物価高が続くなか「老後の生活をどうまわしていこうか」と考えている方も多いのではないでしょうか。
老後は現役時代よりも収入が少なくなる傾向にあり、また公的年金は偶数月に2カ月分が支給されるため、計画的な生活設計を立てておくことが大切です。
日本の公的年金や雇用保険は、受給資格があっても自ら手続きをしないと支給されない「申請主義」が原則です。
制度を知らないために、本来受け取れるはずの公的給付を見過ごしているケースは少なくありません。
この記事では、シニア世代が知っておきたい公的給付について、年の差夫婦への加算といった「年金への上乗せ」と、再就職や賃金低下をサポートする「雇用保険からの給付」という2つの視点から、5種類の給付や手当を解説します。
1. 老齢年金と同様に「申請」が必要な公的給付とは?手続きしないと支給されない制度
公的年金(老齢年金・障害年金・遺族年金)は、私たちの生活を支える重要なセーフティーネットです。
しかし、支給要件を満たしても自動的に支給されるわけではありません。年金を受け取るには「年金請求書」を提出し、請求手続きを行う必要があります。
国や自治体が提供する多くの「手当」「給付金」「補助金」なども同様に、受け取るためには申請手続きが求められます。
もし申請期限を守らなかったり、必要な書類が揃っていなかったりすると、受け取れるはずのお金が減額されたり、最悪の場合受け取れなくなったりする可能性も考えられます。
公的な支援制度を必要な時に確実に利用するためには、自身がどの支援の対象になるのかを把握し、適切な手続きを行うことが重要です。
2. 【年金関連】申請が必要な公的給付2選|年の差夫婦や年金が少ない場合に上乗せも
老齢年金を受給しているシニア世代が、特定の要件を満たすことで、通常の老齢年金に加えて受け取れる給付金を2種類ご紹介します。
2.1 加給年金とは
加給年金は、しばしば「年金の扶養手当」や「家族手当」に例えられる制度です。
老齢厚生年金の受給者が、一定の条件を満たす年下の配偶者や子どもを扶養している場合に、年金額が上乗せされます。
加給年金の支給要件
- 厚生年金保険の被保険者期間が20年(※)以上ある方:65歳に達した時点(または定額部分の支給開始年齢に達した時点)
- 65歳到達後(または定額部分の支給開始年齢到達後)に被保険者期間が20年(※)以上となった方:在職定時改定時、退職時改定時(または70歳到達時)
(※)共済組合などの加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が、40歳(女性、坑内員、船員は35歳)以降に15年~19年ある場合も含まれます。
それぞれ上記のタイミングで「65歳未満の配偶者」または「18歳に達する年度の末日までの子、もしくは1級・2級の障害状態にある20歳未満の子」がいる場合に、年金が加算されます。
ただし、配偶者が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金や退職共済年金を受け取る権利がある場合、または障害年金などを受給している場合は、配偶者加給年金額は支給停止となります。
2025年度の加給年金額
2025年度における「加給年金」の年金額は、以下の通りです。
- 配偶者:23万9300円
- 子ども(1人目・2人目):各23万9300円
- 子ども(3人目以降):各7万9800円
また、老齢厚生年金受給者の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額には3万5400円から17万6600円の特別加算が上乗せされます。
振替加算について
加給年金は、対象の配偶者が65歳になると支給が終了します。しかし、その配偶者が老齢基礎年金を受給する場合、一定の要件を満たすと、その方の老齢基礎年金に「振替加算」が行われます。
2.2 老齢年金生活者支援給付金とは
年金生活者支援給付金は、基礎年金を受給している方のうち、所得が一定基準以下の場合に支給される給付金です。この制度には「老齢」「障害」「遺族」の3種類があり、それぞれに支給要件が定められています。
ここでは「老齢年金生活者支援給付金」について詳しく見ていきましょう。
老齢年金生活者支援給付金の支給要件
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者であること
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
- 前年の公的年金などの収入金額(※1)とその他の所得の合計が、昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下(※2)であること
※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以降生まれで合計額が80万9000円超90万9000円以下の方、昭和31年4月1日以前生まれで80万6700円超90万6700円以下の方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
老齢年金生活者支援給付金の給付基準額
2025年度の老齢年金生活者支援給付金の給付基準額は、月額5450円となり、前年度から2.7%の増額となりました。
この基準額を基に、保険料の納付状況などに応じて実際の給付金額が計算されます(下記の①と②の合計)。
老齢年金生活者支援給付金の計算式
- ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5450円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480カ月
- ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1151円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480カ月
例えば、国民年金保険料を40年間すべて納付した場合、2025年度は月額5450円(年額6万5400円)が支給されます(ただし、昭和16年4月1日以前生まれの方は計算方法が異なります)。
なお、保険料免除期間に乗じる金額は、毎年度の老齢基礎年金額の改定に応じて変動します。
3. 【雇用保険関連】申請が必要な公的給付3選|再就職や賃金低下時に
働き続けるシニア世代にとって、就労に関連する給付金や手当も重要な情報です。
シニアの就労を支援する制度は整備されつつありますが、国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、一般的に60歳を境に収入が減少する傾向が見られます。また、誰もが若い頃のようにスムーズに就職活動や就労継続ができるわけではないでしょう。
そこで、シニア世代が知っておきたい雇用保険関連の手当や給付金を3種類紹介します。
3.1 再就職手当:65歳未満が対象
再就職手当は、早期の再就職を促すための制度です。失業してから再就職または事業を開始するまでの期間が短いほど、支給額が多くなる仕組みになっています。
再就職手当の支給要件
- 対象者:雇用保険の受給資格者で、基本手当の受給資格を持つ方
- 支給要件:対象者が雇用保険の被保険者となるか、事業主として被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あり、その他一定の要件を満たす場合に支給されます。
再就職手当の給付率
- 手当額:就職日の前日までに失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数に応じて、給付率が変わります(1円未満は切り捨て)。
- 所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合:支給残日数の60%
- 所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合:支給残日数の70%
なお、再就職手当を受給し、再就職先で6カ月以上雇用され、その間の賃金が離職前の賃金より低い場合には、「就業促進定着手当」の対象となる可能性があります。
3.2 高年齢雇用継続給付:60歳以上65歳未満が対象
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の方が働き続ける中で、賃金が60歳時点よりも低下した場合に支給される給付金です。
高年齢雇用継続給付の支給要件
- 対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある、60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者
- 支給条件:賃金が60歳到達時の75%未満の状態で就労を継続する場合
高年齢雇用継続給付の支給率
- 支給額:最高で賃金額の10%(※)に相当する額
※2025年3月31日以前に支給要件を満たした方は15%
老齢年金を受け取りながら厚生年金に加入し、「高年齢雇用継続給付」を受給する場合、在職による年金の支給停止に加えて、最大で標準報酬月額の4%(※)に相当する額が支給停止となる点には注意が必要です。
※2025年3月31日以前に支給要件を満たした方は6%
3.3 高年齢求職者給付金:65歳以上が対象
高年齢求職者給付金は、65歳以上の方が失業した場合に支給される一時金です。
高年齢求職者給付金の支給要件
- 対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業した方
- 支給要件:以下のすべての要件を満たすこと
- 離職日以前1年間に、被保険者期間が通算6カ月以上あること
- 失業の状態にあること(就職への積極的な意思と能力があり、求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態)
高年齢求職者給付金の給付金額
- 支給額
- 被保険者であった期間が1年未満の場合:基本手当30日分に相当する額
- 被保険者であった期間が1年以上の場合:基本手当50日分に相当する額
65歳未満の方が受け取る「失業手当」は4週間に一度、失業認定を受けてから支給されますが、高年齢求職者給付金は一括で支給される点が特徴です。
4. 2025年に成立した「年金制度改正」のポイント
2025年6月13日に「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が参議院本会議で可決、成立しました。
この改正は、多様化する働き方やライフスタイルに対応した年金制度の構築を目指すものです。また、私的年金制度の拡充や所得再分配機能の強化を通じて、シニア世代の生活安定を図ることも重要な目的とされています。
今回の改正の主な内容を確認しておきましょう。
4.1 主な改正内容
社会保険の適用拡大
- 中小企業で働く短時間労働者などが厚生年金や健康保険に加入しやすくなり、将来の年金増額などのメリットを受けられるようになります。
在職老齢年金制度の見直し
- 年金を受給しながら働くシニアの年金が減額されにくくなり、就労意欲を高める環境を整えます。
遺族年金制度の見直し
- 遺族厚生年金における男女差を解消し、子どもが遺族基礎年金を受給しやすくなるよう見直されます。
保険料・年金額計算に用いる標準報酬月額の上限引き上げ
- 高所得者が賃金に見合った保険料を負担し、それに応じた年金を受給できる仕組みを強化します。
その他の見直し
- 子の加算や脱退一時金の見直し、iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入可能年齢の上限引き上げなど、私的年金制度も拡充されます。
これらの改正内容からも、公的年金が単に「老後の給付」だけでなく、現役世代の働き方やキャリア設計にも深く関わっていることがわかります。
5. まとめ
ここまで、シニア世代が知っておきたい公的給付について、年の差夫婦への加算といった「年金への上乗せ」と、再就職や賃金低下をサポートする「雇用保険からの給付」という2つの視点から、5種類の給付や手当を解説しました。
いずれの制度も受給資格があっても「申請しないと受け取れない」ため、ご自身が対象かどうかを確認し、忘れずに手続きを進めることが大切です。
公的年金だけで、老後にゆとりある生活を送るには難しい傾向にあるでしょう。
物価の上昇に加え、医療費の負担も年々増加しています。
家計やご自身の年金情報をよく確認しつつ、将来の生活に備える自助努力が一層重要になっていくと考えられます。
※当記事は再編集記事です。







