7. 2026年4月~、在職老齢年金の「年金カット基準」が大幅緩和(51万円→62万円)

2025年6月13日、国会で年金制度改革関連法が成立しました。多様化する働き方やライフスタイルにフィットする年金制度を目指すものです。

この改正にはパートなどで働く人の社会保険加入対象の拡大(いわゆる「106万円の壁」の撤廃が関連)、遺族年金の見直し(遺族厚生年金の男女差解消、子どもの遺族基礎年金受給の要件緩和)など、注目すべきポイントがいくつかあります。

今回は、その中でも働くシニアへの影響が大きい「在職老齢年金制度の見直し」について見ていきましょう。

7.1 「在職老齢年金制度」の見直し

在職老齢年金とは、60歳以降で老齢厚生年金を受給しながら働いている場合、年金額(※)と報酬(給与・賞与)の合計が基準額を超えると、年金の一部または全額が支給停止となる制度のことです。
(※)老齢基礎年金は対象外となり、全額支給されます。

支給停止調整額(年金が全額支給される基準額)

支給停止調整額は年度ごとに少しずつ見直しがおこなわれてきました。

  • 2022年度:47万円
  • 2023年度:48万円
  • 2024年度:50万円
  • 2025年度:51万円
  • 2026年度:62万円

今回の改正(2026年4月から適用)では、51万円(2025年度金額)から62万円へと大幅に引き上げられることが決まりました。

厚生労働省の試算では、新たに約20万人が年金を全額受給できるようになるとされています。

この引き上げにより、年金の減額を気にして「働き控え」をするシニア世代が、より自由に働き方を選べるようになると考えられるでしょう。

8. まとめにかえて

今回は、年齢別や男女別の平均年金受給額について解説していきました。特に厚生年金の受給額には個人差があります。

加入期間や年収などによって受給額が異なるため、ご自身の見込み額については、年金定期便やねんきんネットで確認してみましょう。

前年度と比較して、今年は物価上昇の影響により1.9%増額となりました。しかし、物価上昇率には追い付いていないため、実質的には目減りしているといえます。

物価上昇や少子高齢化も今後進んでいくと、より一層年金だけでは老後の生活が難しくなる時代となるでしょう。安心した老後を迎えるためには、現役世代のうちから老後資金の準備に取り掛かることが重要です。

ぜひ自分に合った老後対策を、早めのうちから始めていきましょう。

参考資料

菅原 美優