2019年2月26日に日本証券アナリスト協会で開催された、株式会社和心2018年12月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料
スピーカー:株式会社和心 代表取締役社長 森智宏 氏
経営理念
森智宏氏:みなさま、本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。代表取締役の森智宏でございます。当社の2018年12月期の決算説明会を行います。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、会社概要と、決算概要の前期比と予算比、また2019年12月期の見通しと成長戦略について、口頭で説明いたします。参考資料として、当社の特徴と強みを添付させていただきましたので、ご覧になってください。
まず、会社概要となります。重ね重ねで申し訳ございませんが、当社の経営理念から申し上げます。「日本のカルチャーを世界へ」ということで、創業以来同じ理念でやってまいりました。創業から22年、当初からお約束してきたこの言葉を経営理念として、すべての戦略を作らせていただいています。
会社概要
会社概要となります。株式会社和心の事業としましては、モノ事業とコト事業の2つの事業があります。モノ事業はいわゆるお土産の販売業で、和雑貨の企画・デザイン、製造、販売業(を行います)。また、コト事業は、着物の着付・レンタルを、それぞれEコマースと実店舗で展開しています。
店舗数については、現在89店舗。従業員数については、昨年末で546名となっています。
事業概要
事業概要です。モノ事業とコト事業と、2つの事業があるのですが、モノ事業に関しましては、B2Cの小売事業と、B2BのOEM事業の2つがあります。B2Cの小売事業について、現在の店舗数は71店舗で、月間販売数は、昨年のピーク時ですが記載のとおりになっています。(いずれの商品も)だいたい2万点となっており、当社の業態の開発力もどんどん増えて、今は業態数を増やそうと努力しています。
また、B2Bについては創業当時の資金力が乏しいときに、店舗もないころから行っている事業です。いわゆる日本のサブカルチャーといわれているゲーム業界・アニメ業界さまのものづくりとして、グッズ、ノベルティグッズの製造を請け負わせていただいています。
事業の2つ目が、コト事業です。店舗数は18店舗となりました。利用者数は15万4,000人。インバウンド比率は引き続き高いところを維持しており、現在外国のお客さまのご利用率は30パーセント弱となっています。
モノ事業 かんざし専門店
モノ事業のそれぞれの業態について説明します。かんざしの専門店「かんざし屋wargo」です。弊社は和装のかんざしよりも、洋装のかんざしの売上比率が(高く、割合は)95パーセントです。この(スライドの)ようなかたちで、お店にたくさん並べるのが特徴です。
また、かんざしのつけ方を知らないお客さまが多いため、トルソーをお店に設置して、お客さまにつけ方を教えながら販売するスタイルをとっています。現在は、文化的な観光都市の京都や金沢、鎌倉、浅草などを中心に、19店舗を展開しています。
モノ事業 和傘・和柄傘専門店
現在もっとも店舗数が多くなっているのが、この「北斎グラフィック」です。 和傘と和柄の傘の専門店です。特徴としましては、雨の日でも楽しんでもらいたいため、できるだけ派手で明るい傘が多いのが特徴です。
また、着物は帯の部分があるので、(雨が降った際に)濡れないように、かなり大き目の傘となっています。ビニール傘や3つ折りの折り畳み傘でも、当社の傘は60センチ以上あり、大きくて楽しい、明るい柄の傘があるのが特徴です。
かんざしでは、お客さまを滞留させるコツといいますか、かんざしのつけ方を伝授しながら販売しているのですが、当社が考えるディスプレイ、お店のあしらいで一番いいものは、お客さまだと思います。
お客さまが多い店は、やはりお客さまが来てくれますので、いかにしてお客さまが滞留してくれるお店を作るかを1つのテーマとして置いています。この「北斎グラフィック」も、売上の80パーセントは、(全商品の)15パーセントぐらいの商品構成で成り立ってしまうのですが、選ぶ楽しさといいますか、より多くの柄数があることによって、お客さまがより多くの時間を当社のお店で過ごしてくれるところに着眼して、たくさんの柄を用意しています。
モノ事業 箸・器専門店
次に、箸の専門店「箸や万作」です。また、半年ぐらい前に始めたのですが、器の専門店「万作GALLERY」というものもあります。「お客さまを滞留させる施策は何なのか」というご質問があるかもしれませんが、この特徴は、実は名入れです。観光地では、思い出に名入れをする機会がけっこうありまして、多いときで、月に3,000件くらいのネーム入れということで、お箸に名前を入れています。名入れをしている間、お客さまが(お店に)滞留するため、それもなかなかいいディスプレイといいますか、お客さまを集める呼び水になっています。
モノ事業 浴衣専門店
こちらはゆかたの専門店です。百貨店さまや商業施設さま、また駅のディベロッパーさまから、場所を一部分お借りして、夏時期の6月・7月・8月に販売しています。
コト事業 着物の着付 ・レンタル店
次は、コト事業の着物の着付・レンタル屋です。特徴としましては、ヘアセットスタジオと写真スタジオを併設しているところです。一番安いプランは2,900円なのですが、(利用者の)9割近くが女性のお客さまです。また、男性を混ぜたとしても、(レンタル利用者の)80パーセントのお客さまにヘアセットもご利用いただきます。また写真スタジオも、6パーセントくらいのお客さまが利用されますし、荷物預かりも同じく5~6パーセント(のお客さまが利用されます)。
着物レンタルは、お客さまにはご来店いただくのですが、こういう客単価を上げる施策が多いため、お客さまの平均単価は1万円近くになります。このあたりも特徴となっています。
基本戦略
次に、基本戦略について説明したいと思います。当社の基本戦略としましては、ワンパターンです。当社は、本当に衰退産業が大好きといいますか、衰退産業の場所でしか戦っていません。昔ながらで旧態依然とした和雑貨、また、昔ながらの着物といった和装業界において、IT技術やデザインなどを投入して戦っています。モノ事業におきましては、お土産ですが、オムニチャネル化してECで販売したり、SEOを行ったりしています。
また、箸ではすべての商品にRFIDタグを置いてあるため、在庫管理が(容易です)。棚卸の際も、ダンボールに入ったまま(棚卸が)可能です。加えて、コト事業においてもそうなのですが、着物レンタルの着物の中側に、ICチップをシリコン樹脂でコーディングしたものが縫い付けられており、お客さまのご利用のログデータなどが全部わかるようになっています。
当社が主戦場としている、旧態依然とした和雑貨や和装の業界で、そういった施策による強みを生かしていけるのではないかなと思っています。
沿革(事業の変遷)
沿革についてです。当社はもともと、和のアクセサリー「かすう工房」や、かんざし屋など、小さな装飾品業界の中で始まったのですが、どんどん生活基盤の業界に近付いています。(例えば)浴衣であったり、傘、お箸、器など、できるだけ日用品に近いところが市場となっています。
最近は「京のせんす処 白扇堂」というブランドを立ち上げました。まずは、ポップアップショップとして傘屋の店頭だけで展開して、様子を見ているところです。そこでうまくいったら、今年のうちに店舗展開しようと思っています。
決算概要(前期比)
次に、決算概要です。2018年12月期におきましては下方修正をさせていただきました。株主のみなさまにはご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした。
(スライドの)一番上に記載がありますように、売上高については夏時期の天候不良と関西、とくに京都において、地震の影響が強くありました。また出店数は最終的には保てたのですが、全体的に後ろ倒しにしてしまった影響がありまして、このような結果になっています。
営業利益は、人件費・賃料・広告宣伝費などの販管費が増加しまして、このような結果となっています。
貸借対照表
貸借対照表については、前期に上場しまして、おかげさまで現預金・純資産が増加しています。
決算概要(予算比)
次が、予算比になります。出店に対して人材育成が行き届かず、下方修正した予算においても、売上高が未達となってしまい、申し訳ございませんでした。また、営業利益は販管費が抑制され、微増となっています。
出店エリアの拡大①銀座
最近のトピックを報告します。出店エリアについてですが、当社では89店舗中25店舗以上は京都にあり、また浅草には7店舗と、大きな文化都市に集中的に出店していまして、今もそれを拡大しています。1つは、ずっと(よい場所を)探していた銀座で、ちょうど目抜き通りである中央通りのすごくいい場所に新規のビルが建ちましたので、そこに「きものレンタルwargo銀座本店」をオープンさせていただきました。
出店エリアの拡大②中国地方(1)
また中国地方では、夏の時期に広島で、浴衣などの販売はよくやらせていただいたのですが、常設店は初めてとなりまして、倉敷美観地区に傘屋(北斎グラフィック)をオープンしています。
出店エリアの拡大②中国地方(2)
また、きものレンタル(wargo倉敷店)も、2月22日にオープンしました。
出店エリアの拡大②中国地方(3)
また、境港の水木しげるロードにも「北斎グラフィック」をオープンしました。
出店エリアの拡大③四国地方
四国の香川県琴平町のこんぴら参道に、「箸や万作」「北斎グラフィック」を2店舗オープンしています。
出店エリアの拡大④北海道地方
この結果、北は北海道から南は沖縄まで、日本縦断(での展開)を達成することができました。また、(スライドに)記載の店舗ですが、昨年札幌のすすきのに「きものレンタルwargo」をオープンしています。
取り扱い製品の拡大
「京のせんす処『白扇堂』」です。京都の「茶わん坂 北斎グラフィック」の店頭にせんすを置いているのですが、商況がいいと聞いていますので、今後は、せんすの専門店も出店する意向です。
大型店舗の出店
大型店舗です。物販店なのですが、軽井沢の銀座通りに初めての複合店舗の出店を計画しています。物件は契約済で、100坪を超えています。
2019年12月期見通し①
続きまして、2019年12月期の見通しになります。売上・利益ともに大きく増える予定です。売上は、昨年度の下半期にたくさん出店できたことでその店舗数が寄与して、大幅な増加見込みとなっています。また営業利益におきましては、前年以上の新出店も想定しており、出店費もかなり増加します。そこで、いわゆる資産に計上されずにコストにあたってしまう経費があり、このような伸びになっています。
出店計画
出店計画についてです。合計37店舗で、過去最多の出店計画を予想しています。
出店状況
出店計画における進捗状況となります。2月22日は、当社では初めての3店舗同時オープンでした。しかも、鳥取の境港、倉敷の美観地区、京都の清水エリアというところで、離れた場所でも3店舗同時にオープンできたため、今後の多店舗出店におきまして、いい経験ができたのではないかなと思っています。
また、直近におきましても、3月で多くの店舗がオープン予定です。さらに、軽井沢銀座通りでは複合店舗が4月にオープン予定で、6月には美観地区に「かんざし屋wargo」もオープン予定です。
経営方針①
次に成長戦略となります。当社の基本的な経営方針を、あらためて示させていただきました。
1つ目が、「短期的な利益を追求せず、長期の成長を優先すること」です。2つ目が、コストとして多少はPLにヒットするかもしれませんが、「積極的果敢にIT投資をすること」です。この2点を大きな経営方針とさせていただいています。
経営方針②
具体的な施策としましては、「弛まない業態開発とM&Aの模索」「弛まない出店ラッシュ」「冠婚葬祭着物レンタルの出店」です。
冠婚葬祭着物レンタルは、観光地に来る一般のお客さまの需要にあてるというよりは、いわゆる振袖や七五三、結婚式の訪問着といった、需要がインスタントにパンッと発生するようなものではないところでの着物レンタルです。
昔ながらの、いわゆる冠婚葬祭といわれているところの着物レンタルでは、なかなか売上が上がっていくスピードが遅いのですが、京都や大阪の心斎橋で展開している冠婚葬祭着物レンタルが、緩やかながらも力強く確実に伸びています。
単月黒字化まで1年以上かかるのですが、そのあとの利益効率を考えると、競争にあまりさらされないため、利益率が一気によくなります。当社の戦略としては、冠婚葬祭着物レンタルの立ち上がりはしんどいのですが、それでもやっていこうということで、経営の選択肢をとらせていただきました。
また、IT投資においては、いままでの当社の中で一番大きな投資となるのですが、ERPを導入する予定です。加えて、ITによる着物レンタルの業務フロー改善というところで、こちらも外注して、さらなる出店とさらなる効率化のために、IT投資をしようと考えています。
和心の今までとこれから
和心の今までとこれからです。創業してから、和のアクセサリーやOEMをこじんまりとやってきた時代(の売上高)は3億円でした。それに、かんざしや帯どめ、和の装飾品全般を取り入れて10億円。そして、和の土産、傘、箸、器、また着物レンタルを入れることで30億円までいきました。
みなさまがどう思われるかはわからないのですが、僭越ながら、当社では1,000億円、1兆円というところを本気で目指しております。(スライドに記載の)こういったかたちで進めていけば、達成できるのではないかなと思っていますので、こうして示させていただいています。
1,000億円に向けて実施する4つのこと
具体的に、売上1,000億円をどうやって実現するのかというところなのですが、(ポイントが)4つあります。
1つ目です。今までインバウンド、訪日外国人のお客さまが多いところ……そういったところは地価が上がっていたり、人気があって、なかなか出店が難しいのですが、京都、浅草、鎌倉、金沢といったところ以外のインバウンド未発達地域を中心に、大きく商業施設を開発して勝負しようと思っています。
2つ目についてです。重ね重ねになりますが、戦略的にM&Aを行って、衰退産業の事業再生を推進します。よく社内でも言っているのですが、日本の伝統産業は絶対終わらせません。衰退するような産業も、当社の力があれば復活できるので、どんどん積極的にやっていこうと思っています。
3つ目が、他社と連携するというものです。先日発表させていただきましたが、エボラブルアジア社、ビジョン社などと、荷物預かり会社であるツアーベース社(に共同出資しました)。よその会社さまと連携、協業してビジネスを発展させていこうという考えがありまして、ほかの業界でもどんどん模索しています。
4つ目は、今までは、販売員の採用と教育には自信があったのですが、出店スピードが速くなるにつれて、とくに京都の販売員の育成が少し難しくなってきているため、本社機能で和心大学を設置して、そこに販売員をプールしておいて、次の出店ラッシュに備えるということを考えており、もう作り始めています。
また、ミドル層、いわゆる部課長クラスの人数も少し足りないため、和心大学を次世代の幹部候補の育成機関としても考えています。このあたりは、弊社の社外取締役である白潟総研の白潟社長にお願いして、企図させていただきました。
1兆円に向けて
売上1兆円に向けてです。例えば、インバウンドで10兆円使う人がいるのであれば、1兆円は当社で使ってもらおうというところで、この(スライドの)ようになっています。
和の文化を感じるモノは、全部当社がやる。和の文化を感じるコトは、全部当社がやる。衰退産業は絶対につぶしてはならない。和の文化に関わることは全部やり、日本の文化を世界に広めようということで、記載させていただいています。
ご拝聴、ありがとうございました。以上となります。