4. 厚生年金の「保険料上限引き上げ」影響を受ける人は?
2025年6月13日、国会で年金制度の改正法が可決・成立しました。
今回の改正では、将来の年金財政の安定化と、現役世代の公平性を高めることを目的に、厚生年金や健康保険の保険料を算定する際に用いる「標準報酬月額の上限」が引き上げられます。
4.1 どの部分が見直されるのか
厚生年金や健康保険の保険料、そして将来の年金額は、実際の給与や賞与ではなく、一定の幅で区分された「標準報酬月額」をもとに計算されます。
例えば、現在の上限である月65万円を超える給与を受け取っていても、保険料や年金額の計算には65万円までしか反映されません。
厚生労働省のデータによると、会社員男性の約1割がこの上限に達しており、いわゆる高所得層が該当します。
これらの人々は、収入が増えても保険料負担がそれ以上増えない一方で、将来の年金額も上限以上には増えないという仕組みになっていました。
この不均衡を是正するため、2027年以降、標準報酬月額の上限が段階的に引き上げられることになりました。
【標準報酬月額の上限引き上げスケジュール】
- 2027年9月~:月68万円
- 2028年9月~:月71万円
- 2029年9月~:月75万円
上限引き上げにより、これまでよりも保険料負担が増える一方で、将来的には受け取る年金額も増加します。
つまり、高所得層にとっては「負担増」と「給付増」が同時に発生する見直しといえるでしょう。
5. まとめ
厚生労働省の資料によると、厚生年金の受給権者のうち「月額15万円以上」を受け取っている人は約47.6%と、全体のほぼ半数を占めます。
ただし、この金額はあくまで額面であり、実際の手取りは税金や保険料の控除によって異なります。
2025年度は年金額が引き上げられた一方で、標準報酬月額の上限改定など制度面の見直しも進行中です。
次の支給日を前に、自身の年金受取額や将来の見込みを改めて確認しておくとよいでしょう。
参考資料
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「いっしょに検証!公的年金 公的年金の仕組み」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
加藤 聖人
