12月に入り、年末の家計や来年の準備を考える方も多いのではないでしょうか。そんな中、12月15日は年金支給とあわせて「年金生活者支援給付金」が対象者に振り込まれる重要な日です。

この制度は、年金を受け取る方の生活を支えるために設けられた仕組みですが、「対象者は誰?」「いくらもらえるの?」といった疑問を持つ方も少なくありません。

給付金の金額や基準額、平均給付月額、さらに申請方法まで知っておくことで、もらい忘れを防ぎ、生活設計に余裕を持たせることができます。特に年末は出費が増える時期ですから、こうした制度をしっかり理解しておくことが安心につながります。

この記事では、年金生活者支援給付金の基本的な仕組みから、対象となる方の条件、具体的な金額、そして申請方法までをわかりやすく解説します。

1. 「年金生活者支援給付金」とはどんな制度?概要を解説

年金生活者支援給付金は、公的年金などを含めた所得が一定の基準を下回る場合に、年金に加えて支給されるお金です。

この給付金は、受け取っている公的年金の種類に応じて、以下の3つに分かれています。

  • 老齢基礎年金を受給している方向け:「老齢年金生活者支援給付金」(「補足的老齢年金生活者支援給付金」を含む)
  • 障害基礎年金を受給している方向け:「障害年金生活者支援給付金」
  • 遺族基礎年金を受給している方向け:「遺族年金生活者支援給付金」

この制度は2019年から始まったもので、消費税率の引き上げによって確保された財源が活用されています。

2. 年金生活者支援給付金の対象となるのはどんな人?

3種類ある年金生活者支援給付金について、それぞれの支給要件を詳しく見ていきましょう。

2.1 「老齢年金生活者支援給付金」の支給要件

以下のすべての条件を満たす方が対象です。

  • 65歳以上で、老齢基礎年金を受け取っている
  • 同じ世帯の全員が、市町村民税非課税である
  • 前年の公的年金などの収入金額と、その他の所得の合計額が一定の基準額以下である

※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は、ここでの収入金額には含まれません。
※2 前年の所得額によっては、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される場合があります。

2.2 「障害年金生活者支援給付金」の支給要件

以下のすべての条件を満たす方が対象です。

  • 障害基礎年金を受け取っている
  • 前年の所得が479万4000円以下である(扶養親族の人数に応じて増額されます)

※ 障害年金などの非課税収入は、所得に含みません。

2.3 「遺族年金生活者支援給付金」の支給要件

以下のすべての条件を満たす方が対象です。

  • 遺族基礎年金を受け取っている
  • 前年の所得が479万4000円以下である(扶養親族の人数に応じて増額されます)

※ 遺族年金などの非課税収入は、所得に含みません。

障害と遺族の年金生活者支援給付金は、受給者ご本人の所得だけで判定されるのが特徴です。

一方、老齢年金生活者支援給付金の場合は、ご本人の所得や年齢に加えて、同じ世帯に住む方全員の市町村民税が非課税であるかどうかも条件に含まれます。

3. 年金生活者支援給付金はいくらもらえる?基準額と平均月額

年金生活者支援給付金の支給額は、国民年金や厚生年金と同様に、毎年度見直される仕組みになっています。

ここでは2025年度の金額について確認します。

3.1 2025年度における年金生活者支援給付金の金額

  • 老齢年金生活者支援給付金:(基準額)月額5450円
  • 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級は月額6813円、2級は月額5450円
  • 遺族年金生活者支援給付金:月額5450円

2025年度の金額(4月分から)は、2024年の物価変動率を基に+2.7%の増額となりました。

このうち老齢年金生活者支援給付金については、上記の基準額を基に、保険料の納付状況に応じて実際の支給額が個別に計算されます。

ただし、年金生活者支援給付金は申請をしなければ受け取ることができない点に注意が必要です。

※年金本体の改定率(+1.9%)とは異なります。

3.2 実際の平均支給月額はどのくらい?

年金生活者支援給付金平均給付金額(月額)

年金生活者支援給付金平均給付金額(月額)(

出典:厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」

厚生労働省が公表した「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、実際の平均支給月額は以下の通りです。

  • 老齢年金生活者支援給付金:月額4014円
  • 障害年金生活者支援給付金:月額5555円
  • 遺族年金生活者支援給付金:月額5057円

これらはあくまで平均額であり、個人の状況によって金額は異なります。

4. 【申請方法】年金生活者支援給付金の手続きについて

この給付金は、自動的に年金に上乗せされるわけではありません。受け取るためには、ご自身で請求手続きを行う必要があります。

支給の対象となる方には、日本年金機構から請求書を兼ねた通知が郵送されますので、内容を確認し必要事項を記入して返送することが大切です。

年金の受給状況によって届く書類が異なるため、「すでに年金を受け取っている方」と「これから老齢年金の受給を開始する方」の2つのケースに分けて解説します。

4.1 ケース1:すでに年金を受け取っている方

すでに年金を受給している方で、新たに給付金の対象となった場合、毎年9月1日以降に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されます。

この請求書に必要事項を記入し、切手を貼ってポストに投函しましょう。

2025年からは、マイナポータルを利用した電子申請もできるようになりました。

4.2 ケース2:これから老齢年金の受給を開始する方

これから年金の受給を始める方で、給付金の対象となる場合は、老齢基礎年金の請求書に給付金の請求書が同封されています。

同封の給付金請求書に必要事項を記入し、老齢基礎年金の請求書とあわせて提出してください。

なお、年金の繰上げ受給をしている方に届く書類は、様式が異なります。

「自分が対象になるか知りたい」「対象のはずなのに請求書が届かない」など、不明な点があれば、お近くの年金事務所や相談窓口に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

5. まとめ:来年に向けて給付金制度をしっかり押さえておこう

今回は「年金生活者支援給付金」についてご紹介しました。この制度は、年金を受け取っている方の生活を支えるために設けられた仕組みで、対象者や金額、申請方法を正しく理解しておくことが大切です。さらに、所得に応じて追加で支給される「補足的老齢年金生活者支援給付金」もありますので、ご自身が該当するかどうかを確認してみましょう。

こうした給付金は、申請しなければ受け取れないため、知らないままでは損をしてしまいます。年末は、家計や生活設計を見直す良いタイミング。今回の情報を参考に、もらい忘れを防ぎ、来年に向けて安心できる準備を進めてください。

※この記事は再編集記事です。

参考資料

マネー編集部社会保障班