2016年の事業環境には厳しいものがあるが・・・

2015年の化学セクターの中では、金融緩和と原油安によって、汎用化学セクター、スペシャリティー化学セクターが健闘しました。一方、電子材料セクターは概ね不振が続きました。

2016年は、原油安要因を除くと大きな材料が見えない事業環境が予想され、銘柄、テーマの選別が難しい1年となりそうです。そんな中では、独自性が強くニッチトップ製品を収益の柱にした個別企業に注目したいと思います。

2016年の厳しい事業環境を前提に、注目するのは以下の4銘柄です。

引き続き原油安が続くと判断していること、中国経済の減速継続、米国金利引き上げなどのマイナス要因をカバーできるポートフォリオ製品ラインを有する企業に焦点を当てています。

ADEKA

マーガリンなどの業務用油脂からスタートしたADEKA(4401)は、現在では半導体メモリーの重要材料である高誘電材料、半導体レジストの重要材料、液晶向け光学材料を収益源としています。

これらは、いずれも世界トップシェアを有し、足元のハイテク環境は厳しいものの、先端製品を出し続けることで成長が続いています。

信越ポリマー

信越化学が52.0%の株を保有する信越ポリマー(7970)は、シリコーン樹脂などをベースに自動車電子化に絡むキースイッチ類で業績を伸ばしています。

300mm半導体ウエハーの搬送ケース(FOSB)で世界の40%シェアを有し、時価総額509億円(11月27日終値時点)の77%に当る現金預金を持つキャッシュリッチ企業でもあります。

SUMCO

SUMCO(3436)は信越半導体と並ぶ世界トップの半導体ウエハー企業で、インテル、TSMC等、世界有数の半導体メーカーに対するトップサプライヤーです。

今年の秋以降、主力の300mmウエハーの生産調整を余儀なくされていますが、モバイル系半導体の求める高精細化に不可欠なウエハーに対応できる数少ない企業です。在庫調整がほぼ完了する2016年1~3月以降を見据え、新年早々の投資行動が面白いかもしれません。

日東電工

日東電工(6988)では、インダストリアルテープ、オプトロニクス、メディカル・メンブレンの3セグメントの中期成長力が注目されます。世界トップの液晶パネル向け偏光板では、新しい偏光板をスマホ、大型TV向けに出荷開始していますが、これは薄型パネル化の決め手となる画期的な製品です。

メディカルでは買収した米国のベンチャー企業の核酸医薬受託合成ビジネスが大きく動き出すなど、新技術、新分野の成長期待が高まります。

2016年のセクターシナリオ:スペシャリティー化学に引き続き注目する

化学産業のコメはナフサ(粗製ガソリン)で、原油価格に連動します。2016年度平均ナフサ価格は前年度比▲10%程度値下がりの4万円/klと予想されるものの、2014年度→2015年度の▲30%強の値下がり程のインパクトはないでしょう。

原料ナフサとプラスチックなどの製品価格とのスプレッドは徐々に縮小する方向と考えています。他方、原油価格が反騰に転じ、継続的に価格が上昇トレンドに入る局面では、当然、ナフサ価格も上昇トレンドに入ります。

そうすると、安い原料コストで生産し、値上げ後の製品価格によるスプレッド改善が見込まれます。このケースでは三菱ケミカルホールディングス、三井化学などの素材ウエイトの大きい株に投資妙味が出てくるのではないでしょうか。

その他、アップルがiPhoneの2018年モデルからディスプレーに有機ELを採用するという日経新聞の報道記事に関連する銘柄にも注目したいところです(出光興産、保土谷化学、宇部興産等)。

半導体ウエハーは300mmを中心に2015年10~12月は生産調整に入っています。ウエハーメーカー自体には在庫は僅少で、需要が回復すると判断されれば一気にフル操業に入るものと予想されます。

一方、2015年春まで活況だったスマートフォン関連材料の足元の状況は厳しいものがあります。

2014年は中国のスマホ生産増で部材メーカーは恩恵を受けましたが、2015年はiPhone(アップル)の一人勝ちで、総じて恩恵はシュリンクしました。2016年は新型iPhoneの投入が言われるため、部材メーカーの受注状況に注目です。

少なくとも2016年の前半までは、現状のスペシャリティー化学セクターの中から銘柄を選定すべきと考えています。その背景は、

(1)総じて原油安の恩恵を受けやすい収益構造

(2)世界のニッチ市場で少なくとも世界トップ3に属する製品ラインを数多く持つ

(3)安定した収益をバックに、良質なバランスシート、豊富なキャッシュを持つ

の3点です。

※本記事は個人投資家向け経済金融メディアLongine(ロンジン)の記事をダイジェスト版として投信1編集部が編集し直したものです。

LIMO編集部