学生時代のTは時間にルーズなところがあり、忘れ物が多かった。また講義中はよく寝たり、夜型の生活になってしまい学校に来られないこともあった。それでも持ち前の明るさで周囲に友人は多く、「少し変わった子」で済まされていた。

しかし社会人になると、それでは済まなくなった。遅刻が多く、会議中に居眠り。ミスや忘れ物も多く、上司に「お前は病気だ、病院へ行け」と言われたという。その時点でも彼女は病院に行こうとはしなかった。当時の彼女は『仕事、頑張らないと…』というのが口癖で、どうにか個人的な努力で乗り越えようとしていた。

しばらくして、『会社、やめた』との連絡があった。聞くと、『取り返しのつかないヤバいミスをした』とかで、いまだにそのミスの内容は不明だが、責任を感じ自主退職をしたとのことだった。

「女はマルチタスクが得意」の誤解

『わたし、正社員の仕事とか無理だわ』ということで、もともと夜型の生活を送っていた彼女は夜の世界へ。しかし数カ月で解雇され、その後はパチンコ店や居酒屋などのアルバイトをしていたものの、『ミスしすぎてクビになった』と言って仕事を転々とする日々が続いた。

この一連の流れの中で筆者を含めた周囲は、医療機関を受診するように言い続けた。しかし腰が重く、5度目の失職でやっと受診。ADHDの診断を受けたのだった。

仕事上でのミスは、重なれば大きなトラブルを引き起こしやすい。今までは「変わってるね」で済んでいたことが、そうではなくなることが多く「大人の発達障害」として表出する。

また「女性はマルチタスクが得意」と思っている人が多く、上司に「女なのに、そんなこともできないのか」と言われたこともあるとか。とくに主婦業はマルチタスクのかたまりみたいなものなので、女性だからこそハードルが上がる場面もあるのかもしれない。

自己肯定感なんてそもそもない