男の子を持つお母さんから、「息子は小さな彼氏(恋人)」といった言葉を聞いたことがあるでしょうか。自分のことを無条件で自分を愛してくれる息子に対し、可愛さあまって“彼氏”のような感覚を持つお母さんが、実は少なくありません。筆者は出産前、「自分も息子を生んだらそうなるのかもな」と楽観的に捉えていました。

しかし出産後、この言葉の気持ち悪さが身に染みてわかるようになりました。これは、「誰かに求められる」「愛される」という承認欲求の対象を、恋人から家族に変わってしまった夫から、息子へと変換しているだけだからです。「息子は小さな彼氏」意識は、自分の意のままにならない夫への不満からきていることが往々にしてあるのでしょう。

そして息子を自分の意のままの男の子に育てたいという、強い支配欲もあるように感じます。たしかに息子は、自分のおっぱいを飲み、一緒にお風呂に入り、常に一緒にいる“彼氏”のような存在です。1歳~2歳になれば、意思疎通もでき、「ママ、ママ」と世界中の他の誰よりも自分を慕ってくれることになるでしょう。

しかし、あくまでも息子は自分から独立した一人の人間です。承認欲求や支配欲のはけ口として息子を利用してはいけないのだと、幼少期から母親が肝に銘じることは、とても大事なことのように思えるのです。

子育てにはこれと決まった正解がなく、自分が思った通りには絶対にいきません。だからこそ、我が家ではどんな教育や育て方をしていくか、家庭内の方針をどう定めるかを夫婦で考えるのは、とても大切な時間のように感じます。

秋山 悠紀