寒さが本格化し、冬場の体調管理に意識が向く季節となりました。
厚生労働省の統計によれば、1人当たりの医療費は加齢とともに増加し、特に80代以降は入院や療養費の占める割合が急増します。
平均寿命が延びるなか、こうした医療・介護コストを長期的にどう賄うかは、年末年始に将来を考える上でも重要な課題と言えるでしょう。
フィデリティ投信が2025年12月に公表したレポート(※)では、日本の50歳以上の72%が、100歳まで生きる前提に立つと「10年分以上の貯蓄が不足している」という実態も明らかになりました。
この記事では、公的統計からシニアの医療費と家計収支の現実を紐解き、老後の備えについて考えます。
※参照:フィデリティ投信株式会社「フィデリティ・インターナショナル、人生100年時代の経済的備えに関するグローバルレポートを発表」(2025年12月8日公表)
1. 【60歳~100歳以上】年齢階層別の年間医療費、一人あたりどのくらいなのか
シニアになるほど医療費は増える傾向があります。
厚生労働省「年齢階級別1人当たり医療費(令和4年度、医療保険制度分)」をもとに、60歳以上の年代別に、1人当たりの医療費総額と、診療費のうち「入院+食事・生活療養」が占める割合がどう変化しているかを見ていきましょう。
1.1 【60歳~100歳以上】1人あたり医療費計の推移を見る
- 60~64歳:38万円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:37%
- 65~69歳:48万1000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:40%
- 70~74歳:61万6000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:42%
- 75~79歳:77万3000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:45%
- 80~84歳:92万2000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:50%
- 85~89歳:107万1000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:58%
- 90~94歳:117万9000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:65%
- 95~99歳:125万8000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:69%
- 100歳以上:123万2000円
- 「入院+食事・生活療養」の割合:70%
医療費の総額は、60歳代前半の約38万円から90歳代後半の125万円超へと増加しており、その差はおよそ3.3倍に達します。
この医療費の上昇を特に大きく押し上げているのが、「入院+食事・生活療養」にかかる費用です。
70歳代までは通院中心の医療費構成ですが、80歳を超えると状況が大きく変わり、医療費の50%以上が「入院+食事・生活療養」による支出となり、90歳代ではその割合が70%近くに達します。
高額療養費制度を利用した場合でも、毎月の自己負担限度額に加え、食事代や差額ベッド代(いずれも全額自己負担)が発生する点には注意が必要です。
介護費についても、生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によれば、介護費用は以下のようになっています。※実際の負担額は、要介護度や介護を受ける場所によって大きく変わります。
- 介護の開始時に必要となる一時費用(※1)は平均47万円
- 毎月の介護費用(※2)は平均9万円
また、厚生労働省「令和6年簡易生命表」によると、平均寿命は男性81.09歳、女性87.13歳とされています。
このような長寿時代を前提にすると、長期の入院や介護に備えた費用、そしてその期間の生活をどう支えるかといった視点が欠かせません。
続いて、「65歳以上・夫婦のみ無職世帯」の平均的な家計収支がどのようになっているのかを確認していきましょう。
※1:住宅改造や介護用ベッドの購入費など
※2:いずれも公的介護保険サービスの自己負担費用を含む
