2. 価格転嫁を実現するためのポイントは?
同じく公正取引委員会「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」の結果について(令和7年12月15日)では、次のような取組を紹介しています。
- 発注者から価格転嫁に取り組む旨の連絡があり、価格協議が開始された。
- これまで取引価格が据え置かれていたが、今年度価格協議の呼び掛けがあり、価格転嫁を要望したところ満額認められた。
- 労務費等の上昇を理由に価格協議を申し入れ、春季労使交渉の妥結額や最低賃金の公表資料等をエビデンスとして提出するなどして、要望どおりの価格転嫁が受け入れられた。
このように、労務費の取引価格への転嫁の流れは確実に進んでいます。
では、「労務費の上昇分を価格転嫁したいけれど、何から始めたらいいのか分からない」という場合、どう進めたら良いでしょうか?
労務費の適切な価格転嫁に向けた行動を起こす際に、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(労務費転嫁指針)」が参考になります。
これは労務費などのコスト上昇分を適切に価格転嫁するための発注者・受注者双方の行動指針を定めたもので、2023年11月に内閣官房と公正取引委員会により策定されました(2026年1月改正)。
前述の公正取引委員会の「令和7年度価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」では、調査対象の43業種・12万事業者のうち約60%が労務費転嫁指針を認知し、労務費転嫁指針を知っている事業者のほうが価格交渉において労務費の上昇を理由とする取引価格の引上げが実現しやすい傾向がみられます。
物価高に負けない賃上げを行うには、原材料価格やエネルギーコスト、労務費などの適切な価格転嫁を通じた取引適正化をサプライチェーン全体で定着させることが不可欠です。
こうしたことから政府は価格転嫁対策に全力で取り組んでおり、その一環として「労務費転嫁指針」を策定しました。
「労務費転嫁指針」では、発注者及び受注者が採るべき行動・求められる行動を12の行動指針として取りまとめています。
【発注者】
①本社(経営トップ)が関与すること
②労務費の転嫁について発注者から定期的に交渉の場を設けること
③受注者に労務費等上昇の理由の説明や資料を求める場合は公表資料とすること
④サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を行うこと
⑤受注者から要請があった場合は交渉のテーブルにつくこと
⑥必要に応じ労務費上昇分の価格転嫁に関する考え方を提案すること
【受注者】
①国・地方公共団体の相談窓口などを積極的に活用し、情報を収集して交渉に臨むこと
②労務費等の上昇傾向を示す根拠資料としては公表資料を用いること
③定期的に行われる交渉のタイミングなど受注者が価格交渉を申し出やすいタイミングを活用して行うこと
④発注者から価格を提示されるのを待たずに自ら希望する額を提示すること
【発注者・受注者双方】
①定期的にコミュニケーションをとること
②価格交渉の記録を作成し、発注者と受注者と双方で保管すること
労務費の適正な価格転嫁を実現するには、受注者は「労務費転嫁指針」に沿った4つの行動を、発注者は6つの行動を理解しましょう。
なお、2026年1月に労務費転嫁指針を改正し、労務費のコスト上昇分の価格転嫁について、受注者から協議の要請があった場合に、協議に応じず一方的に取引価格を据え置くことは、「協議に応じない一方的な代金決定」(※)として、「取適法上の問題」となるおそれがあることを盛り込みました。
※受注者からの価格協議の求めがあったにもかかわらず、発注者が協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなどして、一方的に代金を決定する行為で、令和8年1月1日施行の取適法により禁止
