LIXILグループはMonotaROの瀬戸欣哉会長が社長に就任すると発表
2015年12月21日、住宅設備最大手のLIXILグループ(5938)は藤森義明社長が2016年6月に退任し、工場・工事用間接資材のネット通販のMonotaRO(3064)の瀬戸欣哉会長が社長に就任すると発表しました。
東証1部上場企業が、資本関係もない上場会社の会長を社長に指名するというのは珍しいことです。公開情報をもとに、この背景を探ってみたいと思います。
新興企業の起業家が老舗大企業の社長に就任という構図
まず、両社の概要を簡単にご紹介します。住宅設備の最大手メーカーであるLIXILグループの創業は1949年(旧トステム)、売上高は1兆6,734億円(2015年3月期)、従業員数は約6万人という老舗大企業です。一方、MonotaROの創業は2000年、売上高は449億円(2014年12月期)、従業員数は268人という新興企業です。
ただし、時価総額ではMonotaROは4,200億円と、LIXILグループの8,400億円のほぼ半分に迫っています。ちなみにMonotaROの時価総額は過去2年間で3倍強に拡大しており、このペースが続くのであれば、追い越すのは時間の問題かもしれません。
すなわち、今回の人事は勢いのある新興企業の起業家が老舗の大企業の社長に就任するという構図として捉えることができるでしょう。
瀬戸氏は商社出身の起業家
会見においてLIXILグループの藤森義明社長は、瀬戸氏を選んだ理由として、「デジタル化とグローバル化」が理由であるとコメントしました。このことを理解するために、瀬戸氏がMonotaROを起業するに至った経緯を以下にまとめてみます。
瀬戸氏は1983年に住友商事(8053)に入社し、鉄鋼部門に配属されキャリアをスタートしています。1990年代に米国に赴任し、その間米ダートマス大学のMBAコースに通いながら、創業当初のアマゾンに出会います。
そこで、インターネットを使ったeコマース(電子取引)を商社のビジネスにも応用できないか思いを巡らせる中で、工場で使われる工具や軍手などの消耗品(間接資材)を扱うことを決意します。
当時の間接資材市場は、多くの問屋が介在し流通が複雑、工具商や金物店などの「リアル」の販売ルートでは商材が売れ筋だけに限られる、購入する数量により値段が大きく違う等の非効率・不合理な点が多くあり、ネットを活用することで、これを改善できると考えたからです。
このアイデアを実現するため、間接資材販売の大手である米グレンジャー社と組んで、2000年にMonotaROの前身である住商グレンジャー社を、現社長の鈴木雅哉氏など数名のメンバーとともに大阪で事業を開始ました。
創業当初はカタログ作成、システム構築、物流システム、顧客開拓などの先行コストがかさみ赤字が続きましたが、創業5年目の2005年12月期に黒字化。2006年2月には社名をMonotaRO(モノタロウ)に変更し、同年12月に東証マザーズに上場しています(現在は東証1部)。そして、株価を見れば一目瞭然ですが、現在まで同社の快進撃は続いています。
こうした経緯から、上記の「デジタル化、グローバル化」の意味するところは、単に英語のできる元商社マンとしいうことでは全くなく、デジタル技術への知見と、インターネットを「リアル」の世界に活用し、海外企業を出資者として取り込み、事業をゼロから立ち上げてきた行動力であることが理解できます。
新社長のメッセージに注目したい
瀬戸氏は、2016年1月1日からLIXILグループのCOOに就任し、6月の株主総会を経て、同グループの取締役代表執行役社長兼CEOに就任予定です。
1年以上前から声が掛かっていたとのことですので、既に準備は万端で、就任早々に変革へのメッセージが発せられると期待できそうです。持ち前の行動力と分析力がどのように発揮されるのか、大いに注目したいところです。
一方、MonotaROについては、瀬戸氏とともに創業メンバーの鈴木社長が2012年から社長職を続けていることや、瀬戸氏も非常勤として会長職を継続する予定であるため、ネガティブな変化は起らないと見てよいでしょう。
LIMO編集部