ミニLEDの実用化が本格化している。ミニLEDとは、一般的なLEDのチップサイズが300~350μmであるのに対し、100~200μmとチップ面積が小さいのが特徴だ。さらに次世代技術として、チップサイズがさらに小さい100μm以下のマイクロLED技術も大きな注目を集めている。ミニLEDに関しては、液晶ディスプレーのバックライトを皮切りに、LEDを画素に用いたLEDディスプレーや、車載、照明にも利用しようとする動きが広がっており、企業間の提携や商品化が相次いでいる。
有機EL対抗技術として期待
ミニLEDを液晶ディスプレーのバックライトに使用すると、液晶のコントラスト(明暗比)を向上することができる。ディスプレー業界では近年、液晶に代わって有機ELを用いるケースが増えている。これは、液晶に比べて有機ELはコントラストや色再現性が高く、バックライトが不要な自発光型であるためバックライトが不要でモジュールを薄くできること、さらには、液晶では実現が難しいフレキシブル性を付与できる(曲げられる)といったメリットがあるためだ。
だが、バックライトにミニLEDを採用し、これをローカルディミングという部分駆動技術と組み合わせて液晶ディスプレーに搭載すれば、画面が黒い部分だけバックライトを消灯できるため、コントラストを向上することができる。ミニLEDバックライトは、いわば液晶の「有機EL対抗技術」として活用することができ、有機ELへの代替を踏みとどまらせることができる可能性があるのだ。
中国BOEが米ベンチャーと合弁設立
液晶ディスプレーの生産で世界最大手の中国BOEは1月、米国のベンチャー企業であるロヒニ(Rohinni)と薄膜マイクロ&ミニLEDを用いた液晶バックライトを手がける合弁会社を設立すると発表した。合弁会社は中国に本社を置き、BOEがマジョリティーを確保して事業を主導する予定だ。
発表によると、合弁会社はBOEのディスプレー技術とロヒニの製造ノウハウを組み合わせ、32インチ以上の大型民生用と産業・車載用などの液晶ディスプレーを対象に事業を展開する。これにより液晶のコントラストをさらに高め、有機ELからの代替を狙う。ロヒニは、民生機器向けに±10μmの精度で毎秒50ダイを歩留まり99.999%で実装できる独自技術を有している。これは既存のピック&プレース技術より3~5倍高速であり、合弁会社はこの技術を活用してマイクロ&ミニLEDの商業化を進める。
米ベンチャーは車載にも展開図る
ちなみに、ロヒニは18年8月、カナダの自動車部品メーカー、マグナ・インターナショナルと米ミシガン州ホリーに自動車用照明の合弁会社「Magna Rohinni Automotive」を設立すると発表している。この合弁会社では自動車用にミニ&マイクロLED製品を設計・開発し、チップを高速実装して大量生産する工程を手がける見通し。これに際してマグナはロヒニに出資して少数株主になった。
またロヒニは、LED実装装置メーカーのキューリック&ソファインダストリーズ(K&S)とミニLED向けの実装ソリューション(ボンディング装置)「PIXALUX」を開発したことも発表済みだ。
中国企業が大型ディスプレーとして量産へ
中国のディスプレーシステムメーカー、ユニルーミンは、2月5~8日にオランダ・アムステルダムで開催される展示会「ISE2019」に0.9mmミニLEDディスプレーを展示し、量産を開始すると発表した。
発表によると、量産するミニLEDディスプレーは高いコントラストを実現でき、テレビに代わる大型ビデオウォールを可能にする。商業用途やプロ用ディスプレー、公共用途まで幅広いニーズに対応する。同社は「従来のSMD(表面実装型)ディスプレーの高コスト問題に対処し、高度な技術と製造コストの削減でLED産業を改革するきっかけとなる」と述べている。
台湾LEDメーカーはモジュール化済み
ミニLEDを画素に用いてディスプレーとして用いる提案は、台湾メーカーからも発表済みだ。LEDメーカーの台湾レクスター・エレクトロニクスは18年8月、ミニLEDチップを駆動回路基板に転写した「UFP I-Mini RGB display module」を発売した。UFPはUltra Fine Pitchの略。0.7mmピッチで基板にRGB(赤・緑・青)のミニLEDチップを実装し、背面に制御回路も搭載してモジュール化した。HDR 1000の高いコントラストを実現することができ、これを複数枚タイリングしたミニLEDディスプレーを試作した。
このほか、RGBのミニLEDチップを搭載した3 in 1パッケージ新製品として、0.4mm角の「0404RGB」と0.6mm角の「0606RGB」も商品化済みで、主に屋内外向けのフルカラーパブリックディスプレー用に拡販している。
AUOがゲーム用モニターに採用
このレクスターのグループ会社である台湾の大手ディスプレーメーカー、AUオプトロニクス(AUO)は、18年10~12月期末からミニLED直下型バックライトを採用したゲーム用液晶モニターの量産を開始した。
一般的な液晶バックライトは、液晶パネルの一辺にLEDチップを数個並べ、これを導光板と呼ばれる光学フィルムで光をパネル全体に行き渡らせる「エッジライト型」が主流だ。だが、直下型バックライトは、液晶パネル直下にLEDを並べて光を照射するため、LEDの搭載個数が多くなり、高コントラストだが、コストが高くなる。
AUOは、このゲーム用モニターについて「高価なハイエンド品であるため数量はまだ限定的だが、今後もニッチ市場をターゲットにした新製品(ミニLEDバックライト搭載製品)を発売していく」と述べており、ノートパソコンのハイエンド機や車載ディスプレーなどに搭載を広げていきそうだ。
電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏