物価高や社会保険料の負担の大きさなど、私たちの家計を悩ませる要因はさまざまです。一方、税負担については基礎控除の拡大などにより緩和され、手取り増も期待できます。
所得税や住民税は、所得額によって金額が変わります。年金収入を受け取るようになると、どれくらいの年収で住民税が非課税になるのでしょうか。
この記事では、65歳以上の年金受給者の住民税が非課税になる基準や、非課税になるメリットを解説します。
1. 住民税非課税世帯、どれくらいいるの?
まずは、住民税非課税世帯がどれくらい存在するのか、確かめてみましょう。
- 〜19歳:0%
- 20〜24歳:66.0%
- 25〜29歳:15.7%
- 30〜34歳:14.3%
- 35〜39歳:11.4%
- 40〜44歳:10.5%
- 45〜49歳:12.7%
- 50〜54歳:12.3%
- 55〜59歳:13.0%
- 60〜64歳:16.1%
- 65〜69歳:23.9%
- 70〜74歳:35.2%
- 75〜79歳:42.6%
- 80歳〜:47.6%
- 65歳以上:38.9%
- 75歳以上:45.6%
20〜24歳、80歳〜、75〜79歳、70〜74歳あたりが、非課税世帯の割合が増えています。20〜24歳は、一人暮らしの学生などが多いことが割合の高い要因と考えられます。また、高齢者世帯の割合が高いのは、収入が給与ではなく年金であり、現役の頃に比べて少なくなることが要因でしょう。
65歳以上に絞ると、住民税非課税世帯は約4割、75歳以上は約5割となっています。住民税が非課税の高齢者世帯は、決して少なくないことがわかります。
次章では、単身世帯で住民税非課税になる収入のボーダーラインを見てみましょう。
2. 【単身世帯】住民税非課税になる収入のボーダーライン
65歳以上の単身世帯の場合、住民税が非課税になる年金収入のボーダーラインは以下のとおりです。
- 住民税非課税の所得要件:45万円
- 公的年金等控除:110万円
- 合計:155万円
単身世帯は年金収入155万円までは、住民税がかかりません。年金受給者には、公的年金等控除が適用されます。公的年金等控除は、65歳未満と65歳以上で最低控除額が変わる仕組みです。65歳以上は最低110万円が控除されるため、所得が大幅に減ります。
そして、住民税が非課税になる所得要件は、自治体によって異なります。都市部では、所得45万円以下で住民税非課税になるのが一般的です。地方の場合は、非課税になる所得額が低くなるため、上記の金額だと課税対象になる可能性があります。
年金収入155万円は、月額換算すると約12万9000円です。月あたりの年金の平均受給額は14万6429円ですから、平均をやや下回る金額を受給する人は、住民税が非課税になる可能性があるでしょう。
次章では、夫婦世帯の住民税非課税となる年金収入について見ていきます。
3. 【夫婦世帯】住民税非課税になる収入のボーダーライン
夫婦世帯の場合は、単身世帯よりも住民税が非課税になる収入額の基準が引き上げられます。具体的には、以下のとおりです。
- 住民税非課税の所得要件:(35万円×2)+31万円
- 公的年金等控除:110万円
- 合計:211万円
※配偶者の給与収入が100万円以下もしくは年金収入が155万円以下でなければならない
夫婦世帯の場合は、自身が年金収入211万円、配偶者が年金収入155万円以内であれば、住民税が非課税になります。月額換算すると、自身は約17万6000円、配偶者は約12万9000円までの年金受給額であれば、住民税はかかりません。
自身の年金収入が211万円を超えたり、配偶者の年金収入が155万円を超えたりすると、どちらかが要件を満たしていても住民税非課税にはなりません。そのため、上記の年金受給月額に近い金額を受け取っている人は、あらためて自身が受給する年金額を確かめてみましょう。
次章では、65歳以上で住民税非課税になるメリットを解説します。
4. 65歳以上「住民税非課税世帯」が受けられる恩恵とは?
65歳以上で住民税が非課税になると、さまざまな恩恵が受けられます。
そのひとつが、社会保険料の軽減や減免です。たとえば、65歳以上から算定基準が変わり負担額が増えやすい介護保険料については、住民税非課税世帯の場合、一般的な基準額よりも低い金額が設定されるケースが多いです。
収入額によっては、最低額である第1段階の保険料まで引き下げられる可能性があります。例として、札幌市の介護保険料の減免条件を見てみましょう。
- 世帯全員の前年の年間収入が次の金額以下
・単身世帯:120万円
・2人世帯:160万円
・3人世帯:210万円
・4人世帯:260万円 - 世帯全員の預貯金の合計額が350万円以下
- 別世帯の住民税課税者に扶養されていない
- 世帯全員が居住用や事業用の不動産を所有していない
要件は自治体によって変わるため、まずは住んでいる自治体の介護保険料の軽減・減免措置について確かめてみるとよいでしょう。
また、年金受給者の方が知っておきたい制度として、「老齢年金生活者支援給付金」の支給が挙げられます。老齢年金生活者支援給付金は、所得の少ない年金受給世帯に支給される給付金です。受給要件のひとつが「住民税非課税世帯であること」となっています。では、受給要件を見てみましょう。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者であること
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後生まれの人は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの人は80万6700円以下である。(非課税収入を除く)
受給額は、以下のとおりです。
保険料納付済期間に基づく額(月額)
- 5450円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
保険料免除期間に基づく額(月額)
- 1万1551円 × 保険料免除期間/ 被保険者月数480月
よって、最低でも5450円が年金に上乗せされる形です。受給するには収入要件が厳しい場合がありますが、受け取れれば日々の支出に役立てられるでしょう。
5. まとめ
65歳からの年金生活では、単身世帯で年金収入155万円、夫婦世帯なら自身が211万円、配偶者が155万円までであれば、住民税が非課税になります。非課税になれば、社会保険料の負担軽減や年金生活者支援給付金の支給など、さまざまなメリットを受けられます。
ただし、非課税となる基準額を1円でも上回ると、住民税が発生します。自身の受給額をあらためてチェックし、基準額に収まっているか確かめましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」
- 東京都主税局「個人住民税」
- 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
- 札幌市「介護保険料の減免について」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
石上 ユウキ