齢年金生活者支援給付金(月額):5620円(※基準額)
- 障害年金生活者支援給付金(月額):1級7025円・2級5620円
- 遺族年金生活者支援給付金(月額):5620円
なお、老齢年金生活者支援給付金については、上記を基準額として、保険料納付済期間などをもとに実際の給付金額が計算されます。
2. 年金生活者支援給付金の対象者とは?支給要件を整理
「老齢」「障害」「遺族」、3種類ある年金生活者支援給付金には、それぞれの支給要件が定められています。
一つひとつ整理していきましょう。
2.1 「老齢年金生活者支援給付金」の支給要件
老齢年金生活者支援給付金の対象となるのは、下記の支給要件をすべて満たす方です。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は80万6700円以下(※2)
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は除く
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される
2.2 「障害年金生活者支援給付金」の支給要件
- 障害基礎年金の受給者である
- 前年の所得(※)が479万4000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)
※ 障害年金等の非課税収入は除く
2.3 「遺族年金生活者支援給付金」の支給要件
- 遺族基礎年金の受給者である
- 前年の所得(※)が479万4000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)
※ 遺族年金等の非課税収入は除く
いずれの年金生活者支援給付金も、前年の所得額が支給要件に関わっています。
なお、年金生活者支援給付金は、受給要件を満たしても自動では支給されません。受け取るためには、必ず「請求手続き」が必要です。
3. 年金生活者支援給付金の請求手続き|申請方法と流れ
年金生活者支援給付金の支給対象となった人には、日本年金機構からお知らせを兼ねた請求書が郵送されます。
請求書の送付時期や書類形式は、年金の受給状況により異なります。今回は該当する人が多い2つのパターンを見ていきましょう。
3.1 【パターン1】65歳の誕生日を迎え、老齢基礎年金を新規に請求する人
- 65歳になる3か月前に、年金受給に必要な「年金請求書(事前送付用)」に同封して送付
- 必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金の請求書と併せて年金事務所に提出
3.2 【パターン2】基礎年金を受給中で、新たに年金生活者支援給付金を受け取ることができる人
- 毎年9月の第1営業日から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送される
- 2025年1月以降に65歳に到達し、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた方は電子申請を利用できます
- 電子申請を利用しない場合は、必要事項を記載し、切手を貼ってポストに投函
なお、支給要件に当てはまるかどうかが確認できない人には「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」および「所得情報等を確認するための所得状況届」が届きます。
3.3 年金生活者支援給付金の支給日はいつ?
年金生活者支援給付金は、年6回に分けて、偶数月の15日に支払われます。なお、15日が土日または祝日のときは、その直前の金融機関の営業日に前倒しとなります。
年金の受取口座と同じ口座に、同日、年金とは別に振り込まれます。(通帳にはそれぞれ別の振込として記載されます)
各支払月には、原則、その前月までの2カ月分の年金生活者支援給付金が支払われます。例えば、10月に給付されるのは、8月分・9月分の給付金です。
4. 年金額には個人差あり|平均受給額を参考に確認
今のシニア世代の年金受給事情についても触れていきます。
厚生労働省が公表している「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」のデータをもとに、60歳以上のすべての受給権者の男女差・個人差に着目してみましょう。
4.1 厚生年金の平均年金月額
〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
4.2 国民年金の平均年金月額
〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額は、男性の平均が16万9967円であるのに対し、女性の平均は11万1413円と、約6万円の開きがあります。
この格差が生じる背景には、厚生年金の計算方法があります。厚生年金は、現役時代の給与や加入期間が年金額に反映されるため、平均勤続年数が長く、生涯賃金が高かった男性の受給額が大きくなる傾向があるのです。
一方で、国民年金は加入月数に応じて受給額が決まる仕組みのため、男女間の受給額に大きな差はありません。
厚生年金受給額が月額2万円未満から30万円超までと幅が広いことからも、一人ひとりの働き方や加入期間が年金額に大きく影響していることがわかります。
5. 【2025年制度改正】社会保険の加入対象拡大とは?
2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」には、パートなどで働く人の社会保険加入対象の拡大が盛り込まれました。
いわゆる「106万円の壁」の撤廃に繋がる大きな動きと言えます。
5.1 「社会保険の加入対象の拡大」短期労働者の加入要件の見直し
2025年6月現在、パートタイムなどで働く短時間労働者の人が社会保険に加入する要件は、以下の5つをすべて満たす必要があります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
- 所定内賃金が月額8万8000円以上(←いわゆる「106万円の壁」に関連)
- 従業員数51人以上の企業で働いている
今回の改正では、このうち「賃金要件の撤廃」と「企業規模要件の撤廃」が盛り込まれました。これにより、全国の最低賃金の引き上げ具合を見極めながら、いわゆる「106万円の壁」が3年以内に廃止されることになります。
また、社会保険に加入する企業規模も、10年かけて段階的に拡大され、最終的には働く企業の規模に関わらず加入するようになります。
6. 年金上乗せ給付と社保拡大を理解しておく
年金生活者支援給付金は、対象となれば年金に上乗せして支給される重要な制度ですが、「申請しないともらえないケースがある」点には注意が必要です。
2026年度の給付額や支給要件を確認し、自分が対象に当てはまるかを一度整理しておくことが大切です。
また、社会保険の加入対象拡大により、今後の働き方や収入によっては年金額や将来の受給にも影響が出てくる可能性があります。
「自分は関係あるのか?」と感じた方こそ、このタイミングでねんきん定期便や通知書を確認しておくと安心です。
制度は定期的に見直しが行われるため、早めのチェックを心がけておきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 政府広報オンライン「パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象により手厚い保障が受けられます。」
橋本 優理