こうしたスメハラを減らすことはできるのでしょうか? スメハラをセクハラやパワハラと比較すると、いくつか大きな違いがあることがわかります。

まず、スメハラの定義を定めることが困難です。どのような臭い(匂い)がハラスメントに該当するのか、明確な基準がないため、セクハラやパワハラのようにガイドラインを設けるのは難しいと言えます。強いて言えば、強い香水を控えることくらいですが、これも明確な定義がないのが実情です。

また、香水に関して言えば、同じ香水でも“いい香りだ”と感じる人がいる一方で、“嫌な香りだ”と感じる人もいます。スメハラと感じる人と感じない人との温度差が大きいのも特徴です。

次に挙げられるのは、スメハラを与える人(匂いを発する人)の意識の問題です。これは、セクハラやパワハラにも該当することですが、それ以上に意識が希薄と言えそうです。その最大の理由は、自分の臭い(口臭、体臭)は自分では分からないという点にあります。

例えば、“〇〇さんの口臭は耐えられないな、何とかしてほしい”と苦痛に感じている△△さんが、別の人から“△△さんの口臭はひどいよね”と思われているかもしれません。また、香水の匂いも、つけてしばらくすると自分では分からなくなるようです。

スメハラを訴えた人がハラスメント加害者になるリスクも

さらに、スメハラを訴えた人が、逆にハラスメントを与える人になってしまうケースがあり得ます。一般に、口臭や体臭を非難することは、当事者の人格そのものを否定することになりかねないからです。ある日、突然に自らの口臭や体臭を非難されたら、その人は当惑するはずです。

そして、もし、その人が精神的に落ち込んだりした場合、“あなたの口が臭い”と言い放った人が逆にハラスメントを与えたと非難される可能性もあります。

徐々に認識され始めてきたスメハラを、大きな社会問題にならないようにするためには、企業側でも何らかの対応が求められます。たとえば、洗面所にさり気なくマウスウオッシュ液を置くとか、オフィスに無臭の芳香剤を置くなど、やり方は様々あるはずです。

しかし、最後はやっぱり一人一人の心掛け・エチケットに頼らざるを得ません。自分自身が発する“臭い(匂い)”について一度考えてみることが必要です。もしかしたら、スメハラに無頓着な人こそ、スメハラの加害者になっているかもしれません。

葛西 裕一