その内容は、同社が大日本住友製薬(4506)と共同開発していた新薬が、主要評価項目を達成できなかったという衝撃的なものでした。これは、ベンチャー企業であるサンバイオ社にとって極めて大きな痛手であり、事業計画そのものを見直す必要に迫られる“大事件”です。
実は、同社は昨年11月に今回良好な結果を得られなかった開発新薬に関し、最初の試験で好結果を得たことを発表していました。そして、それがトリガー(引き鉄)となり、当時4,000円前後だった株価は急騰し始め、1月21日には最高値12,730円を付けたのです。
株価を3倍超に押し上げた期待材料があっという間に剥落したのですから、株価暴落はいたしかたないと言えそうです。
途方もない信用買い残が示唆する”悲劇”
さらに、暴落直前(1月25日付)のサンバイオ株の信用取り組み状況を見ると、大量の信用買い残がありました。信用売り残の1,300株に対し、買い残は実に344万4,500株、信用倍率は2,649倍という気が遠くなる途方もない数字です。
信用取引(買い)をザックリ言うと、証券会社から借り入れた資金でレバレッジをかけて投資することです(注:証拠金が必要)。つまり、借金をして株を買うことにほかなりません。この場合、株価が上昇すればいいのですが、株価下落の場合は決済を迫られて大きな損失を被ることになります。
今回のサンバイオ株の暴落により、多くの個人投資家が莫大な損失を被るだけでなく、中には、自己破産に追い込まれるケースが出てくる可能性もあるでしょう。行方不明になる人が出ても不思議ではありません。この異常な信用倍率は、既にそれを暗示していると考えられます。
実は2年半前にも起きていたベンチャーバイオ株の大暴落事件
東証マザーズに上場している銘柄は、ハイリスク・ハイリターンの下、その多くが将来の大きな成長の可能性を秘めています。その代表例の1つが医療バイオ関連株ですが、今回はそのハイリスクの面が出てしまいました。
しかし、振り返ってみると、今から約2年半前にも、当時上場していたアキュセラ株(注:現在の窪田製薬ホールディングス)で同じような事例がありました。新薬試験の不具合が発表された後、6日連続のストップ安で株価が7分の1に暴落した“アキュセラ・ショック”です。
その時、多くの個人投資家がベンチャーバイオ株の恐ろしさを経験したはずですが、残念ながら、今回も同じ悲劇が起きたようです。
ベンチャー企業への投資リスクを改めて考える機会に
サンバイオ株に関しては、昨年末から多くの証券会社が投資判断や目標株価を引き上げたりするなど、株価上昇を煽っていたことは否めません。こうしたレポートを読んで投資した人も少なくないでしょう。それでも、株式投資において最後は「自己責任」なのです。
今回の暴落で莫大な損失を被った人には申し訳ないとは思いますが、株式投資のリスク、とりわけ、新興市場のリスクを再認識させられる良い事例になったと言えましょう。今一度、新興株への投資リスクについて深く考えてみましょう。
葛西 裕一