必要となる老後資金の目安を把握するためには、「老後の生活にお金がいくらかかるのか」を知ることが大切です。19年に総務省統計局が公表した『家計調査報告(家計収支編)-2018年(平成30年)平均結果-(二人以上の世帯)』によると、60代と70代における消費支出の平均値は下記の通りです。

60代・・・29万1019円(モデル世帯との差:6万9515円)

70代・・・23万7034円(モデル世帯との差:1万5530円)

年代差・・・5万3985円

本調査の消費支出には、食料や住居、光熱・水道や家具・家事用品、被服及び履物や保険医療費などの項目が含まれます。

65歳で退職したあと毎月6万9515円ずつ不足する場合、1年間で約83万4000円の赤字になります。単純計算すると10年間で834万円の赤字。65歳から85歳までの20年間で考えると、平成31年度モデル世帯と同等の支給が得られる世帯では年金以外に約1668万円の老後資金が必要になると考えられます。

実際の貯蓄額はどのくらいか?

同調査によると、年齢別の貯蓄現在高と負債現在高の平均値は下記のようになっています。

貯蓄現在高のピークは60代、負債現在高のピークは30代です。70歳以降の貯蓄現在高は60代よりも低く、貯蓄の取り崩しが進んでいる状況がうかがえます。40代では貯蓄現在高と負債現在高が拮抗し、余裕のない状況です。

50代では負債現在高が貯蓄現在高の4割程度になるため、経済的余裕が生まれやすいでしょう。老後に備えてお金を貯めはじめるのに最適な年代といえそうです。

お金を貯めたい!貯蓄初心者におすすめの方法は?

お金を貯める方法には、大きく下記の3通りがあるでしょう。

効果的な貯金システムを導入する

お金が貯まらない人は「生活費で余った分を貯金しよう」と考えがちです。お金があるだけ使ってしまう人も少なくなく、この方法では貯金がなかなか増えません。

収入を得たら使ってしまう前に貯金に回してしまえば、無駄遣いしにくくなります。これが「先取り貯金」です。お金を貯めたいなら、自動的・強制的にお金が貯められる仕組みを生活に取り入れることが大切です。

勤務している会社に、給与からの天引きで資産が作れる「財形貯蓄制度」があるなら利用しない手はありません。制度がないなら個人で「先取り貯金」の仕組みを作ってしまいましょう。

ほとんどのネット銀行で、手数料無料の「自動入金サービス」が利用できることも見逃せません。毎月強制的に給与口座から貯蓄用口座にお金を移してくれるため、お金が貯まりやすくなります。

支出を減らすために節約する

貯蓄初心者にとって一番気軽に始めやすいのが節約です。家計の支出は変動費(生活費)と固定費および臨時費の3つからなります。

このうち、最も高額になりがちなのが、家賃や保険料、通信費や携帯電話料金などの固定費です。効率的な節約をするためには、毎月必ず家計から出ていく固定費の見直しは欠かせません。

たとえば、7000円の携帯電話代を1400円にすれば、1年で(7000円-1400円)×12カ月=6万7200円の節約ができる可能性があります。

また、少額であっても生活費の無駄遣いは無視できません。たとえば、自動販売機のお茶を毎日買うと、1カ月で130円×30日=3900円、1年間で4万6800円ほどにもなるのです。

家計に入ってくる収入を増やす

収入を増やす方法は主に2通りあります。1つは、副業などをして稼ぎを増やす方法。もう1つが資産運用によって利益を生み出す方法です。

日本人には、リスクのある資産運用を避けたがる人が少なくありません。しかし、iDeCoやNISA、つみたてNISAなどのように節税対策にもなる資産運用の商品も存在します。入ってくる生涯年収だけでは老後資金が不足すると予想される場合は、資産を増やすという視点を持つ必要があるでしょう。

政府が副業を後押ししていることもあり、企業のなかにも副業を認めるところが増えています。自分ができる副業について積極的に検討してみましょう。

自分にあった貯蓄の方法を見つけよう

「お金を貯める方法」は自分に合ったものを選ぶことが大切です。無理やストレスがかかる方法では長続きしません。自動入金サービスなら自分で管理する必要がないため負担になりにくいでしょう。貯蓄初心者に最もおすすめしたい方法の1つといえそうです。

【参考資料】

『平成29年簡易生命表の概況』厚生労働省

『平成31年度の年金額改定についてお知らせします』厚生労働省

【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

LIMO編集部