1月に巻き起こった“子連れ出勤”を巡る議論。子連れ出勤反対派の中には、「ベビーカーに子どもを乗せて、通勤ラッシュの満員電車に乗るのはあまりにも危険」といった意見がありました。

そんな中、2月25日に市民団体「子どもの安全な移動を考えるパートナーズ」が小池百合子東京都知事と面会し、電車や地下鉄における「子育て応援車両設置」を求める要望書を提出したというニュースが飛び込んできました。これは通勤時に限らず、子どもたちを安全に移動させる必要性を訴えたものです。

要望書を受け取った小池都知事は、「企業内保育も、その職場に行くことがまず大変。実施し、利用者の反応や影響を見ていきたい」と、電車内に子育て支援スペースを作ることに意欲的な姿勢を見せていた様子。

この「子育て応援車両設置」に関して、ネット上では多くの反対意見が出ています。仕事の際に、致し方なく息子を抱っこ紐で抱っこして満員電車に乗ることがある筆者でも、この子育て応援車両の設置案には多くの疑問点を感じました。

子育て支援が他の誰かを苦しめてしまうことに?

子育て応援車両を新たに作るということは、通常の車両がつぶされるということ。それはつまり、今現在、満員電車に乗って毎日頑張って仕事に行っている人たちが、さらにぎゅうぎゅう詰めの状態に追いやられてしまうことにならないでしょうか。

こうした、他の誰かが苦しまなければいけないやり方は、子育て支援においては絶対に避けなければいけないこと。我慢をさせられる子育ての当事者ではない人たちから、「ずるい」「ぜいたくだ」と大きな反発が起こるであろうからです。

「自分が欲しくて子どもを作ったのだからわがままを言うべきではない」という、子育てにおける自己責任論は、このように誰かの負担になるような方法や状況が生みだしている側面が往々にしてあります。結果的に、子育て応援とはかけ離れた環境になってしまったら本末転倒です。

公共の場としての役割が失われる可能性

子育て応援車両を設置すれば、確かにたくさんの大人で混雑した車内を避けられ、子どもたちが安全に電車に乗ることができるかもしれません。しかし、本来は大人も子どもも乗り合わせた車内で、もし子どもが危険な状況に陥っていたら、助け合うのが公共の場であるはずです。