戦後の荒廃後、日本の製造業は見事に生産を復活させ、輸出を拡大しました。鉄鋼、自動車、電気機器などは、日本が輸出品目として得意としていたものです。1990年代のバブル崩壊まではまさしく製造業の時代で、工場を建てて生産を増やせばストレートにGDPが成長した時代だったのです。

またそれを支援したのが銀行で、担保となる土地さえあれば融資をしましたから、製造業は資金面でも心配する必要はなかったのです。当時の都銀の格付は軒並みトリプルAで、国際金融界でもアジアの強者でした。もちろんこれまたバブル崩壊までは、の注意書き付きです。

ところが令和元年の足元では、世界はグローバル化し、かつ国ごとに明確な経済戦略があることが見て取れます。図表1の中で上位国のリヒテンシュタイン、モナコ、ルクセンブルク、バミューダ、マカオ、スイスは金融サービスを経済の中心に据えています(マカオの中心経済はカジノと観光ですが、カネを扱うということでは十分に金融立国とも言えるでしょう)。

その次のグループのノルウェーはエネルギー(油田・天然ガス)、アイスランドは観光・水産業で付加価値を創造し、アイルランドは低率の法人税でグローバル企業を誘致し、ケイマン諸島もオフショア金融センターとして確固とした地位を築いています。言わずもがな、シンガポールも香港も金融サービスが主要産業となっています。

一方、日本にはそうした国家レベルの経済戦略がありません。最近ではインバウンド需要が旺盛で潤っている企業も多いとは思いますが、言い換えれば、物価が相対的に低い日本にお金を持った外国人が大挙して来日しているのではと推察します。決して、日本が金融立国や産業立国となってビジネスや人を引っ張っている印象はありません。

今後の日本の経済運営は?

とまあ、日本の将来は暗そうに見えますが、実のところ筆者はあまりそう思いません。なぜなら、GDP世界3位、人口でも世界10位の大国が、戦後の高度経済成長を終えた後に、中国並みの成長性を持てるわけがありません。

日本はやみくもにGDP増大を求めるのではなく、今後も継続的にインバウンド需要を喚起し、観光客であれ職探しであれ、外国人が来やすい経済運営をすべきではないでしょうか。好むと好まざるとにかかわらず、筆者オフィスの近くのコンビニでは外国人スタッフがほとんどですし、彼らも稼げるから日本にいるのです。

おそらく今後は、GDPや一人当たりGDPの高い国が良い国ではなく、そこそこ稼げて居心地のいい国が良い国と評価されるのではないかと思っています。

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太田 創(一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事)