4. 諸外国の給付付き税額控除の実施事例

給付付き税額控除の制度は、すでに諸外国で実施事例があります。

日本のように「一律給付」の事例は少なく、就労意欲の促進のために「就労を条件とする」ケースや、高所得者は控除額もしくは所得規模に対する控除率が減少する仕組みになっている事例が散見されます。

4.1 アメリカ|勤労所得税額控除(EITC)

アメリカでは「勤労所得税額控除」という制度を導入しています。低所得者の勤労意欲の維持と所得再配分の両立を目指した税額控除制度です。就労・所得を得ている世帯が対象となります。

この制度は所得が一定額になるまでは、所得と控除額が比例する関係にあります。これは無職・低所得層には就労で所得を増やすインセンティブを与える目的です。一方で、一定の所得に達すると控除額が段階的に限定し、主に低所得者層への恩恵が手厚くなり、所得再配分の効果を持つ仕組みとなっています。

日本が現在検討している制度と比べると、低所得者や無所得の世帯は恩恵が小さくなることとなりますが、この辺りは「公平な支援」と「就労促進」のどちらを優先するかの考え方の違いといえるでしょう。

4.2 イギリス|勤労税額控除(WTC)及び児童税額控除(CTC)

イギリスでは勤労税額控除(WTC)と児童税額控除(CTC)を組み合わせて控除および現金給付を実施したことがあります。アメリカの制度に加えて児童(16歳未満もしくは学生の場合は19歳未満)がいる世帯の支援を手厚くしている形です。

まずWTCは就労を要件として受け取れる制度です。こちらも支援対象を就労者に限定することで、就労意欲の促進を図っています。また、就労時間が週30時間以上になった場合は給付額が加算される仕組みです。所得額ではなく就労時間で給付額が変わるのが、大きな違いといえるでしょう。

また、年間所得が一定額を超過すると超過額の39%が控除額から削減されます。高所得への控除額を抑えることで、所得再分配の効果も発揮します。

一方で、CTCは就労を要件としていません。就労意欲の促進よりも児童のいる世帯の支援を優先している形です。CTCの税額控除の額は、世帯構成、就業時間、年齢、政府登録・認定の保育サービスの利用など世帯の状況によって細かく定められています。