3. 個人向け国債を「買ってはいけない」と囁かれる理由

一見お得に見える個人向け国債ですが、慎重な意見が出る理由には次の点があります。

3.1 金利の反映にはタイムラグがある

変動10年型は半年ごとに利率が見直されるため、直近の金利上昇がすぐに反映されません。

市場金利の上昇局面を逃すリスクがあります。

3.2 インフレで実質利回りがマイナスになる

名目利回りが0.5%でも、物価上昇率が2%であれば実質利回りはマイナスです。

インフレ下では国債だけでは資産価値を維持できない可能性があります。

3.3 中途解約時の利子差し引き

元本保証とはいえ、購入後1年を経過しても直近2回分の利子が差し引かれます。

途中解約すると利回りが大きく減少する場合があります。

3.4 他商品との機会損失

定期預金や個人向け社債、一部高配当株など、より高利回りの商品が存在する場合、国債に資金を固定することで「より利回りの高い機会」を逃す可能性があります。

4. 「個人向け国債」が向いているのはどんな人?

それでも、一定のケースでは個人向け国債が有効な選択肢になります。

どんな方におすすめできるのか、ご紹介していきます。

4.1 元本を減らしたくない高齢者や退職金受給者

安全資産として資産全体のリスクを低減できます。

4.2 投資初心者で堅実な商品から始めたい人

元本保証があるため、投資の第一歩として安心感があります。

今まで投資をしたことがないという方でも始めやすいでしょう。

4.3 金利上昇を見込み、変動型で長期保有を考える人

半年ごとに利率が見直される変動10年型なら、将来的に利率が上昇する可能性があります。

4.4 資産配分の一部としての位置づけ

個人向け国債は、「高いリターンは狙えないが、元本割れリスクが極めて低い」という特性を持っています。そのため、資産全体のポートフォリオの一部として組み込むのが賢明な活用法です。

株式や投資信託といったリスク資産で積極的に資産を増やす一方、個人向け国債で元本を保護するという役割を持たせることで、全体のリスクとリターンのバランスを効果的に取ることができます。

特に、高齢者や退職直後の世帯のように、資産を減らすことを避けたい層にとっては、この「元本割れリスクが極めて低い」国債は、資産全体の安定性を確保する上で非常に有効な選択肢と言えるでしょう。

5. まとめ:「買ってはいけない」は万人に当てはまらない

個人向け国債の金利は上昇傾向にありますが、「今すぐ買うべき」とも「買ってはいけない」とも一概には言えません。

安全性と利回りはトレードオフの関係にあり、資産を守る目的なら選択肢として十分検討に値します。

逆に、資産を増やすことが目的なら、他商品との比較の上で「買わない」という判断も立派な投資判断でしょう。

個人向け国債の特性を正しく理解し、自分の資産状況やリスク許容度に応じて賢く付き合うことが重要です。

参考資料

和田 直子