春の訪れを感じる2026年3月、新年度を前にご自身のライフプランについて考えている方も多いのではないでしょうか。
特に70歳代を迎えると、「周りの同世代はどれくらい貯蓄があるのだろう」「今の年金収入で、この先の生活は大丈夫だろうか」といったお金の不安は尽きないものです。
この記事では、70歳代・二人以上世帯の平均的な貯蓄額や、厚生年金・国民年金の受給額、そして日々の生活費の実態について、公的なデータを基に詳しく解説します。
ご自身の状況と照らし合わせながら、今後の家計管理や人生設計を考える上での参考にしていただければ幸いです。
70歳代・二人以上世帯の貯蓄事情|平均値と中央値はいくら?
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」を基に、70歳代の二人以上世帯が保有する金融資産の状況を見ていきましょう。この調査には、金融資産を保有していない世帯も含まれています。
※金融資産保有額は、預貯金の他に株式、投資信託、生命保険などを含みます。ただし、日常的に利用する普通預金の残高は対象外です。
調査によると、70歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額は2416万円です。しかし、この平均値は一部の富裕層によって引き上げられている傾向があるため、より実態に近いとされる中央値は1178万円となっています。
世帯別の貯蓄額の詳しい分布は、以下の通りです。
- 金融資産非保有:10.9%
- 100万円未満:4.5%
- 100~200万円未満:5.1%
- 200~300万円未満:3.7%
- 300~400万円未満:3.9%
- 400~500万円未満:2.9%
- 500~700万円未満:6.4%
- 700~1000万円未満:6.7%
- 1000~1500万円未満:11.1%
- 1500~2000万円未満:6.7%
- 2000~3000万円未満:12.3%
- 3000万円以上:25.2%
- 無回答:0.6%
金融資産を全く保有していない「貯蓄0円」の世帯が10.9%いる一方で、3000万円以上の資産を持つ世帯が25.2%を占めています。このデータから、70歳代の二人以上世帯では、資産状況に大きな格差があることがうかがえます。
また、貯蓄額が300万円未満の世帯も合計で13.3%存在しており、貯蓄が少ない層も一定数いることがわかります。その一方で、1000万円以上の資産を持つ世帯も多く、老後の生活に比較的余裕がある世帯も少なくありません。
老後の資産額は、現役時代の収入や働き方、退職金の有無、健康状態など、さまざまな要因に影響されます。公的年金の受給額も、現役中の加入状況によって個人差が生じます。
もし貯蓄が想定より少ない場合、年金収入のみで生活を維持するのは容易ではないかもしれません。安心して老後を送るためには、各世帯の状況に応じたライフプランニングが不可欠です。
健康なうちは就労を続けたり、不動産や投資からの収入を確保したりするなど、早期からの準備が将来の安心につながるでしょう。
厚生年金の受給額|平均月額と受給者層の実態
次に、厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金の平均受給月額について確認します。
厚生年金の被保険者は第1号から第4号までありますが、ここでは主に民間企業に勤務していた方が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の月額を紹介します。
※本記事で紹介する厚生年金保険(第1号)の月額には、国民年金(老齢基礎年金)部分も含まれています。
厚生年金の平均受給月額
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
厚生年金受給者全体の平均月額は15万289円です。男女別に見ると、男性が約17万円、女性が約11万円と、5万円以上の差が生じているのが現状です。
受給月額別の厚生年金受給権者数
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
月額階級別の受給権者数を見ると、最も人数が多いボリュームゾーンは「10万円以上~11万円未満」の層で、111万2828人となっています。
国民年金の受給額|平均月額と受給者層の内訳
自営業者や専業主婦(主夫)など、厚生年金の加入期間がない方が受け取る国民年金(老齢基礎年金)の月額についても見ていきましょう。
国民年金の平均受給月額
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
受給月額別の国民年金受給権者数
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
例えば、夫が厚生年金の男性平均額、妻が国民年金の女性平均額を受給する夫婦の場合、世帯の年金収入は月額で合計22万7549円と試算できます。
65歳以上・無職夫婦世帯のリアルな家計収支
それでは、老後の生活には実際にどのくらいの費用がかかるのでしょうか。総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」を参考に、65歳以上の無職の夫婦のみで構成される世帯の家計収支を見ていきます。
収入の内訳:月額25万2818円
うち社会保障給付(主に年金):22万5182円
可処分所得(手取り額):月額22万2462円
(収入)25万2818円ー(非消費支出)3万356円=22万2462円
非消費支出:3万356円
- 直接税:1万1162円
- 社会保険料:1万9171円
支出の内訳:月額25万6521円
- 食料:7万6352円
- 住居:1万6432円
- 光熱・水道:2万1919円
- 家具・家事用品:1万2265円
- 被服及び履物:5590円
- 保健医療:1万8383円
- 交通・通信:2万7768円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万5377円
- その他の消費支出:5万2433円
- うち諸雑費:2万2125円
- うち交際費:2万3888円
- うち仕送り金:1040円
家計収支の結果:毎月の赤字額
- ひと月の赤字:▲3万4058円
※端数処理
この世帯の毎月の実収入は25万2818円ですが、税金や社会保険料といった非消費支出が3万356円差し引かれます。そのため、実際に自由に使える手取り額にあたる可処分所得は22万2462円です。
一方で、月々の消費支出は25万6521円にのぼります。手取り額である22万2462円から支出を差し引くと、毎月3万4058円が不足する計算になります。
この赤字分を、現役時代からの貯蓄を取り崩して補填しているのが、現代のシニア世帯の現実的な姿と言えるでしょう。
なお、この調査データで住居費が1万6432円と非常に低く抑えられているのは、調査対象の多くが持ち家世帯であり、家賃負担がないことが背景にあります。
賃貸住宅にお住まいの方や、住宅ローンがまだ残っている世帯では、その分の住居費が赤字額に加わることになります。
老後の住まいをどうするかは、現役のうちから計画的に考えておくべき重要な課題です。
年齢で変わる医療費の自己負担|シニア世代の備え
シニア世代になると、医療費は年齢を重ねるにつれて増加していくのが一般的です。
厚生労働省の「年齢階級別1人当たり医療費(令和4年度、医療保険制度分)」によると、シニア世代の医療費は年齢が上がるにつれて増加する傾向にあります。ここでは60歳以上の年齢層別に、1人当たりの医療費合計と、そのうち「入院+食事・生活療養」が占める割合を確認します。
60歳代からの1人当たり年間医療費の推移
- 60~64歳:38万円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:37%
- 65~69歳:48万1000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:40%
- 70~74歳:61万6000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:42%
- 75~79歳:77万3000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:45%
- 80~84歳:92万2000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:50%
- 85~89歳:107万1000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:58%
- 90~94歳:117万9000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:65%
- 95~99歳:125万8000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:69%
- 100歳以上:123万2000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:70%
年間の医療費合計は、60歳代前半の38万円から90歳代後半には125万円を超え、約3.3倍にまで増加します。この増加の主な要因は、「入院+食事・生活療養」に関連する費用です。
70歳代までは通院治療が中心ですが、80歳を過ぎると医療費の半分以上を「入院+食事・生活療養」が占めるようになり、90歳代ではその割合が70%近くに達します。
公的な高額療養費制度を利用しても、毎月の上限額までの自己負担は発生します。それに加えて、食事代や差額ベッド代(全額自己負担)などの追加費用がかかることにも注意が必要です。
まとめ
今回は70歳代の貯蓄や年金、生活費に関するさまざまなデータをご紹介しました。
平均値だけを見ると不安に感じるかもしれませんが、貯蓄額や年金受給額には個人差が大きく、多くの世帯がそれぞれの状況に合わせて家計を工夫しているのが実情です。
また、年齢を重ねるにつれて医療費の負担が増加する傾向も見逃せません。
老後の生活設計で大切なのは、平均額に一喜一憂するのではなく、ご自身の家計の現状を正確に把握し、将来のリスクに備えることです。
元気なうちは働き方を工夫したり、資産運用を検討したりと、早めに対策を始めることが、より豊かで安心なセカンドライフにつながるのではないでしょうか。
参考資料
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
- 厚生労働省「年齢階級別1人当たり医療費」
石津 大希




