物価高が家計を圧迫する状況が続くなか、政府による現金給付の対象として「住民税非課税世帯」という言葉を耳にする機会が増えました。
3月も下旬にさしかかり、新年度を前に生活費の見直しを進めているご家庭も多いのではないでしょうか。
実は、この制度のメリットは一時的な給付金にとどまりません。
国民健康保険料の減額や高等教育の実質無償化など、日々の暮らしを継続的に支えるためのさまざまな優遇措置が設けられています。
この記事では、住民税非課税世帯が受けられる主要な5つの優遇制度について、その内容を詳しく解説します。
あわせて、具体的に「年収いくらからが対象になるのか」という収入のボーダーラインや、高齢者世帯が該当する割合についてもご紹介します。
ご自身の世帯が対象かどうかを確認し、利用できる支援を最大限に活用するための手引きとしてご活用ください。
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1. 住民税非課税世帯が対象となる5つの主要な優遇制度
新型コロナウイルス対策や近年の物価高への対応策として、政府は住民税非課税世帯を主な対象とした現金給付などの支援を実施してきました。
住民税非課税世帯とは、世帯に属する全員の所得が一定の基準を下回り、住民税が課されていない世帯を指します。
このような世帯に対しては、一時的な給付金だけでなく、日々の生活を支えるための継続的な優遇措置も用意されています。
ここでは、その中から代表的な5つの制度について見ていきましょう。
1.1 優遇措置1:国民健康保険料の減額
- 所得水準に応じて、保険料の一部である均等割・平等割が7割・5割・2割のいずれかの割合で軽減される仕組みです。
1.2 優遇措置2:介護保険料の減額
- 65歳以上の第1号被保険者を対象としており、減額の幅は各自治体が定める基準によって異なります。
1.3 優遇措置3:国民年金保険料の免除・納付猶予
- 経済的な状況に応じて、保険料の全額免除、一部免除、あるいは納付猶予といった措置を受けることが可能です。
1.4 優遇措置4:保育料の無償化
- 0歳から2歳までのお子さんがいる場合、保育料が無料となります。
- これにより、すでに実施されている3歳から5歳までの無償化とあわせ、未就学児の保育料負担が実質的になくなります。
1.5 優遇措置5:高等教育の修学支援新制度
- 大学や専門学校などにおける授業料や入学金が免除、または減額されます。
- さらに、返済が不要な給付型奨学金も利用できるため、高等教育を実質的に無償で受けることが可能になります。
これらの制度以外にも、各自治体が独自に設けている支援策も数多く存在します。
次の章では、住民税非課税世帯の定義について、さらに詳しく確認していきましょう。
2. 「住民税非課税世帯」の定義と住民税の仕組み
住民税非課税世帯に当てはまる条件を正しく理解するため、まずは住民税の基本的な構造から見ていきましょう。
住民税は、お住まいの都道府県と市区町村に納める地方税の一種です。
公共サービスの提供やインフラの整備など、自治体の活動を支えるための重要な財源として活用されています。
個人が納める住民税は、「均等割」と「所得割」という2つの部分から成り立っています。
- 均等割:所得の金額にかかわらず、一定以上の所得がある方に一律で課される税金です。
- 所得割:前年の所得金額に応じて課税される税金で、所得が多いほど税額も大きくなります。
この均等割と所得割の両方が課税されない状態を「住民税非課税」と呼び、世帯の構成員全員がこの条件に該当する場合を「住民税非課税世帯」といいます。
なお、所得割のみが非課税となるケースもありますが、その場合に給付金などの支援対象となるかどうかは、自治体によって判断が異なります。
詳しい条件については、お住まいの市区町村の公式サイトなどで確認することをおすすめします。
3. 住民税が非課税になる具体的な3つの条件
住民税が課税されない具体的な条件について確認していきましょう。
以下のいずれかの条件に当てはまる場合、住民税は非課税として扱われます。
- 生活保護法に基づく生活扶助を受けている方
- 障害者、未成年者、寡婦またはひとり親に該当し、前年の合計所得金額が135万円以下の方
- 前年の合計所得金額が、各市区町村の定める基準額を下回っている方
1と2の条件は全国で共通ですが、3の所得基準額は自治体ごとに設定されているため、注意が必要です。
4. 所得基準の具体例:神戸市の場合
住民税非課税世帯に該当するための所得基準は、具体的にどのくらいなのでしょうか。ここでは一例として、兵庫県神戸市のケースを見てみましょう。
35万円 × (本人 + 同一生計配偶者※ + 扶養親族の人数) + 31万円
ただし、同一生計配偶者や扶養親族がいない単身者の場合は、合計所得金額45万円以下が基準となります。
※同一生計配偶者:納税者と生計を一つにする配偶者で、前年の合計所得金額が58万円以下の人を指します。
5. 給与・年金収入別に見る住民税非課税のボーダーライン
住民税が非課税となる基準は、扶養家族の人数だけでなく、収入の種類によっても変動します。
所得は収入から必要経費や各種控除を差し引いて算出されますが、ここでは神戸市の基準を基に、収入ベースでの目安額を確認してみましょう。
5.1 単身世帯の場合
合計所得金額が45万円以下の方が対象となります。
- 給与収入のみ:年収110万円以下
- 65歳以上で年金収入のみ:年金収入155万円以下
- 65歳未満で年金収入のみ:年金収入105万円以下
5.2 同一生計配偶者か扶養親族が1人いる場合
合計所得金額が101万円以下の方が対象となります。
- 給与収入のみ:年収166万円以下
- 65歳以上で年金収入のみ:年金収入211万円以下
- 65歳未満で年金収入のみ:年金収入171万3334円以下
単身世帯の場合、給与収入であれば年収110万円、65歳以上で年金収入のみであれば155万円が非課税となる目安です。
一方で、配偶者や扶養親族がいる世帯では、非課税となる収入の上限額が引き上げられます。
特に65歳以上で年金収入のみの世帯では、扶養親族が1人いる場合の収入目安が211万円以下となり、単身世帯と比較して基準が大幅に緩和される点が特徴です。
このように、住民税が非課税になるかどうかは、世帯の構成や収入源によって大きく左右されます。
6. 高齢者世帯における住民税非課税の割合はどのくらいか
厚生労働省が公表している「令和6年国民生活基礎調査」を基に、年代別の住民税「課税世帯」の割合を見てみましょう。
- 29歳以下:63.0%
- 30~39歳:87.5%
- 40~49歳:88.2%
- 50~59歳:87.3%
- 60~69歳:79.8%
- 70~79歳:61.3%
- 80歳以上:52.4%
- 65歳以上(再掲):61.1%
- 75歳以上(再掲):54.4%
※ 全世帯数には、非課税世帯および課税の有無が不明な世帯も含まれています。
※ 総数には、年齢不詳の世帯も含まれています。
※ 住民税課税世帯には、住民税額が不明な世帯も含まれています。
住民税が課税されている世帯の割合は、30歳代から50歳代にかけて約9割と高い水準にありますが、60歳代になると79.8%に減少します。
さらに年齢を重ねると、65歳以上では61.1%、75歳以上では54.4%と、課税世帯の割合は低下傾向にあります。
この背景には、年金生活への移行によって現役時代よりも収入が減少することや、65歳以上は公的年金等控除が手厚くなることなどが主な理由として挙げられます。
また、課税対象とならない遺族年金を受給しているケースも影響していると考えられます。
これらの要因から、年金を受給する高齢者世帯は、他の世代と比較して住民税非課税に該当しやすくなるのです。
7. 公的年金のみで生活する高齢者世帯は半数未満という実情
厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、「公的年金・恩給」を受け取っている高齢者世帯のうち、その収入だけで生計を維持している世帯は43.4%でした。
このデータは、公的年金や恩給のみで生活費のすべてを賄えている高齢者世帯が、全体の半数に満たないという現実を示しています。
- 公的年金・恩給の割合が100%の世帯:43.4%
- 公的年金・恩給の割合が80~100%未満の世帯:16.4%
- 公的年金・恩給の割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 公的年金・恩給の割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 公的年金・恩給の割合が20~40%未満の世帯:8.2%
- 公的年金・恩給の割合が20%未満の世帯:4.0%
年金の受給額は個人差が大きいですが、高齢者世帯では収入と支出のバランスを保つのが難しいケースも少なくありません。
支出が収入を上回ってしまったり、最低限の生活費に対して収入が足りなかったりする状況も想定されます。
特に後者のように、公的年金だけでは生活の維持が難しい場合、不足分を補うための手段を確保しておくことが不可欠です。
もし私的年金や預貯金、資産運用などで十分な準備ができていないのであれば、就労による収入や家族からの援助、各種支援制度の活用など、早めに選択肢を検討しておくことが大切になるでしょう。
8. 住民税非課税世帯向けの優遇制度を理解し、活用できる支援を確認しよう
この記事では、「住民税非課税世帯」が利用できる代表的な5つの優遇措置について解説しました。
ご紹介した、対象となる給与や年金収入の具体的なボーダーラインを参考に、ご自身の世帯が該当するかどうかを一度確認してみてはいかがでしょうか。
現役時代と比べて収入が減少する傾向にある高齢者世帯も、非課税に該当する可能性は十分に考えられます。
また、この記事で紹介した以外にも、住民税非課税世帯を対象とした優遇措置は数多く存在します。
どのような支援を受けられるかを知っておくことは、家計の負担を軽くする上で非常に重要です。
対象となる支援がないか、お住まいの自治体の公式サイトを確認したり、役所の窓口で相談してみることをおすすめします。
※当記事は再編集記事です。





