「人に迷惑をかけたくない」と周囲の視線に敏感になって、親が育児を抱え込み、家庭の心理的な門戸が閉じられる。

家庭が子育てを囲い込むうちに、地域の住民にとって子どもが「他人」や「騒音」になる。

ルールを厳格に守ることを他人に求める人が、子どもをコントロールできない親に怒りを募らせ、親はますます厳重に子育てを家庭に囲い込む。

そのうちに、子を育てる親が見知らぬ人の親切に対しても疑心暗鬼になって、家庭の中の空気がよどみ、支配や共依存といった極端な人間関係が生じやすくなる……。

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これは筆者の妄想に基づいて創作した架空の地域の風景です。あるひとつの事象が、めぐりめぐって思わぬ影響を与えて合っているディストピア版「風が吹けば桶屋がもうかる」的なもので、決して普遍的な話ではありません。

とはいえ、子育て・家事・地域活動に追われながら、広く浅く雑多な人間関係を結んでいると、少しずつ見えてくることがあります。それは、「多くの社会問題は地続きなのではないか」ということです。

そして、改善すべき点は山ほどあるのでしょうが、もし、地域の雰囲気が変われば、冒頭の連鎖とは逆の良い変化も起きるのかもしれない、ということです。

子育て世代の9割が「子育てには地域の支えが重要」と感じている

「子どもは地域で育てるもの」というのは、ひとつの理想ではあります。とはいえ、あまりにも漠然としていて、イメージ先行型の言葉であることは否めません。

それでは、子育て中の親は地域のつながりについて、どんな考えを持っているのでしょうか。

内閣府によって行われた「家族と地域における子育てに関する意識調査」によれば、「子育てには地域の支えが非常に重要/やや重要」と回答した子育て世代にあたる20代~50代の割合は、9割にのぼっています。

その「支え」は具体的にどんなことを指すのでしょうか。男女の回答(複数回答)を合わせたものを多かった順に並べていくと、以下のようになりました。

(1) 子どもの防犯のための声かけや登下校の見守りをする人がいること
(2) 子育てに関する悩みについて気軽に相談できる人や場があること
(3) 子育てをする親同士で話ができる仲間づくりの場があること
(4) 子どもと大人が一緒に参加できる地域の行事やお祭りなどがあること
(5) 子育てに関する情報を提供する人や場があること

上記の他に4割を超えた回答は、男性が「子どもと一緒に遊ぶ人や場があること」、女性は「不意の外出や親の帰りが遅くなった時などに子どもを預かる人や場があること」でした。

つまり、本音を言えば、子育て中の家庭の多くは「もし安心できる環境がそこにあれば誰かに悩みを相談し、困ったら子を預け、人が大勢集まる楽しい雰囲気の場所に出向いて子を思い切り遊ばせたい」と願っているのではないでしょうか。

「地域を支えたい」と考える潜在ボランティアの存在も

続いて、地域社会において、子育てに関する活動の支え手として参加したいと思う活動について20代~70代が回答した内容を男女別に分けると、以下のような割合になっています。