春の訪れを感じる2026年3月下旬、新年度を前に生活設計を見直している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

特に年金を受給しながら生活されている方にとって、毎月の収入は大きな関心事です。物価の上昇が続くなかで「今の年金額だけで、この先の生活を維持できるだろうか」と、漠然とした不安を感じることもあるかもしれません。

実は、公的年金に加えて、特定の条件を満たすことで受け取れる「年金生活者支援給付金」という制度があります。これは、年金収入が一定基準以下の方々の生活を支援するために設けられたものです。

この記事では、どのような方がこの給付金の対象となるのか、具体的にいくら受け取れるのか、そしてどのような手続きが必要なのかを、最新のデータを交えながら一つひとつ丁寧に解説していきます。ご自身の状況と照らし合わせながら、ぜひ最後までご覧ください。

年金に上乗せされる「年金生活者支援給付金」とは?

年金生活者支援給付金制度は、年金を受給している方々の生活を支援する目的で2019年にスタートしました。

この制度は、受給要件を満たす対象者に対し、2ヶ月に1度、公的年金の支給日に合わせて給付金を支給する仕組みです。

年金生活者支援給付金は3つの種類に分かれており、受給している基礎年金に応じて「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」が設定されています。

それぞれの基礎年金受給者で、定められた所得要件を満たす方が、この給付金の対象となります。

年金生活者支援給付金を受け取るための支給要件

ここでは、年金生活者支援給付金を受け取るための具体的な支給要件について、詳しく見ていきましょう。

障害・遺族年金生活者支援給付金の対象者

「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」については、それぞれ障害基礎年金または遺族基礎年金を受給していることが前提です。

加えて、前年の所得が479万4000円以下であることが条件となります。ここで重要なのは、所得の計算に障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれないという点です。

また、扶養親族の人数に応じて所得の基準額が引き上げられることも覚えておくとよいでしょう。

老齢年金生活者支援給付金の対象者

一方で、老齢年金生活者支援給付金の支給対象となるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること
  • 同じ世帯に住む全員の市町村民税が非課税であること
  • 前年の公的年金などの収入金額と、給与所得や利子所得といったその他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降に生まれた方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下であること

老齢年金生活者支援給付金の場合、本人の所得だけでなく世帯全体の状況も要件に含まれる点に注意が必要です。なお、こちらの判定においても、障害年金や遺族年金などの非課税収入は計算に含まれません。

さらに、所得が基準額をわずかに超えたために給付対象外となる方との公平性を保つため、「補足的老齢年金生活者支援給付金」という制度も設けられています。

この補足給付の対象となるのは、「昭和31年4月2日以降に生まれた方で所得合計額が80万9000円を超え90万9000円以下の方」、および「昭和31年4月1日以前に生まれた方で所得合計額が80万6700円を超え90万6700円以下の方」です。

【2025年3月データ】年金生活者支援給付金の平均月額と給付件数

厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に、実際に支給された年金生活者支援給付金の平均月額を見てみましょう。

2025年3月時点での平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金が4146円、障害年金生活者支援給付金が5727円、遺族年金生活者支援給付金が5228円という結果でした。

※2025年3月時点で認定されている平均給付金額です。

給付金額ごとの給付件数は、以下の通りです。

老齢年金生活者支援給付金の給付金額別件数

  • 1000円未満:7万5101件
  • 1000円以上2000円未満:31万4450件
  • 2000円以上3000円未満:59万9166件
  • 3000円以上4000円未満:108万2177件
  • 4000円以上5000円未満:103万4357件
  • 5000円以上6000円未満:104万5423件
  • 6000円以上7000円未満:18万5291件
  • 7000円以上8000円未満:9万3265件
  • 8000円以上9000円未満:4万4796件
  • 9000円以上1万円未満:1万9891件
  • 1万円以上:1万524件

障害年金生活者支援給付金の給付金額別件数

  • 5000円以上6000円未満:149万3700件
  • 6000円以上7000円未満:68万3466件

遺族年金生活者支援給付金の給付金額別件数

  • 1000円未満:ー
  • 1000円以上2000円未満:607件
  • 2000円以上3000円未満:1569件
  • 3000円以上4000円未満:ー
  • 4000円以上5000円未満:ー
  • 5000円以上:7万5531件

年金生活者支援給付金の請求手続きと流れ

この章では、年金生活者支援給付金を受け取るための請求手続きについてご説明します。

すでに公的年金を受給中の方で、新たに給付金の支給対象となった場合には、日本年金機構から請求書を兼ねたお知らせが郵送されます。

すでに基礎年金を受給している場合の手続き

  • 毎年9月の第1営業日から、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されます。
  • 2025年1月以降に65歳になり、日本年金機構からこの請求書が届いた方は、電子申請も利用可能です。
  • 電子申請を利用しない場合は、請求書に必要事項を記入し、切手を貼ってポストへ投函します。

なお、支給要件に該当するかどうかの確認が取れない方には、「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」と「所得状況届」が送付されます。

次に、これから年金自体を請求する方の手続きの流れを見てみましょう。

これから老齢基礎年金を請求する場合の手続き

  • 65歳になる3ヶ月前に送付される「年金請求書(事前送付用)」に、給付金の請求書が同封されています。
  • 必要事項を記入の上、年金の受給を開始する誕生日の前日以降に、年金の請求書とあわせて年金事務所へ提出します。

※障害年金または遺族年金の生活者支援給付金の対象者で、初めて基礎年金を請求する方は、給付金の請求書が自動では送られてきません。年金の請求手続きと同時に、ご自身で年金事務所や市区町村の窓口にて給付金の請求手続きを行う必要がありますのでご注意ください。

給付金の支給日について

年金生活者支援給付金は、公的年金と同様に偶数月の15日に支給されます。もし15日が土日や祝日にあたる場合は、その直前の金融機関営業日に前倒しで支給されます。

例えば、2月に支給されるのは12月分と1月分の給付金です。

振込先は年金を受け取っている口座と同じですが、通帳には年金と給付金がそれぞれ別の項目として記録されます。

データで見るシニアの生活実態:公的年金への依存度

実際には、公的年金だけで生活している高齢者世帯は、全体の半数以下です。

厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、総所得の100%を公的年金・恩給が占める世帯の割合は43.4%となっています。

  • 総所得に占める公的年金・恩給の割合が100%の世帯:43.4%
  • 総所得に占める公的年金・恩給の割合が80~100%未満の世帯:16.4%
  • 総所得に占める公的年金・恩給の割合が60~80%未満の世帯:15.2%
  • 総所得に占める公的年金・恩給の割合が40~60%未満の世帯:12.9%
  • 総所得に占める公的年金・恩給の割合が20~40%未満の世帯:8.2%
  • 総所得に占める公的年金・恩給の割合が20%未満の世帯:4.0%

このデータから、残りの56.6%の高齢者世帯は、公的年金や恩給以外の収入源で生活費をまかなっている実態がうかがえます。

公的年金だけで生活を維持するのが難しい可能性も考慮し、早めに老後の生活設計を立てておくことが大切だといえるでしょう。

まとめ

今回は、年金生活をサポートする「年金生活者支援給付金」について、その仕組みから対象者、具体的な金額、手続きの方法までを詳しく解説しました。

ご自身の年金の種類や所得、世帯の状況によって対象となるかが決まるため、まずはこの記事でご紹介した支給要件を改めて確認してみてはいかがでしょうか。

もし「自分も対象かもしれない」と感じた場合や、手続きについて不明な点がある場合は、日本年金機構から送られてくる案内をよく読んだり、お近くの年金事務所や「給付金専用ダイヤル」に問い合わせてみるのが確実です。

公的年金だけでは心もとないと感じる方にとって、この給付金はささやかながらも確かな支えとなり得ます。ご自身の権利を正しく理解し、活用できる制度はしっかりと利用して、少しでもゆとりのあるシニアライフを送るための一助としてください。

参考資料