分散投資の成果

以前、『「卵をひとつのカゴに盛るな」だけで資産形成をしてはいけない理由』では「卵は一つの籠にもるな」の格言の意味をまとめました。単なる資産の分散という意味だけでなく、長期投資も内包しているこの格言に合わせて、よく使われるのが、記事下部のグラフです。

国内外の株式と債券の4つの資産の指数に分散投資し、20年の期間で運用した場合のパフォーマンスをみたものです。注目は、4資産分散投資の成果として、年率4%以上の収益率がもたらされていることです。

大きな価格変動が続いた過去20年ですが、それでも分散投資をして、長期投資をすれば意外にしっかりした収益率が得られることを示しています。

これまで何度か引用してきた「逆算の資産準備」では、長期間にわたって運用は年率3%で、それに合わせて引き出しは4%程度にするといったことを前提にしてきました。指数ベースでみれば、年率4%の運用ですから、前提にしていた3%運用よりも高いパフォーマンスを得られることになります。

コストをしっかり見極める

しかし、ここには大きな誤解が残っています。これは指数による運用成果であって、ここには我々が実際に運用する際に必要となる、①販売手数料、②信託報酬、③そして税金が含まれていないということです(投資信託の場合)。

指数ベースで4%の運用ができても、手数料や信託報酬、税金を控除すると、実際には3%を下回る可能性さえあるのです。そこで、これら3つのコストをどう考えるべきかを整理しておきましょう。

① 販売手数料:資産運用という金融サービスに対する対価として妥当かどうかをまずは考えてみてください。しかも購入時のみに支払うもので、長期に保有するならば1年ずつで考えると、大した負担にはならない場合もあります。

② 信託報酬:毎日、コストとして控除されるのでできるだけ安いのが良いことはわかっています。ただ、安いコストで悪いパフォーマンスでは意味がありません。一般に投資信託の基準価額はこの信託報酬を差し引いて計算されるものなので、基準価額ベースでパフォーマンスを計測すれば、この点は考慮しなくてもよくなります。ちなみに、モーニングスターのファンド検索サイトを使って、10年以上の運用成績を持つ5,024銘柄の過去10年のパフォーマンスを調べると(2019年2月2日現在)、年率3%以上の運用収益率(年率)をもたらしているファンドは全部で1,100銘柄、85.8%に上ります。

③ 税金:少額投資非課税制度(NISA)では投資収益が非課税になりますし、確定拠出年金(DC)では投資収益が非課税だけでなく、掛け金が所得控除されてその分所得税も非課税になります。こうした制度は投資をすることで負担となり得る税金を軽減することになります。

こうした3つの負担をいかにうまく取り込んで年率3%の運用成績を上げ続けるかが、大切な考え方の基礎といえます。

注:RIMESよりフィデリティ投信作成。 日本株式:日経平均株価 海外株式:MSCIコクサイ・インデックス(除く日本) 日本債券:シティ日本国債インデックス 海外債券:FTSE世界国債インデックス(除く日本、円ベース)インデックス 4資産均等配分:各資産クラスに1/4ずつ均等配分した場合を使用。いずれも円ベース。期間:1998年12月末~2018年12月末。それぞれ1998年12月末を100として指数化。手数料、信託報酬、税金は考慮していません。※上記は過去の指数の実績で、将来の収益を予想、または保証するものではありません。

<<これまでの記事はこちらから>>

合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史