この記事の読みどころ
2015年は東芝(6502)の不正会計問題やシャープ(6753)の経営危機などが印象に残る1年でした。
世界景気の減速影響は引き続き気掛かり材料ですが、個別企業を仔細に見ることも重要です。
2016年は事業会社による株式市場の「対話力」の活性化が課題になるでしょう。
2015年電機セクターの主な出来事
2015年は、中国や新興国市場の減速の影響はあったものの、サプライチェーンに大きな打撃を与えるような大災害は起らず、電機セクターを取り巻く事業環境自体は比較的穏やかな1年でした。以下に、電機セクターを中心とした2015年の主な出来事を列挙してみました(順不同)。
- 東芝不正会計問題
- シャープ経営危機
- 中国・新興国市場の減速
- 9月にiPhone6s発売
- 梶田隆章教授がニュートリノ振動の発見によりノーベル物理学賞を受賞
- 富士通(6702)が「つながるサービス」にフォーカスした新経営方針を発表
不祥事、経営不振関連からの投資アイデア
東芝、シャープともに株価は大きく下落しましたが、依然として不確定要因が多過ぎるために、個人投資家の長期投資に対象にはならないと考えます。
むしろ、投資アイデアは、両社のシェアが落ちることで恩恵を受ける銘柄を探すことから見つかりそうです。
たとえば、東芝であれば重電分野の日立製作所(6501)、三菱電機(6503)、富士電機(6504)などが挙げられます。
また、シャープについてはソーラー関連で京セラ(6971)、白物家電でパナソニック(6752)などが挙げられるでしょう。
世界景気と個別企業両方の動向に注意
2015年は、ガバナンス問題に加え、世界景気の減速に翻弄された1年でした。
既に10月~11月にかけて発表された2016年3月期上期決算で実態悪の一部は顕在化しており、三菱電機など通期予想を下方修正する企業も出てきています。
一方で、日新電機(6641)の中国向け液晶製造装置の受注は絶好調、横河電機(6841)の中東向けはダウンストリーム向け保守が好調など、個別企業を仔細に見ると全体とは異なる状況が見えてくることもあります。
世界景気の動向に注意を払うことは当然ですが、2016年は個別企業の動向の精査に基づいた銘柄選別がより重要となる年になるでしょう。
2016年のキーワードは「対話力」
2016年5月には日立製作所が新中期計画を発表する予定ですが、自らの「あるべき姿」をどのように伝えるか、また、これを通して株式市場との対話が活性化されるかが注目されます。
対話が生産的に活発に行われるかは、伝える側の事業会社だけではなく、筆者も含めた情報の受け手である証券アナリストの能力も問われることになります。2016年は、こうした課題を意識し、筆者も更に努力を積み重ねたいと考えています。
※本記事は個人投資家向け経済金融メディアLongine(ロンジン)の記事をダイジェスト版として投信1編集部が編集し直したものです。
LIMO編集部