雨の日が続き、蒸し暑さを感じる日も少しずつ増えてきました。冷房の使用が始まり、食料品や日用品の値上がりも続くなかで、家計への負担を実感している方も多いのではないでしょうか。
2026年4月24日に総務省が公表した消費者物価指数によると、2025年度平均の総合指数は112.3となり、前年度と比べて2.6%上昇しました。
とりわけ日々の暮らしに直結する品目の値上がりが続いており、食料品や生活必需品の価格上昇によって、家計の実質的な負担感は徐々に高まっています。
- 総合指数は2020年を100として112.3…前年度比は2.6%の上昇
- 生鮮食品を除く総合指数は111.7…前年度比は2.7%の上昇
- 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は111.0…前年度比は3.0%の上昇
こうした状況のなか、政府の新たな経済対策では「物価高対応子育て応援手当」に代表される子育て世帯向け支援が重視されており、これまで行われてきた住民税非課税世帯への一律給付は縮小傾向にあります。
支援の対象が限定されつつあることで、今後の暮らしや老後資金について不安を抱く方もいるかもしれません。
しかし、公的支援の仕組みは給付金だけに限られるものではありません。
実際には、税負担や社会保険料負担を軽減するための恒久的な優遇制度が数多く用意されています。
そこで本記事では、見落とされがちな重要制度に焦点を当てながら、利用できる収入の目安について、給与所得者と年金受給者それぞれのケースに分けて確認していきます。
1. 【住民税非課税世帯】見逃せない優遇制度5つをまとめて確認
一定以下の所得水準に該当する世帯は「住民税非課税世帯」として扱われ、さまざまな公的支援を受けられる可能性があります。
近年は感染症対策や物価高への対応策として、住民税非課税世帯を中心に現金給付をはじめとした多様な支援施策が実施されてきました。
住民税非課税世帯とは、一定基準を下回る所得水準であるため、住民税が課税されていない世帯を指します。
こうした世帯に対する支援は給付金に限りません。社会保険料の負担軽減や教育費支援など、長期間にわたって活用できる制度も整備されています。ここでは代表的な5つの制度を確認していきましょう。
1.1 ◆国民健康保険料(応益割)の減額
応益分保険料(均等割・平等割)の「7割・5割・2割」のいずれかを減額
1.2 ◆介護保険料の減額
- 第1号被保険者(65歳以上)が対象。減額される金額は自治体ごとに異なる
1.3 ◆国民年金保険料の免除・納付猶予
- 全額免除・一部免除・納付猶予のいずれか
1.4 ◆保育料の無償化
- 0歳から2歳までの保育料が無償化
- これにより、0~5歳までの保育料が無料になる
1.5 ◆高等教育の修学支援新制度
- 授業料・入学金の免除または減額
- 返還を要しない給付型奨学金
- 上記により大学、短期大学、高等専門学校、専門学校を無償化
これら以外にも、各自治体が独自に実施している支援制度を含めると、利用できる施策はさらに多岐にわたります。
それでは、「住民税非課税世帯」とは具体的にどのような状態を指すのか、次に制度の基本的な考え方を見ていきましょう。
2. 【住民税非課税世帯】知らないと損する制度の基本構造
まずは、「住民税非課税世帯」とは何かについて整理しておきましょう。住民税の仕組みを踏まえながら、非課税となる条件を確認します。
2.1 住民税の基本
住民税は都道府県や市区町村に納める地方税であり、地域の行政サービスや公共インフラを支える財源として活用されています。
個人に課される住民税は、次の2種類から構成されています。
- 均等割:所得に関係なく一律に課税される部分
- 所得割:所得に応じて税額が決まる部分
この2つの税負担がいずれも発生しない状態を「住民税非課税」と呼びます。そして、世帯全員が住民税非課税である場合、その世帯は「住民税非課税世帯」に該当します。
なお、所得割のみが非課税となるケースも存在します。ただし、支援制度の対象になるかどうかは自治体ごとに異なるため、詳細は居住地の自治体へ確認することが大切です。
3. 【住民税非課税世帯】対象者を分ける3つの判定基準とは
住民税が課されない主な条件は、次のいずれかに該当する場合です。
- 生活保護を受給している
- 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年所得が135万円以下
- 前年所得が自治体の定める基準額を下回る
このうち、1と2については全国共通のルールです。一方で、3の所得基準は自治体ごとに設定されているため、具体的な金額は地域によって異なります。
次は、その基準額の目安を具体的に見ていきましょう。
4. 【住民税非課税世帯】収入はいくらまで?給与・年金のボーダーライン
住民税非課税世帯の判定基準について、ここでは兵庫県神戸市の例をもとに確認します。
35万円×(本人+同一生計配偶者(※)+扶養親族数)+10万円+21万円
※21万円は、同一生計配偶者または扶養親族がいる場合のみ加算されます。
※同一生計配偶者とは、生計を一にし、前年の合計所得金額が48万円以下の配偶者を指します。
この基準を超えない場合、住民税(市県民税)は課税されません。
5. 【住民税非課税世帯】神戸市の事例でわかる具体的な収入基準
住民税の非課税ラインは、世帯人数だけでなく収入の種類によっても異なります。
ここでいう所得とは、収入から各種所得控除を差し引いた後の金額です。そのため、神戸市の基準を実際の収入額に置き換えると、次のようになります。
単身世帯
合計所得金額が45万円以下になる方
- 給与収入のみで収入金額が100万円以下
- 年金収入のみで収入金額が155万円以下(65歳以上)
- 年金収入のみで収入金額が105万円以下(65歳未満)
同一生計配偶者か扶養家族が1名いる場合
合計所得金額が101万円以下になる方
- 給与収入のみで収入金額が156万円以下の方
- 年金収入のみで収入金額が211万円以下の方(65歳以上)
- 年金収入のみで収入金額が171万3333円以下の方(65歳未満)
このように、非課税となる基準は世帯人数や収入の種類によって大きく異なります。
単身世帯であれば、給与収入のみの場合は年収100万円以下、65歳以上で年金収入のみの場合は155万円以下が一つの目安です。
一方、配偶者や扶養親族がいる世帯では非課税ラインが引き上げられます。たとえば65歳以上の夫婦世帯で年金収入のみの場合、年収211万円程度まで非課税となる可能性があります。
税負担の有無は世帯構成や収入内容によって変わるため、自分の状況に当てはめて確認することが重要です。
6. 【住民税非課税世帯】高齢者ほど割合が高くなる背景を読み解く
厚生労働省「令和6年 国民生活基礎調査」をもとに、年代別の住民税課税世帯の割合を見てみましょう。
- 29歳以下:63.0%
- 30〜39歳:87.5%
- 40~49歳:88.2%
- 50~59歳:87.3%
- 60~69歳:79.8%
- 70~79歳:61.3%
- 80歳以上:52.4%
- 65歳以上(再掲):61.1%
- 75歳以上(再掲):54.4%
※ 全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯を含む
※ 総数には、年齢不詳の世帯を含む
※ 住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯を含む
30代から50代ではおよそ9割近くが課税世帯となっていますが、65歳以上では約6割、75歳以上では5割強まで低下しています。年齢が上がるほど課税世帯の割合が減少していることが分かります。
高齢期になると、収入の中心が給与から年金へ移行し、現役時代と比べて所得水準が低くなる傾向があります。さらに、税制面の優遇措置も影響しています。
たとえば65歳以上には公的年金等控除が設けられており、遺族年金は非課税所得として扱われます。
こうした仕組みが重なることで、高齢世帯は住民税非課税世帯に該当しやすい構造となっています。
7. 【住民税非課税世帯】年金生活世帯は43.4%。数字が示すものとは
厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金を受給する世帯のうち、収入のすべてを年金で賄っている世帯は43.4%でした。
見方を変えると、半数以上の世帯は年金以外の収入源も活用しながら生活していることになります。
すでに「年金だけで生活する世帯」が多数派とは言えない状況になっています。
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%
受給する年金額には個人差がありますが、多くの高齢世帯に共通する課題は、収入と支出のバランスをどう維持するかという点です。
生活費が年金収入を上回るケースもあり、最低限の暮らしを続けるだけでも年金だけでは足りない場面は少なくありません。
そのため、収支の不足分をどのように補うかが重要なテーマとなります。
私的年金や預貯金の活用、資産運用による補完に加え、就労の継続や家族からの支援、公的扶助制度の利用など、複数の手段を組み合わせて対応している世帯も多く見られます。
老後の家計を安定させるためには、将来の収支を早い段階から見据え、現実的な準備を進めていくことが大切です。
8. 【住民税非課税世帯】自治体ごとに支援内容はどれほど違うのか?
国の制度として設けられている非課税世帯向け支援に加え、実際には市区町村ごとに独自の優遇制度を設けているケースも少なくありません。
同じ住民税非課税世帯であっても、住んでいる自治体によって受けられる支援内容には差があります。
そのため、国の給付金や減税制度だけを見るのではなく、自身が住む自治体独自の支援策も確認しておくことが重要です。
8.1 水道料金の減免制度を設ける自治体も
住民税非課税世帯や低所得世帯を対象に、水道料金や下水道使用料の減額制度を実施している自治体があります。
たとえば、さいたま市では、市民税・県民税非課税世帯を対象に、水道料金と下水道使用料の減額制度を設けています。(出所:さいたまこそだてWEB)
家計の中で水道光熱費は毎月発生する固定費であるため、こうした減免制度は継続的な負担軽減につながります。
8.2 ごみ袋支給や交通費補助を行う自治体もある
自治体独自支援は公共料金だけではありません。地域によっては、
- 指定ごみ袋の無料配布
- 高齢者向けバス乗車券の助成
- タクシー利用券の交付
- 外出支援の交通費補助
などを実施しているケースがあります。
特に高齢者世帯では、通院や買い物にかかる移動費が家計負担になりやすいため、交通支援制度が生活を支える役割を果たしています。
8.3 災害見舞金や独自給付金につながる場合も
近年は物価高対策として、自治体独自の給付金を実施するケースも増えています。
水道基本料金の減免や生活支援給付金などを独自に行う自治体もあり、支援内容は地域によって大きく異なります。たとえば、向日市では物価高騰対策として水道基本料金の減免を実施しています。
また、自然災害発生時には、住民税非課税世帯や低所得世帯を対象に見舞金や生活再建支援を上乗せする自治体もあります。
8.4 「全国共通制度」だけで判断しないことが大切
住民税非課税世帯向けの支援というと、国の給付金や保険料軽減制度が注目されがちです。
しかし実際には、自治体独自の支援のほうが長期間にわたり家計を支えるケースもあります。
同じ収入水準であっても、住んでいる地域によって受けられる支援は異なります。非課税判定を受けた場合は、市区町村のホームページや福祉窓口で利用できる制度を一度確認しておくことが重要です。全国共通制度だけでは見えない支援策が用意されている場合も少なくありません。
9. 【住民税非課税世帯】最新の経済対策における位置づけを確認
ここ数年の経済対策を見ると、支援の対象や手法には変化が生じています。
以前は住民税非課税世帯への現金給付が中心でしたが、現在は減税や子育て支援などを組み合わせた、より多面的な支援策へと広がりつつあります。
9.1 定額減税は今後も実施される可能性がある政策
2024年に実施された経済対策では、物価上昇による家計負担を和らげる目的で定額減税が導入されました。
この制度では、所得税3万円と住民税1万円を合わせた1人あたり4万円が減税対象となり、夫婦と子ども2人の4人世帯であれば合計16万円分の負担軽減を受けられる仕組みとなっていました。
会社員などの給与所得者については、2024年6月以降の給与から順次減税が反映され、手取り収入を増やすことで物価高への対応を図る内容となっていました。
定額減税そのものは一度限りの措置として行われましたが、税負担を直接軽減する仕組みは今後の経済対策でも有力な選択肢とみられています。経済情勢によっては、同様の減税制度や、減税と給付を組み合わせた新たな支援策が検討される可能性もあるでしょう。
9.2 子育て世帯を対象とした支援も拡大
近年の政策では、低所得世帯だけでなく、子育て世帯全体を対象とした支援の強化も進められています。
例えば、こども家庭庁による「物価高対応子育て応援手当」では、18歳以下の子どもを養育する世帯に対する給付が行われました。
こうした支援は、従来のように住民税非課税世帯のみを対象とするものではなく、子育て世帯全体へ幅広く支援を届ける点が特徴となっています。
9.3 2026年以降は「給付付き税額控除」などの制度も議論
今後の制度として注目されているのが、「給付付き税額控除」の導入です。
この仕組みは、まず税額控除によって負担を軽減し、それでも控除しきれない場合には現金給付によって補完するというものです。低所得世帯や住民税非課税世帯を含め、幅広い層への支援を目的として検討が進められています。
将来の経済対策では、一時的な給付金だけに頼るのではなく、税制を活用した継続的な支援へ重点が移っていく可能性もあると考えられています。
10. まとめにかえて:制度理解と支援活用の重要性
近年の経済対策は、その都度内容や対象が見直されており、受けられる支援も一律ではなくなっています。そのため、「どの給付金が実施されているか」だけではなく、自身の所得区分や世帯状況が制度上どの位置にあるのかを理解しておくことが重要です。
特に住民税の課税・非課税の区分は、医療費の自己負担割合や社会保険料、さらには自治体独自の助成制度にも関わってきます。わずかな所得差によって対象の可否が変わるケースもあるため、自分の状況を正確に把握しておく必要があります。
年金が家計の中心となる高齢期では、収入額だけを見るのではなく、その収入が制度上どのように扱われるのかという視点も欠かせません。通知書の内容を確認したり、自治体へ相談したりすることが、将来の家計管理に役立つ第一歩となります。
公的支援は、ただ待つだけでは十分に活用できません。制度の仕組みを理解し、自ら確認して利用することが大切です。そのためにも、まずは自身の税区分や利用可能な制度を正しく把握しておくことが、安心した暮らしにつながるでしょう。
参考資料
- 総務省「2020年基準消費者物価指数 全国2026年(令和8年)3月分及び2025年度(令和7年度)平均」
- 内閣府「「強い経済」を実現する総合経済対策」
- 総務省「個人住民税」
- 神戸市 よくある質問と回答「住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?」
- 厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」(e-stat)
- マイナポータル「01 わたしの情報を取得する」
- さいたま市 さいたまこそだてWEB
- 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況
- 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」用語の説明
- こども家庭庁「物価高対応子育て応援手当」
マネー編集部社会保障班







