3. 現役トップドライバーがサーキットで磨き上げセットアップ

シビックタイプRよりも車幅が拡大されてワイドに

筆者撮影

開発には、ARTAエグゼクティブアドバイザーの土屋圭市氏と、ARTA無限のドライバーである野尻智紀選手が参加しました。

「一番こだわったのはカッコ悪い車は売れませんよというところから始めています」と土屋氏。

「スーパーGTの時に鈴木亜久里がちょろちょろと小出しに出してきて、その時にマスコミから『また張りぼてでしょ』って言われてムカついたから、冷却も吸排気も手を入れて馬力を400psオーバーまで引き上げました。サーキット走行にも耐えられるようにブレーキキャリパーとローターも換えました」と開発の経緯を明かします。

足回りは、KWサスペンションを基本に、CUSCO type-RS LSDを組み合わせ、純正よりインチダウンとなる、ART鍛造18インチホイールにPOTENZA RE-71RZ(295/35R18)を装着。ブレーキはAP Racing PRO5000Rブレーキキットを採用し、大幅な性能向上を果たしています。

セットアップを担当した野尻選手は「サーキットでもきっちりとパフォーマンスを出せるように取り組みました。CIVIC TYPE Rはもともとの特性がすごく良く、素直な車なので、損なわれないようにパフォーマンスを上げるのが難しかったですね」と語ります。

シェイクダウンは袖ヶ浦フォレストレースウェイで実施されました。

「タイムは速かったものの、サーキットでは足回りがやわらかい印象があり、コーナーではアンダーステアが出たりしたので調整。そうしたらタイムはさらに上がり、どれだけ攻めてもバランスが変わらないところまで持っていけたので満足しています」と野尻選手。

土屋圭市氏は「野尻選手がちょっとアタックしただけで1分12秒台出していますから、そこからまだまだ改良をして、今ここに至っているのですごく速いのがわかると思います」と、その実力を証明します。

ARTA GT FL5開発の思いを語る鈴木亜久里氏

筆者撮影

4. 公道とサーキットの両立を実現した究極のバランス

野尻選手はセットアップについて「コーナーに速い速度で飛び込んでいってもすごく安心感があり、その状態でもさらにしっかりと車が曲がり続ける。こういったようなバランスにしていきたいなというのはレースでも思っていて、この車も同じようにセットアップしました」と説明します。

ただし、公道走行を前提とした車両のため、サーキット専用車とは異なるアプローチが必要でした。

「サーキットでタイムを上げていこうとすると、車はすごく固くなり、公道ではすごく乗り心地が悪くなってしまう。その辺のバランスをとっていくというのは難しいけれど、なるべく乗り心地を損なわないような状態で、固さとしなやかさというところの両立がうまく取れました」と振り返ります。

ドリキンこと土屋圭市氏とマイクを握る野尻智紀選手

筆者撮影