トヨタ・ソフトバンクも本腰、MaaSによるモビリティー社会の変革

オンデマンドで自由な移動が可能に

MONETの宮川社長(左)とトヨタの豊田社長

本記事の3つのポイント

  • 世界各国でMaaSや新たなモビリティーサービスがスタートするなか、様々な課題も徐々に見えてきた
  • トヨタとソフトバンクが共同出資会社を立ち上げ、MaaSの普及に本腰を入れてきた
  • 横浜市では観光促進を目的に独自のMaaSを立ち上げ。AIやIoT技術を活用
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 MaaS(Mobility as a Service)とは、ユーザーのニーズに応じて、電車やバスなどの公共交通機関から自動車やタクシー、レンタカーの利用、さらには自転車の共有まで、様々な交通手段で利用者をサポートするトランスポートサービスである。ユーザーは、煩わしい複数の発券や支払いの操作などを行うことなく、1つのアプリケーションを操作するだけで、目的地まで容易に移動することが可能となる。

2030年に実現が期待される都市交通

 例えば、今から約10年後の2030年には、世界の人口の約3分の2が都市部に住むようになると予想されている。それにより、世界的規模で人とモノに対する移動ニーズが急激に増加・多様化し、都市交通システムに対して大きな変革が求められるようになる。その実現には、地域における移動の情報を網羅し、全体の移動を最適化するプラットフォーム「MaaS」が不可欠となる。

 この30年に想定されるモビリティー社会では、子供や高齢者、障害者、さらにはクルマを運転できないすべての人も、それぞれが行きたいところへ自由に移動することができるようになる。自宅から病院、スーパーマーケットへの買い物など、各自の生活サイクルに合わせてオンデマンドで移動することが可能になる。

 また、宅配便などのロジスティクスサービスも今後大きく変わってくる。インターネットで注目した商品が、ドローンなども活用され、より安全かつスピーディーに手元に届くことが期待される。

 そのようなモビリティー社会では、都市のあらゆるモビリティーやインフラからデータが収集され、交通全体を制御するシステムが最適な移動手段・経路を算出。それをモビリティー側へフィードバックすることで、地域全体の交通が最適化される。一方で、より高度なMaaSを実現するためには、モビリティーの運行アルゴリズムやセンター管制・監視システム、高信頼性のセキュアな情報通信、クラウドシステムなどを融合する必要がある。(2019年5月24日開催 デンソー ダイアログデーより)

海外で先行するMaaSの社会実装と見えてきた課題

 バスやタクシーなどにおける慢性的な運転手不足に悩む海外各国では、MaaS・モビリティーサービスの社会実装が急ピッチで進められている。

 フィンランドでは、10年ほど前から顧客(ユーザー)を中心として政策の検討を進めており、事業者主権からユーザー主権への転換を前提として、デジタル化、ライドシェア解禁を盛り込んだ交通サービス法の制定が進められている。

 ドイツでは、カーシェアリング(ワンウェイ型)が急速に拡大して、ステーション型を大きく上回る状況にある。ドイツ北部に位置するハンブルク市では、自家用車通勤を減らすために、鉄道、バス、カーシェアリング、自転車シェアリング、タクシー配車を共通して利用できるプログラムが提供され、市内に40カ所以上あるSwitch Pointではカーシェア/自転車の乗り換えが可能であり、ベルリン門駅ではカーシェアと地下鉄・鉄道間のスムーズな乗り換えが可能となっている。

 一方で、MaaSの普及には課題もある。様々なモビリティーサービスを統合してユーザーとの接点を独占したいMaaSオペレーターと、収益増のメリットを期待するモビリティーサービス事業の利害の対立。地域ごとの交通政策の違い(地方都市、過疎地、大都市、観光地、大都市近郊など)、またデータ連携やデータの標準化、セキュリティーの確保も重要となる。オープンデータやデータ形式の標準化、制度づくり、実証実験などは行政が中心となって進めていく必要があり、データ連携やキャッシュレスの推進、ビジネスモデルの策定などは民間企業が協調領域と競争領域のなかで解決を図っていかなければならない。

トヨタ・ソフトバンクがMaaS普及に本腰

 19年3月、ソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資会社であるMONET Technologies㈱(東京都港区)は、全国の自治体や関連企業を集め、トヨタのモビリティーサービス専用EV「e-Pallete」を用いたMaaSの提供に向けたビジョンを宮川潤一社長が示した。

トヨタのe-Pallete

拡大する

 MONETは、マーケットへの期待も大きいMaaSの世界において、その中心としてビジネスを展開していくことを目指している。「MONETのプラットフォームは、サービスをするサービサーと、自動車・運輸会社、MaaSデータをつなぐ役割を担う。現在、車載カメラや車内情報、走行情報など170以上の車両ログを集約。また、トヨタやソフトバンクのプラットフォームとも接続・連携しており、これらから収集したデータを活用することで、既存交通の高度化、新たなライフスタイルの創出、社会全体の最適化を進めていく」と宮川社長は語る。

 既存交通の高度化においては、路線バスなど既存モビリティーのさらなる高度化・効率化を進めていく。新たなライフスタイルの創出では嗜好分析による提案、社会全体の最適化ではインフラ間の連携や需要の平準化・分散化、遊休資産や余剰資産の活用を進めていく。これが、MONETの全体戦略となる。

 現在、自動運転車導入への基盤を築く時代にあり、19年度にはオンデマンドバス+サービスカーをスタートさせ、23年からトヨタ「e-Pallete」の本格導入を進めていく。このビジョンの実現に向けて、多様な業界・業種の企業(サービス事業者)が参加し、MaaS事業開発などの活動を行うことで、移動における社会課題の解決や新たな価値創造を目指す「MONETコンソーシアム」を設立した。3月末時点でコカ・コーラ ボトラーズジャパンやサントリーホールディングス、東日本旅客鉄道、ヤフーなど88社が参画。勉強会や情報交換会の実施、課題の取りまとめや、自動運転MaaSに向けた車両・サービス企画、他社サービスとのデータ連携、自治体とのマッチングなどを効率的に進めることが可能となる。

 さらにMONETは、ホンダならびに日野自動車と資本・業務提携を締結した。2社はそれぞれ2億4995万円を出資し、9.998%の株式を取得する。この提携によって、日野のトラックやバスから得られる人や物の移動に関する車両データと、ホンダの乗用車などを活用したモビリティーサービスから得られるデータが連携できるようになり、MONETのプラットフォームをさらに進化させることができるという。

観光促進を目指した横浜MaaS

 横浜市は、NEDO、NTTドコモと共同で、横浜MaaS「AI運行バス」実証実験(18年10月5日~18年12月10日)を、みなとみらい21および関内エリア周辺で実施した。リアルタイムで最適な車両・ルートを導き出すAI配車機能に加え、店舗・商業施設がブログ感覚で、施設情報の告知や集客のためのクーポンをリアルタイムに利用者に伝える情報配信機能を統合し、MaaSプラットフォームへ進化させたAI運行バスを運行。また、250を超える観光・グルメ・アミューズメントなどの商業施設との連携により、エリア内の回遊性向上の効果を検証した。

 横浜市では、AI・IoTなどの活用により新しいビジネスの創出を促進する「I・TOP 横浜」の取り組みにおいて、まちの回遊性向上ならびに商業施設への送客効果による経済の活性化、賑わいの創出を目指す「まちの回遊性向上プロジェクト」を立ち上げている。実証実験はこのプロジェクトの一環として実施された。またドコモは、AI、IoTにより、未来の移動需要を見える化。様々な移動手段の効率的運行による交通全体の最適化と、移動×サービスによる新たなビジネスを創出したい考えだ。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水聡

まとめにかえて

 トヨタ自動車などの最近の取り組みを見ると、自動車メーカーがクルマづくりから、モビリティーサービスのサービス提供に軸足を移していることがうかがえます。MaaSの普及などにおいては、IoTや5Gなど新技術や先端技術の導入が欠かせず、こういったハードウエア面ではより一層ティア1企業や半導体・電子部品メーカーの存在感が増していくことになるでしょう。

電子デバイス産業新聞

参考記事

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