3. プロはここを見る!投資家が陥る「落とし穴」
一方で、泉田氏は「発表後に飛びついて火傷をするパターン」として、クレハ(4023)の事例を詳しく解説しています。
3.1 事例3:クレハ(4023)―「市場外取引」という失望
化学メーカーのクレハは、2024年5月に上限150億円の自社株買いを発表。当初、株価は好感して上昇しました。しかし、6月に入って潮目が変わります。
泉田氏の解説によれば、ここには「買い付け方法」の問題がありました。 当初の枠のうち、残りの100億円分を「市場外取引で大口株主から直接買い取る」方針とし、市場での買付けを中止したのです。
この決定が、投資家の期待を大きく裏切ることになりました。本来、投資家は「会社が市場で株を買ってくれることで需給が引き締まる」ことを期待して買いを入れます。
しかし、今回のように特定の大株主との相対取引で処理されてしまうと、市場内の需給バランスは何ら改善されません。
「なんだ、市場で買わないのか」というがっかり感が広がり、期待が剥落したことで株価は下落へと向かいました。
「自社株買い」の落とし穴について、元機関投資家の解説を動画で見る
4. 自社株買いを見極める3つのポイント
動画の最後で、泉田氏は「自社株買い=買い」という単純な図式を捨て、以下のポイントをチェックするようアドバイスしています。
4.1 ポイント(1)「消却」までするか?
ただ持っているだけの「金庫株」では、実質的な1株価値は向上しません。
4.2 ポイント(2)「市場」で買うか?
市場の需給を好転させる買い方なのか、特定の大株主から引き取るだけなのか。
4.3 ポイント(3)本当に実行されるか?
過去には日本電産(現ニデック)のように、枠を設定しても条件が合わずに実施しなかったケースもあります。発表後の進捗確認も不可欠です。
「企業のアナウンスを無邪気に信じて飛びつくのではなく、その中身や進捗をチェックすることが重要です」と泉田氏は締めくくりました。
『イズミダイズム』では、こうした機関投資家視点のニュース解説を随時配信しています。自社株買いのニュースが出た際は、ぜひ一度立ち止まって「中身」を確認する癖をつけてみてはいかがでしょうか。
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著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日