「カップル」――ニュージーランドで暮らしていると、これは社会における1つの単位だと感じます。たとえば、カップルのうちの片方がパーティーなどの集まりに招待されれば、相方が招待されたも同じこと。2人そろって参加するのが通例です。

カップルでの行動は外出時に限りません。日常生活においても、「二人三脚」は変わらないのです。家事でも、出産でも、子育てでも、子どもの教育でも、同じようにカップルが一緒に取り組むのがニュージーランド流といえるでしょう。

「キーウィ・ハズバンド」は我が家のスーパーマン?

ニュージーランドといえば、鳥のキーウィを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。キーウィには「飛べない」以外にも面白い特徴があります。オスが卵を温め、ヒナをかえすのです。

一方でニュージーランド人男性はどうかといいますと、これまた多くが料理や掃除などの家事全般を苦もなくやってのけます。こんな風に家庭的な男性たちを、キーウィのオスが持つ習性になぞらえ、「キーウィ・ハズバンド」と呼んでいます。

キーウィ・ハズバンドが生まれたのは、共働きが一般的で、家庭内でこの仕事は男性がやるべき、あの仕事は女性がやるべき、というくくりがとてもゆるいからかもしれません。反対に、女性がちょっとした大工仕事など男性の仕事と考えられがちことをこなす姿もよく見受けられます。

特に妊婦にとって、キーウィ・ハズバンドの存在は大きなものです。たとえば筆者の場合、仕事を終えて疲れて帰った時に、よく夕食を作ってもらいました。高校を卒業すると1人暮らしを始めるので、男性も料理のイロハがわかっているのです。あれこれ指図しなくても、食事がテーブルに並ぶのはことのほかありがたかったです。

定期健診も「両親学級」もカップルで

家庭内の役割分担があまり明確ではないとはいえ、子どもを産むのは女性にしかできません。だからといって、妊娠・出産・子育てを女性にまかせっきりというのでは、キーウィ・ハズバンドの名がすたるというもの。彼らは子どもに関すること全般にも積極的に携わります。

たとえば妊娠時の定期健診。男性が付き添うことも珍しくありません。おなかの子どもが少しずつ成長していくのに興味津々です。妊婦の調子が万全かどうかも気にします。

初産の時に通う、いわゆる「母親学級」も同じこと。母親だけでなく父親も一緒というのが一般的なので、むしろ「両親学級」といったほうが適切かもしれません。筆者も夫連れで参加した口です。

父母共に参加することを意識しているのか、開かれる時間は仕事や夕食を終えてからの夜でした。2人だけで過ごす時間は出産予定日までと限られていますから、大きなおなかを抱えているものの、ちょっとしたデート気分で参加しました。

こうして妊娠期間中から出産・育児に至るまでの過程を2人で共に学ぶことで、カップルとしての結束が生まれます。女性も、パートナーが一緒にいてくれれば、安心感があります。

妊娠・出産はうれしいことではありますが、カップルにとり、ある意味新たなチャレンジともいえます。一緒になってから今まで何事も二人三脚でこなしてきたのですから、妊娠・出産も足並みをそろえて臨みたいと思うのは自然の流れでしょう。両親学級はそんなカップルをサポートしてくれます。

産まなくても、男性は分娩室で大活躍