厚生労働省は、11月30日(いいみらい)を「年金の日」としています。この機会に「ねんきんネット」などを活用し、ご自身の高齢期の生活設計に思いを巡らせるのも良いでしょう。特に、数年後に年金生活を控える世代の方々にとって、老後の家計を支える公的年金のリアルな実態は気になるところです。

実際、厚生労働省が公表した「国民生活基礎調査の概況」を見ると、高齢者世帯の約半数が公的年金・恩給のみに頼って生活している現実がうかがえます。さらに、2025年6月には年金制度改正法が成立するなど、公的年金を取り巻く状況は刻々と変化しています。

本記事では、「年金生活のリアル」を深掘りするとともに、知っておくべき「年金生活者支援給付金」の支給要件や増額改定された給付額、さらには国民年金・厚生年金の平均受給額の個人差までを解説します。

1. 【年金生活の現実】高齢者世帯の約半数が「年金のみ」で生活しているというデータ

厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」から、高齢者世帯(※)の収入の実態を見ていきましょう。

まず、高齢者世帯全体の平均的な所得構成を見ると、収入の63.5%を「公的年金・恩給」が占めており、次いで仕事による収入である「稼働所得」が25.3%、「財産所得」が4.6%となっています。

しかし、これはあくまで全体の平均値です。

「公的年金・恩給を受給している世帯」に絞ると、収入のすべてが「公的年金・恩給」である世帯が43.4%にものぼることがわかっています。

※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯

公的年金・恩給を受給している高齢者世帯における公的年金・恩給の総所得に占める割合別世帯数の構成割合

公的年金・恩給を受給している高齢者世帯における公的年金・恩給の総所得に占める割合別世帯数の構成割合

出所:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況

  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%

このようにシニア全体で見れば稼働所得なども一定の割合を占めていますが、年金受給世帯に絞ると、その半数近くが公的年金収入のみに頼って生活しているという実態が浮き彫りとなっています。