有機EL用燐光発光材料メーカーのユニバーサルディスプレイコーポレーション(UDC、米ニュージャージー州)が発表した2018年の通年業績は、売上高が前年比26%減の2.47億ドル、営業利益が同61%減の5674万ドルとなり、ガイダンスの範囲に収まった。黄緑色を含めた緑色発光材料の売上高は同24%減の約1.06億ドル(前年は約1.39億ドル)、赤色発光材料は同22%減の約4530万ドル(同約5840万ドル)となった。
同社は18年から新会計基準ASC606を採用している。18年の業績を以前の会計基準ASC605で換算すると、売上高は前年比3%減の3.26億ドル、営業利益は同7%減の1.36億ドルになるという。18年にはシャープと評価契約を延長し、韓国のサムスンディスプレー(SDC)および中国のビジョノックスとライセンス契約を更新した。
韓国向けが需要減、中国は倍以上に増加
UDCの18年売上高2.47億ドルの地域別内訳は、韓国向けが1.71億ドルで69%を占め、中国が約5200万ドルで21%、日本が約680万ドルで3%だった。韓国向けは前年比で41%減少したが、中国は2.1倍に増えた。
18年にはシャープが自社スマートフォン向けにフレキシブル有機ELを量産し、韓国のLGディスプレー(LGD)がテレビ用大型有機ELパネルの生産を拡大したが、UDCの業績は結果として旧会計基準で3%減少した。アップルiPhoneの18年新モデルの販売不振やサムスン自身のスマホ販売の不振がフレキシブル有機ELの需要を押し下げ、UDCの材料需要も伸びなかったとみられる。
ちなみに、UDCは19年1月にマイクロ有機ELディスプレーメーカーの中国Seeya Technologyとも新たに材料の評価契約を交わした。
19年はパネル各社の増産で36%増収見込む
UDCは19年通年で売上高3.25億~3.5億ドルを計画しており、中間値で18年から36%の増収を見込む。以前から有機ELの生産能力はインストールベースで19年末に17年末比で5割増加するとみており、これが増収に寄与する。
パネル各社の計画によると、LGDは韓国に現在保有しているテレビ用有機ELの月産能力7万枚(8.5世代=8.5Gガラス基板ベース)を13万枚まで増やす。7月から中国・広州に新工場を稼働させるためで、これによってLGDはテレビ用有機ELの販売台数として19年に400万台、20年に700万台、21年には1000万台を目指していく。
中国のBOEは、成都6G工場で量産立ち上げを進めているスマホ用フレキシブル有機ELについて、綿陽6G工場でも量産を開始する。ただし、いずれの工場もまだ歩留まりが高くないため、パネルの生産数量をどこまで増やせるかが課題になる。なお、18年末には3つ目の量産工場となる重慶6G工場も起工した(稼働開始は21年の予定)。
中国の天馬微電子は、湖北省武漢市に建設した6G有機EL工場の立ち上げを進めており、これに続く第2期ライン(フェーズ2)の建設を準備している。フェーズ2には145億元(約2400億円)を投資する予定で、フェーズ2が完成すれば、フェーズ1と合わせて月間3万7500枚のガラス投入能力を備えることになる。
サムスンディスプレーは新工場や新ラインの増強投資を凍結しているが、19年は新たにフォルダブル(折りたたみ可能な)スマホ用の量産を始めるほか、ノートPC用に15.6インチの量産も始めるため、工場稼働率が高まりそうだ。
青色発光材料は投入時期を明示できず
UDCは研究開発面について、青色燐光発光材料の開発には進捗があるものの、市場投入の時期はまだ明示できる段階にないと述べるにとどまった。また、ガスを用いたインクジェットで低分子材料を成膜するOVJP(Organic Vapor Jet Printing)技術については、開発用に現在2台のチャンバーを保有しているが、3台目も近いうちに必要になると述べ、3~5年後には量産に活用できるだろうとの見通しを示した。
電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏