春の訪れを感じる季節となりましたが、物価の上昇は続いており、日々の生活費に頭を悩ませている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

特に年金で生活されている方にとって、少しでも収入が増えるのは嬉しいものです。

実は、公的年金とは別に、収入が一定基準額に満たない方を対象とした「年金生活者支援給付金」という制度があります。

これは自動的に支給されるものではなく、ご自身での申請が必要なため、制度を知らないと受け取れない可能性があります。

この記事では、どのような方が対象で、いくら受け取れるのか、そしてどうすれば手続きができるのかを、わかりやすく解説していきます。

年金生活者支援給付金制度の概要

「年金生活者支援給付金」は、公的年金などの収入や所得額が一定の基準に満たない年金受給者の生活をサポートするための制度です。

この給付金は一時的なものではなく、年金に上乗せされる形で継続的に支給されるのが特徴です。

受給している基礎年金の種類によって、以下の3つに分けられます。

  • 老齢年金生活者支援給付金
  • 障害年金生活者支援給付金
  • 遺族年金生活者支援給付金

初回の受け取りには申請が必要ですが、一度手続きをすれば、支給要件を満たしている限り2カ月に一度、定期的に支給されます。

「年金生活者支援給付金」を受け取れる方の条件

ここでは、「年金生活者支援給付金」を受け取るための具体的な支給要件について、詳しく見ていきましょう。

「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」の対象者

「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」は、それぞれ障害基礎年金または遺族基礎年金を受給していることが前提です。

その上で、前年の所得が479万4000円以下であることが条件となります。

ここで重要なのは、所得の計算には障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれないという点です。

また、扶養しているご家族の人数に応じて所得の基準額が引き上げられることも覚えておくとよいでしょう。

「老齢年金生活者支援給付金」の対象者

年金生活者支援給付金制度について2/6

年金生活者支援給付金制度について

出典:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

一方で、「老齢年金生活者支援給付金」の支給対象となるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 65歳以上で老齢基礎年金を受給している
  • 同じ世帯に住む全員の市町村民税が非課税である
  • 前年の公的年金などの収入とその他の所得(給与所得や利子所得など)の合計額が、昭和31年4月2日以降に生まれた方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下である

このように、「老齢年金生活者支援給付金」はご本人の所得だけでなく、世帯全体の課税状況も関係してくる点に注意が必要です。

なお、こちらの判定においても、障害年金や遺族年金などの非課税収入は所得に含まれません。

また、所得が基準額をわずかに超えてしまい給付の対象から外れる方との公平性を保つため、「補足的老齢年金生活者支援給付金」という仕組みも用意されています。

この対象となるのは、「昭和31年4月2日以降に生まれた方で所得合計が80万9000円を超え90万9000円以下の方」、または「昭和31年4月1日以前に生まれた方で所得合計が80万6700円を超え90万6700円以下の方」です。

年金生活者支援給付金の支給額はいくら?

年金生活者支援給付金は、「老齢」「障害」「遺族」の3種類があり、それぞれ公的年金に上乗せして支給されます。

ここでは、具体的にいくら受け取れるのか、その金額を確認していきましょう。

年金生活者支援給付金の支給金額3/6

年金生活者支援給付金の支給金額

出典:日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」

【2025年度】年金生活者支援給付金の支給額

2025年度の年金生活者支援給付金の額は、2024年度から2.7%引き上げられました。

  • 老齢年金生活者支援給付基準額(月額):5450円
  • 障害年金生活者支援給付金(月額):1級6813円・2級5450円
  • 遺族年金生活者支援給付金(月額):5450円

【2024年度】年金生活者支援給付金の支給額

  • 老齢年金生活者支援給付基準額(月額):5310円
  • 障害年金生活者支援給付金(月額):1級6638円・2級5310円
  • 遺族年金生活者支援給付金(月額):5310円

ただし、老齢年金生活者支援給付金は、全員が一律で月額5450円を受け取れるわけではありません。

この基準額を基に、これまでの保険料納付期間などに応じて個別の給付額が計算されます。

上記の金額はすべて月額であり、実際の支給日には2カ月分がまとめて公的年金の受取口座に振り込まれます。

もし基準額通りに受給できる場合、1回の支給で約1万円、年間では約6万円の収入増となります。

なお、厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2025年3月時点での平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金が4146円、障害年金生活者支援給付金が5727円、遺族年金生活者支援給付金が5228円という実績でした。

※2025年3月時点で認定されている方の平均給付月額です。

【年金生活者支援給付金】申請手続きの方法

「年金生活者支援給付金」は、対象になれば自動的に受け取れるわけではなく、申請手続きが必要です。

手続きを忘れると受け取れませんので、注意しましょう。ここでは、多くの方が当てはまる2つのケースに分けて、請求の流れを解説します。

パターン1:すでに年金を受給中で、新たに給付金の対象となった方

支給対象となった場合4/6

支給対象となった場合

出典:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」

  1. 毎年9月の初め頃から、対象となる方へ「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次送られてきます。受け取ったら、必要事項を記入し、切手を貼って投函します。
  2. 締切日までに提出すれば10月分から遡って受け取れますが、遅れてしまうと請求した月の翌月分からの支給となります。請求書が届いたら、早めに手続きを済ませるのがおすすめです。

※「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた方は、スマートフォンやパソコンからの電子申請も利用できます。電子申請をした場合は、はがきを郵送する必要はありません。

パターン2:これから老齢年金の受給が始まり、給付金の対象にもなる方

  1. 年金の受給権が発生する3カ月前に、年金を受け取るための「年金請求書(事前送付用)」が日本年金機構から届きます。この封筒の中に「年金生活者支援給付金請求書」が同封されています。
  2. 必要事項を記入し、年金の受給が始まる年齢の誕生日の前日以降に、年金請求書と一緒に年金事務所へ提出してください。

【重要】翌年以降の請求手続きは原則として不要です

「毎年手続きが必要なの?」と心配されるかもしれませんが、一度請求書を提出して受給が決まれば、翌年以降は支給要件を満たし続ける限り、手続きは原則不要です。

※年金生活者支援給付金は、毎年、前年の所得などに基づいて継続して支給できるかの判定が行われます。その結果は、毎年10月分(12月支払い)から1年間適用されます。

公的年金のみで生活するシニア世帯の現状

年金だけで生活している高齢者世帯は、実はそれほど多くないのが現状です。

厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、収入が公的年金・恩給のみという世帯は43.4%でした。

高齢者世帯の総所得に占める「公的年金・恩給」の割合別世帯構成6/6

高齢者世帯の総所得に占める「公的年金・恩給」の割合別世帯構成

出典:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況

  • 公的年金・恩給の割合が100%の世帯:43.4%
  • 公的年金・恩給の割合が80~100%未満の世帯:16.4%
  • 公的年金・恩給の割合が60~80%未満の世帯:15.2%
  • 公的年金・恩給の割合が40~60%未満の世帯:12.9%
  • 公的年金・恩給の割合が20~40%未満の世帯:8.2%
  • 公的年金・恩給の割合が20%未満の世帯:4.0%

このデータから、半数以上の56.6%の高齢者世帯が、公的年金や恩給以外の収入源で生活費を補っていることがわかります。

公的年金だけで生活するのが難しい可能性も考えて、早いうちから老後の生活設計を立てておくことが大切だといえるでしょう。

まとめ

今回は、公的年金に上乗せして支給される「年金生活者支援給付金」について解説しました。

この制度は、年金収入が一定基準額以下の方の生活を支える大切な仕組みですが、ご自身で申請しなければ受け取ることができません。

もし対象になるかもしれないと感じたら、まずは日本年金機構から案内が届いていないか確認してみましょう。

物価高が続くなか、こうした制度を上手に活用することが、ゆとりあるシニアライフにつながります。

ご自身の状況と照らし合わせ、不明な点があれば給付金専用ダイヤルや年金事務所に相談してみてはいかがでしょうか。

参考資料