新しい一年が始まり、親戚が集まる機会も多いこの時期。実家の今後がふと頭をよぎることはありませんか。「うちは普通の家だから、相続争いなんて無縁」と思われる方は少し注意が必要です。

筆者はFPとして暮らしやお金にまつわる多くの相談を受けてきましたが、実は揉めているのは資産家よりも、ごく一般的なご家庭であるケースが目立ちます。今回は最新の調査結果をもとに、なぜ都市部や普通のご家庭でトラブルが起きやすいのか、その実態と対策を解説します。

1. 相続トラブル、多いのは《地方と大都市圏》どっち?

最高裁判所が公表する令和6年の司法統計年報(家事編)によると、遺産分割事件(相続トラブル)で件数が多い地域は、東京・大阪・横浜・名古屋・さいたまなど大都市圏が上位を占めています。

全国の総数は1万5379件。上位の内訳を見ると、東京が2018件と突出しており、都市部ほど相続問題が表面化しやすい傾向がうかがえます。「資産家だけの問題」と捉えられがちな相続ですが、実は都市部に住むごく一般的な家庭こそ注意が必要です。

都心の住宅地は評価額が高くなりやすく、遺産が「自宅のみ」という状況では、分け方を巡って兄弟間で不公平感が生じやすいためです。金額の大小に関わらず、不動産という「分けにくい財産」をどう扱うかが、円満相続の大きな分かれ道となります。

2. 相続トラブル、どのくらいの期間で終わる?

家庭裁判所で手続きがはじまってから最終的に終結するまでの期間を審理期間と言います。遺産分割の争いは、感情面の衝突も重なりやすく、短期間で終わるとは限りません。

司法統計年報(家事編)では、3件に1件は解決まで1年以上かかっているとされています。相続が発生すると、名義変更や預貯金の手続きなども進めにくくなり、生活に影響が出ることも。だからこそ、事前の備えと、期限を守ることが重要です。

3. 相続トラブル、遺産価額「5000万以下」の”普通の家”がいちばん危ない?

相続トラブル多発!遺産価額ボリュームゾーンはどこだ?3/4

相続トラブル多発!遺産価額ボリュームゾーンはどこだ?

出所:最高裁判所「令和6年 司法統計年報(家事編)第 52 表遺産分割事件のうち認容・ を除く)―遺産の内容別」をもとにLIMO編集部作成

「揉めるのは遺産が高額な家庭だけ」というイメージもありますが、統計では遺産分割事件のうち、遺産価額のボリュームゾーンは5000万円以下が約78%。つまり、“一般的な家庭”でもトラブルに発展する可能性は十分あります。相続は金額ではなく、「家族関係」「財産の分け方」「情報の共有不足」で揉めるケースが少なくありません。

4. まず押さえたい!「相続」とは何か

相続とは、亡くなった人(被相続人)の財産や権利・義務を、家族などの相続人が引き継ぐことです。このルールは民法で定められており、遺言書がない場合は民法に従って遺産を分けることになります。

相続には、亡くなった人の配偶者と、一定の範囲の血族が「法定相続人」として選ばれます。配偶者は常に相続人となりますが、血族には優先順位があり、まず「子(第1順位)」、次に「親(第2順位)」、最後に「兄弟姉妹(第3順位)」の順で決まります。

なお、事実婚(内縁関係)や離婚した元配偶者は相続人には含まれません。もし本来の相続人が既に亡くなっている場合は、その子ども(孫や甥・姪)が代わりに引き継ぐ「代襲相続」という仕組みもあります。

相続が始まると、プラスの財産だけでなく借金などの義務も引き継ぐことになるため、誰が何を相続するのかを早期に正しく把握することが重要です。

5. まとめにかえて

今回は、最新の調査結果をもとに、意外と身近な相続トラブルの実態について解説しました。「うちは仲が良いから」「分けるほどの財産がないから」という思い込みが、皮肉にも後に大きな火種となることがあります。

司法統計が示す通り、トラブルの多くは決して特別な資産家ではありません。もし明日、相続が始まったら誰が何を継ぐのか。大切なのは、家族が元気なうちに「情報の共有」をしておくことです。前向きな未来のために、まずは相続の基本ルールを家族で話題にしてみてはいかがでしょうか。

参考資料