この記事の読みどころ
ブラジルは南米及び南半球で最大のGDPを持つ経済大国ですが、日本の民生エレクトロニクスメーカーの存在感は低いと言えます。
実際、サンパウロの家電量販店の品揃えは欧米メーカー製品が大半を占めていました。
ブラジル市場の特色である割賦販売のリスクを上手くコントロールする必要がありそうです。
オリンピック開催国にもかかわらず、日本では話題に上らないブラジルの家電市場
IMFによると2014年のブラジルのGDPは2.3兆ドルと日本の約半分、イタリアとほぼ同じ規模で、南米では最大です。
また、1人当たりGDPは1.15万ドルと、BRICsのなかではロシア(1.27万ドル)に次いで2番目の水準にあり、コンシューマー製品の消費地として無視できない規模にあることが数字からは伺えます。
ところが、最近の日本の民生エレクトロニクス企業から、ブラジル関連の話題が語られることはほとんどありません。理由はビジネスの規模が小さいこと、つまり、ブラジルでの市場シェアが低いためです。
例えば、家電最大手のパナソニック(6752)のIR資料(2014年12月 アプライアンス社事業戦略)によると、同社の家電製品の売上高のうち中南米は6%に留まっています。
ちなみに、パナソニックは2012年から冷蔵庫を、2014年からは洗濯機の現地生産を開始しており、ブラジル及び中南米市場の開拓に注力しています。ただし、同社全体から見ると小規模であるため、話題に上りにくいというのが実情のようです。
サンパウロ市内の家電量販店を視察
このような“先入観”を持って、実際に人口1,100万人超の首都サンパウロ市内の家電量販店を訪れてみましたが、店内の品揃えは想像通りでした。
液晶テレビのほとんどは韓国製品で、日本製品を見つけることはできませんでした。
また、洗濯機、冷蔵庫も、少しだけパナソニック製品がありましたが、ほとんどが米国系のWhirlpool、欧州系のElectrolux、メキシコ系のMabeといった日本人にはなじみのないブランドばかりでした。
値段はあまり日本とは変わらない印象
価格は、サムソンの40インチ液晶テレビが2,199レアル(約7万円、1レアル=32円換算)、Whirlpoolの450リットルの冷蔵庫が2,999レアル(約9万6000円)など、日本の量販店で見る価格と大差はないという印象でした(いずれも一括払いの価格)。
ちなみに、スターバックスのトールサイズのドリップコーヒーは4.5レアル(約144円)で日本の約半分程度ですので、現地でスタバに毎日通える程度の所得層の人にとっては、日本と大差ないという家電製品の価格は、むしろ割高ということになると思います。
割賦販売が特色であり、リスクでもある
ブラジルの量販店では、一括払いの価格に加え、割賦販売での価格が大きく表示されています。また、割賦回数×割賦価格は、一括払いと同じものもあれば、大きく異なる場合もあることに気が付きます。
過去にハイパーインフレを経験した国民性から、一括払いを重視する傾向にある一方で、貧富の格差が非常に大きい国であるため、低所得者対策として割賦販売が一般的になっているようです。
ブラジルの政策金利(Selic)は、2012年は7.25%でしたが、直近では14.25%に上昇していますので、割賦価格の上昇は避けられず、これが今後の消費を抑えることが懸念されます。
今回は特に割賦販売が大幅に不良債権化しているという話は聞かれませんでしたが、割賦販売が主流である以上、そのリスクについては、常に意識する必要があるのではないかと感じられました。
シェアが低いことは前向きに捉えればポテンシャルがあることになります。割賦販売などのリスクをコントロールしながら、今後、日本企業がどのようにシェアを伸ばしていくのかを注視していきたいと思います。
和泉 美治