別な言い方をすると、君が友人に千円を貸したら、君は債権者となる。友人は債務者となる。この専門用語、ちょっと難しいかな?

普通は借金をすると、お金の借り賃として“利子”を支払わなければならない。でもこのケースでは、君の友人は明日返すと言っているし、同じ社内の同僚である君から借金したのだから、おそらく君は、たった千円を取りっぱぐれる可能性はゼロに近い。

専門用語を使うと、デュレ-ション・リスクは1日、クレジットリスクはほとんどなし、ということになる。

同僚関係がこじれても何なので、ここは大サービスで利子なしで貸してもいいだろう。

ただし、気を付けないといけないこともある。君の友人が金を返さないこともあるということだ。この借金は口約束だ。明日になって、「千円なんて借りたかしら?」と開き直られる可能性もある。

この場合、君はどうすればいい? 選択肢は次の2つだ。

① 千円を取り戻すため、友人に督促を続ける。
② あきらめる。

選択肢①は、いかに君が“債権者”であっても辛い対応だ。“債務者”は同僚で、毎日顔を突き合わせないといけない。「借金返せ」と言い続けるのは、心理的にも難しい。

つまり、金を貸した債権者でも「債務者に対し絶対的に有利な立場になるということではない」ということを理解してほしい。

選択肢②はスマートなやり方だ。失ったところで、千円。そのうち忘れる金額だ。忘れたふりをして督促を続けなければ、同僚関係も表面上うまくいくように見える。ただし、君はこのことを一生忘れないだろうし、友人は人生で最も重要な“信用”を失うことになる。

結論的には、①も②も辛い対応となる。したがって、お金を貸すのであれば、“戻って来ない”ことを覚悟で貸すしかない。つまり、同僚や友達を失って人間関係が壊れることを前提で、ということなのさ。

仮に個人は忘れることはできても、銀行はお金を貸したことは忘れない。滞納した債務者からは懲罰的な金利を取るか、二度と取引ができないようにするのがオチだ。

ことほどさように、人間関係でお金が絡むと何かと世知がらくなる。でも、君がしっかりした社会人になるためには、お金に毅然とした態度でないと、お金は君に振り向いてくれない。これを分かってほしい。

次は、「悪い借金」と「資産形成」について話そう。

太田 創(一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事)