- 夫婦2人の「ゆとりある老後生活費」は平均で39万1000円
- 月額30万円以上の年金受給者っているの?
- 年金を増やすための有効な対策を伝授
生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(2025年度)によると、夫婦2人の「ゆとりある老後生活費」は平均で39万1000円です。
年金だけでゆとりある老後を過ごすには、配偶者の年金が国民年金中心(専業主婦など)の場合、本人の年金は月額30万円以上必要になってきます。
本記事では、月額30万円以上の年金受給者数や割合について解説します。
年金額の計算方法や年金額の目安、年金を増やすための有効な対策も紹介しますので、老後対策を考えるときの参考にしてください。
1. 厚生年金月額30万円以上の人は約1万4000人
厚生労働省の「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給権者の平均受給額は14万6429円です。
月額30万円というのは平均受給額の2倍以上にあたりますが、全国で1万4292人もいます。
男女別にみると、男性が1万3923人、女性が369人とほとんどが男性です。
2. 月額30万円以上の人は年金受給者の0.1%未満
約1万4000人というと多く感じるかもしれませんが、月額30万円以上の人は年金受給権者の0.1%未満(0.089%)にすぎません。
男性は年金受給権者の0.131%、女性は0.007%です。
前述の厚生労働省資料によると、厚生年金加入者の男女別の受給額(老齢基礎年金+老齢厚生年金)の分布は次の通りです。
男性は「15万円以上20万円未満」、女性は「10万円以上15万円未満」の割合が高くなっています。
2.1 【男性での割合】
- 5万円未満:0.6%
- 5万円以上10万円未満:8.9%
- 10万円以上15万円未満:23.7%
- 15万円以上20万円未満:42.8%
- 20万円以上25万円未満:21.4%
- 25万円以上30万円未満:2.4%
- 30万円以上:0.1%(0.131%)
2.2 【女性での割合】
- 5万円未満:4.3%
- 5万円以上10万円未満:40.1%
- 10万円以上15万円未満:46.2%
- 15万円以上20万円未満:9.1%
- 20万円以上25万円未満:1.2%
- 25万円以上30万円未満:0.1%
- 30万円以上:0.0%(0.007%)
2.3 【男女合計での割合】
- 5万円未満:1.9%
- 5万円以上10万円未満:19.4%
- 10万円以上15万円未満:31.3%
- 15万円以上20万円未満:31.4%
- 20万円以上25万円未満:14.6%
- 25万円以上30万円未満:1.6%
- 30万円以上:0.1%(0.089%)
ここまで、厚生年金月額30万円以上の人の人数や割合、老齢厚生年金受給権者の受給額の分布について解説しました。次章では、老齢厚生年金受給者の年金額の計算方法と目安、年金を増やすための有効な対策を紹介します。
3. 年金額の計算方法と目安
年金制度にどのように加入すれば、月額30万円以上の年金が受給できるのでしょうか。年金額の計算方法と目安を解説します。
3.1 年金額の計算方法
年金額は、老齢基礎年金額と老齢厚生年金額を合計して計算します。
老齢基礎年金は、20歳から60歳までの480ヶ月、厚生年金保険料または国民年金保険料をもれなく納付すれば満額の83万1700円(2025年度)が受け取れます。
老齢厚生年金は、厚生年金加入中の報酬(賞与を含む)の平均月額(平均標準報酬額)に厚生年金加入月数と所定の係数をかけて次の通り計算します。2003年4月以降に厚生年金に加入した人の年金額は次の通りです。
- 老齢厚生年金額=平均標準報酬額×5.481/1000×厚生年金加入月数
3.2 厚生年金加入者の年金額の目安(一覧表)
年金額が平均以上の人は、一定額以上の報酬を得ながら長期間厚生年金に加入した人です。
年金制度は厚生年金のみ加入、老齢基礎年金は満額受給と仮定すると、厚生年金加入者の年金額の目安は平均標準報酬額と年金加入月数によって次の通りです。
厚生年金加入者の年金額の目安2/2
出所:筆者試算・作成
3.3 厚生年金加入30年のケース
- 平均標準報酬額50万円:182万円
- 平均標準報酬額60万円:202万円
- 平均標準報酬額70万円:221万円
- 平均標準報酬額80万円:241万円
- 平均標準報酬額85万円:251万円
3.4 厚生年金加入40年のケース
- 平均標準報酬額50万円:215万円
- 平均標準報酬額60万円:241万円
- 平均標準報酬額70万円:267万円
- 平均標準報酬額80万円:294万円
- 平均標準報酬額85万円:307万円
3.5 厚生年金加入50年のケース
- 平均標準報酬額50万円:248万円
- 平均標準報酬額60万円:280万円
- 平均標準報酬額70万円:313万円
- 平均標準報酬額80万円:346万円
- 平均標準報酬額85万円:363万円
現在月額30万円以上の年金を受給できるのは、たとえば毎月65万円以上の給与、年間240万円以上の賞与を20歳から70歳まで継続して稼いだ人です。
ほぼ実現不可能な数字といえるでしょう。実際に月30万円以上受給しているのは、繰下げ受給した人を除くと旧規定で年金額を受給する70歳代後半以上の人に限られます。
4. 年金を増やすための有効な対策
月額30万円以上の年金を受給するのはほぼ不可能ですが、老後生活のためには年金額を少しでも増やしたいところです。ここでは有効な対策を紹介します。
4.1 厚生年金に加入する
前述の厚生労働省資料によると、厚生年金受給権者の平均受給額(14万6429円)は、国民年金加入者(5万7584円)の2倍以上です。
国民年金に加入しても老齢基礎年金しか受け取れないのに対し、厚生年金加入者は老齢基礎年金に加え、老齢厚生年金が受給できるからです。
年金受給額だけを考えれば、個人事業主やフリーターとして働くよりも会社員で働く方が有利です。
4.2 長く厚生年金に加入する
老齢厚生年金の受給額は、厚生年金加入期間に比例します。平均標準報酬額が同じならば、40年加入した人は、20年加入の人の2倍の老齢厚生年金を受給できます。
定年退職後も、再雇用などで可能な限り仕事を続けることが年金額を増やすことにつながります。
また、厚生年金加入期間が同じならば、老齢厚生年金の受給額は平均標準報酬額に比例します。
昇給・昇格などで平均標準報酬額が高くなれば年金額は増えます。しかし、いくら頑張っても昇給・昇格は思い通りに行かないことも多いでしょう。できるだけ長く働くことがより確実な方法と言えます。
4.3 繰下げ受給を活用する
老齢年金の支給開始時期を本来の65歳から66歳以降に繰下げることによって、年金額を増やす方法もあります。
1ヶ月あたり0.7%増額するので、70歳まで繰り下げれば年金額は42%(=0.7%×60ヶ月)増加します。
繰下げ受給を活用するには、受給開始までの生活を支える収入が必要です。定年退職後も仕事を続けることで、繰下げ受給が可能となります。両方を併用することが年金額アップのポイントです。
5. まとめにかえて
厚生年金月額30万円以上の人は全国で約1万4000人いますが、年金受給権者に占める割合は0.1%未満です。現在の規定で月額30万円以上を受給するのは、ほぼ不可能といえるでしょう。
本記事で紹介した年金額の計算方法より、年金額を増やすには「厚生年金に加入する」「長期間厚生年金に加入する」「収入を高める」ことが必要です。
現実性があり有効な方法は、定年退職後も仕事を続けて繰下げ受給を活用することです。
※金額等は執筆時点での情報にもとづいています。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
- 日本年金機構「報酬比例部分」
- 公益財団法人 生命保険文化センター「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」
西岡 秀泰