4. 12月15日に支給される年金が増えるのはどんな人?【在職定時改定】
前述のとおり、公的年金は毎年度見直しが行われており、2025年度の年金額は前年度から1.9%引き上げられました。
2025年度(2025年4月分)の初回支給は6月ですので、6月から年金額が増額しています。
なお、老齢厚生年金の受給権者が厚生年金保険の被保険者となり働いている場合、年金額は毎年10月分から改定されます。これを在職定時改定といいます。
なお、在職定時改定の対象者となるのは65歳以上70歳未満の老齢厚生年金の受給者です。
- 基準日:毎年9月1日
- 対象期間:前年9月から東燃8月までの被保険者期間
2022年3月までは、65歳以降の被保険者期間は資格喪失時=退職時、または70歳到達時にのみ年金額が改定されていました。
しかし、2022年4月以降、在職定時改定制度により、退職を待たずに年金額が毎年増えるため、「働き損」という意識を解消し、高齢者が長く働く意欲の向上につながっています。
ただし、年金額が増額された結果、「在職老齢年金制度」の基準を超過し、年金の一部が支給停止(カット)される可能性もある点には留意しましょう。
5. 在職老齢年金制度の支給停止額は引き上げを予定
近年、高齢化の進展に伴い、シニア世代の雇用環境は着実に整備されています。
公的年金だけでは老後の生活費を賄うのが容易ではないため、年金受給が始まる65歳以降も働き続けるシニアは、今後もさらに増えていく見込みです。
しかし、この働き続けるシニアの労働意欲を妨げる要因の一つが、在職老齢年金制度です。この制度は、収入が一定額を超えると年金支給が一部または全額停止となる仕組みです。
現在、年金がカットされ始める基準額は51万円ですが、政府は高齢者の就労を後押しするため、この基準値を62万円に段階的に引き上げる方針を示しています。この改正により、より多くのシニアが年金を減らされることなく、長く安心して働き続けられる環境が整っていくでしょう。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「老齢年金請求書の事前送付」
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
- 日本年金機構「令和4年4月から在職定時改定制度が導入されました」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
和田 直子