NANDフラッシュの投資再開に向けて、期待されていたサムスン電子、東芝メモリの新ファブ向け量産ラインの装置導入は、2020年以降に持ち越しとなりそうだ。両案件ともにまずはパイロットラインの導入を年内に実施。顧客からの認定取得を優先させ、市況回復に備える考えだ。
年後半からの投資回復に「黄信号」
NANDフラッシュは足元でも価格下落が続いており、価格の底打ちは19年7~9月期との見方が広がっている。ただ、米国政府による中国ファーウェイへの出荷停止措置や、データセンター顧客の投資も停滞気味の状態が続いており、業界内で期待されていた「年後半からのNAND投資回復」というシナリオに黄信号が灯っていた。
そういった状況下、サムスン、東芝メモリのNAND新ファブ案件の投資スケジュールの動向は、メモリー市況の今後を占う意味でも大きな指標となっていた。結論的には装置・材料メーカーが期待していた量産ラインへの投資は見送られ、最低限のパスラインを設けるという投資計画にとどまりそうだ。
東芝メモリは現在、岩手県北上市に新工場(K1)を建設中。19年秋に竣工し、20年から96層世代の量産を開始する予定。当初は月数万枚程度の量産ライン導入も検討されていたが、結果的には月7500枚規模のパイロットラインの設置となったもよう。製造世代もまずは64層世代が中心となる見込みで、一部製造装置は四日市工場からの移設で対応する。新規装置は年末をめどに搬入が行われる見通し。
サムスン電子は西安第2工場(X2)の建設を進めているが、北上新工場同様に、パイロットライン向けの装置搬入を年内から開始する。量産ラインの投資判断は19年7~8月ごろに行われる情勢だ。
四日市では追加投資計画が浮上
一方で、東芝メモリに関しては四日市工場で第6製造棟(Y6)に対する追加投資の検討が始まっている。Y6は18年9月に竣工し、第1期(フェーズ1)投資がすでに実施済みだが、残る第2期投資については市況悪化の影響から装置導入を見送っていた経緯がある。Y6への投資再開はまだ具体化していないものの、IPO(新規上場)申請を前に、同社の積極的な投資姿勢が見て取れる状況となってきたのは、NAND市況の底打ちがそれほど遠くないことを示している。
DRAM投資は先送り目立つ
一方で、DRAM投資はファーウェイ問題によって、投資先送りが目立つようになってきた。サムスン電子の平澤工場では第1工場(P1)、第2工場(P2)ともにDRAMの増強余地を残しているが、投資再開時期が確定できていない状況だ。
SKハイニックスの無錫新ファブ(C2F)の第1期投資分の装置搬入が19年4~6月期にほぼ一服するが、その後の投資計画がまだ見えてきておらず、今後の市場動向を見ながらの判断となりそうだ。先ごろ、広島工場で新棟(B2)の開所式を開催したマイクロンテクノロジーが、すでに着工を開始している「新F棟」の完成時期に関しても、後ろ倒しの可能性が強まっている。加えて、台湾・桃園市の量産工場(Fab11、旧イノテラ)も微細化投資の先送りが決まったもようだ。
DRAMはNANDと異なり、足元でも利益は確保できている状況で、そのため、市況回復に向けた施策がこれまで限定的であった。ウエハー投入の削減による生産調整もNANDに比べて軽微であったほか、微細化投資についてもコスト競争力強化の観点から、モチベーションは決して低くなかった。
しかし、マクロ景気が想像以上に悪化するなかで、最終顧客をはじめとするサプライチェーンで在庫圧縮の動きが広がる可能性が高く、DRAM投資の一段の縮小も危惧されるところだ。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳