寒さが増すこの時期、体調だけでなく家計のことも気になる方は多いかもしれません。「もし大きな病気になったら、医療費はどうなるの?」そんな不安を和らげてくれるのが高額療養費制度です。
その制度がいま、見直しの議論が行われています。2025年12月15日、厚生労働省の専門委員会は、自己負担の上限額を引き上げる方向性をおおむね了承しました。新しい仕組みは2026年夏以降、段階的にはじまる見通しです。
「なぜ今なのか」「家計への影響はどれくらいなのか」今回は最新の資料をもとに、その背景を整理します。
1. 【高額療養費制度】なぜ見直しが必要?「家計の中で医療費はどのくらいの負担感?」
「医療費は、家計の中でどのくらいの負担になっているのか」厚生労働省は高額療養費制度の自己負担上限額と家計の収支状況を比べた試算を公表しています。
この試算では、収入から生活費や社会保険料などを差し引いた後に、どの程度の余裕が残るかをもとに、現在の自己負担上限額が家計に与える影響を確認しています。その結果、平均的な家計を前提とした場合、多くの所得区分で、現在の自己負担上限額は「生活に必要な支出を除いた後の範囲内」に収まっていることがわかりました。
一方で、
- 所得水準が低い層ほど、医療費の自己負担が家計に与える影響は相対的に大きく
- 所得水準が高い層ほど、家計に残る金額に比べて、自己負担上限額の増え方は緩やか
という傾向もみられます。
政府はこうした状況を踏まえ、制度を将来にわたって維持していくためには、負担能力に応じた見直しが必要ではないかと判断しました。これが今回の自己負担上限額引き上げの議論につながっています。
1.1 「高齢者の通院」どんな病気で上限に達しているのか?
もう一つの論点が、70歳以上の外来特例です。厚生労働省は「外来特例の月額上限に該当する者の疾病別 患者割合」をまとめています。
上限額に達するほど通院している75歳以上の人の病気を見ると、次の傾向があります。
- 2割負担の人:高血圧、糖尿病、がん、歯周病など
- 1割負担の人:腎不全(人工透析など)が約3割
つまり、長期間・継続的な通院が必要な人ほど、医療費が家計の大きな負担にならないよう、現在の制度が機能している状況です。その一方で、現役世代との負担のあり方をどう考えるかが課題となっています。
なお、これはあくまで統計にもとづく試算であり、実際の家計状況や医療の必要性は人によって大きく異なります。

