この記事の読みどころ

  •  「彼氏の年商が3千万円」というと、一見すごいことのように思えます。
  •  しかし、彼氏が本当にすごいかどうかは、よくよく調べてみないといけません。
  •  彼氏のすごさを判定するために必要な知識を、まとめます。

たまにテレビや雑誌を見ていると「彼氏が店をやっていて、年商3千万円なんです~」みたいな人が出てきますが、年商3千万円って結構、貧乏なんじゃないかといつも思います。そのときは、素直に「すごい!」と感心する妻の横で、敢えて口には出さない(面倒なので)のですが、改めてそのことを考えてみましょう。

年収と年商の違い

そもそも、この人たちは年商と年収を勘違いしている、もしくは意図的に混同しているのではないでしょうか。年商とはあくまで売上のことであり、年収とは全く別の概念です。お店が全て彼のものだったとしても、手元に残るお金は、売上からあらゆる経費や税金を除いたものです。

ちなみに、年収も額面か手取りかで2割くらい違うのですが、まあそれは今回、置いておきましょう。2割くらいの違いなら、許容できるのではないかと思えるからです。年収1千万円でも800万円でも、どちらもまあ、ストライクゾーンでしょう。年商と年収の違いの方が、遥かに深刻なギャップがあります。

年商(売上)と利益の違い

会社として手元に残るお金は、最終(税引後)利益です。年商すなわち売上と最終利益の間には、深くて長い川があります。まず、モノを売っているのであれば、仕入れにお金が掛かりますね。100円で仕入れたものを110円で売っているなら、その差額である売上総利益(粗利)は10%です。

これだけで、売上は110円ですが、利益は10円なんです。年商3千万円なら、粗利は280万円くらいです。一気にトホホな感じになりますよね。

TKC経営指標(BAST)によると、粗利率(≒限界利益率)は、時計・眼鏡・光学機械小売業で53.6%、ガソリンスタンドだと13.5%です。彼氏のお店がメガネ屋さんなのかガソリンスタンドなのかで、同じ売上高3千万円でも粗利の金額は1,608万円なのか405万円なのかの差が出るということですね。

そして、経営はもっと残酷です。ここから店舗の賃貸料や従業員への給料など、営業に必要な費用が引かれたものが営業利益。さらに利子の支払などが引かれたものが経常利益です。で、在庫が古くなって処分したりする特別損失があれば、税引前当期純利益はさらに減ります。粗利が1千万円あっても、赤字になることもあります。

どうにか黒字になったかと思えば、そこから法人税が引かれます。それでようやく、税引後利益(≒内部留保)となるわけですね。借入金の返済など、キャッシュフローを考えるともっと厳しいです。これしか、会社にはお金が残らないんですね。業態にもよりますが、残念ながら、小売りで売上高3千万円程度だと、赤字経営に近いでしょうね(彼氏が経営コンサルタントなら、なかなかなものですが!)。