2019年1月30日に行われた、キヤノン株式会社2018年12月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料

スピーカー:キヤノン株式会社 代表取締役副社長 CFO 田中稔三 氏

2018年12月期決算説明会

田中稔三氏:キヤノン株式会社の2018年12月期の連結決算がまとまりましたので、ただいまお配りしました資料に基づき、その概況につきまして、私より説明をさせていただきます。

今案内がございましたとおり、持ち時間は30分でございます。私の説明を20分程度で終えまして、残りの10分でみなさまからのご質問にお答えしたいと思いますので、よろしくご協力のほどをお願い申し上げます。

2018年実績のポイント

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それではまず、2018年の業績のサマリーでございます。

2018年の世界経済は、とくにこの年の後半に、米中の貿易摩擦に端を発します中国経済の減速や、あるいは通貨下落によります新興国での景気低迷があったものの、米国が良好な雇用環境を背景に牽引役となりまして、全体では総じて緩やかな回復基調が続きました。

そうしたなか、当社の5ヶ年計画「グローバル優良企業グループ構想」PhaseⅤの折り返しの年にあたります2018年は、引き続きまして現行事業の再強化と新規事業の拡大を進め、事業構造の転換に取り組んだわけでございます。

全社の収益基盤であります現行事業におきましては、複合機、あるいはレーザープリンターなどのオフィス機器は、業務の効率化を求めるユーザーニーズや新興国での需要に支えられまして、新製品が堅調に推移いたしました。また、半導体露光装置も、メモリー需要をとらえまして、販売台数を大きく増やしております。

また、新規事業につきましても、メディカルやネットワークカメラが、市場の拡大や新製品の投入効果などにより売上を伸ばしております。

しかしながら一方では、レンズ交換式カメラは、エントリーモデルなどを中心とした市場縮小の影響や、あるいはミラーレス新製品の発売を前にした買い控えによりまして減収となりました。有機EL蒸着装置につきましても、パネルメーカーの設備投資が一巡したことにより、前年の売上を下回っております。

事業構造の転換は、着実に進んでおりますものの、外部環境悪化の影響を受けまして、全体では対前年では減収になっております。

一方、利益につきましては、採算のよい新製品が売上を伸ばしたメディカルや産業機器におきまして、プロダクトミックスが改善したこと、あるいは全社を挙げての経費の改善努力によりまして、売上の減少影響をカバーしまして、2期連続の増益となっております。

2018年 全社PL(年間)

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2018年より、サービスの売上原価を独立表示することに伴いまして、従来は販売管理費に計上しておりましたサービスコストの一部を売上原価に組み替えておりますけれども、この影響を除いた売上総利益率は、そこの欄外に書いてありますように49.4パーセントということで、前年を0.6パーセント上回りまして、原価の改善も順調に進んでいるということでございます。

以上によりまして、2018年の実績は、売上高が対前年3.1パーセント減の3兆9,519億円となりましたが、営業利益が対前年6.6パーセント増の約3,430億円。また、営業利益率も前年の7.9パーセントから8.7パーセントへと改善しております。

2018年 セグメント別PL(年間)

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続きまして、2018年の年間のビジネスユニット別の売上状況でございます。

まず、オフィスビジネスユニットでございます。複合機におきましては、次世代カラー機が、個人認証とプリント管理等のソリューション機能を業界で唯一標準装備しているという優位性に加えまして、外部クラウドサービスとの連携を図って利便性を高めたことによりまして、売上を伸ばしております。

レーザープリンターにつきましては、省エネあるいは省スペースに優れた普及価格帯の新製品を中心に販売台数を伸ばしたことに加えまして、消耗品の売上も堅調に推移いたしました。

以上の結果、オフィスビジネスユニットは前年を上回り、わずかですが増収を果たしております。

次に、イメージングシステムビジネスユニットでございます。レンズ交換式(デジタル)カメラでは、成長が続いておりますミラーレスカテゴリーにおいて、新製品を相次いで投入いたしまして、ラインナップの拡充を図っております。

上期に発売いたしましたエントリーのミラーレス「EOS Kiss M」でございますが、上位機種と同等の撮影機能と、初心者でも使いやすい操作性によりまして、順調に売上を伸ばしております。

さらに10月には、新たなマウントを採用し、大幅に光学性能を向上させた、当社初となるフルサイズのミラーレスモデルの「EOS R」を発売いたしました。ミラーレス市場での当社のプレゼンスを、大きく向上させたわけでございます。

しかしながら、このエントリーモデルを中心としたレンズ交換式カメラ全体の市場縮小の影響を受けたことと、「EOS R」の発売が年末でございましたので、業績への貢献が非常に限定的だったことによりまして、イメージングシステムビジネスユニットの売上高は、対前年で11.3パーセントの減収という結果になりました。

次に、メディカルシステムビジネスユニットでございます。高度な医療を求める先進国や、医療インフラ整備を進めております新興国での需要の拡大が続くなか、当社は超音波診断装置やX線の血管撮影装置等の新製品を発売して、製品のラインナップの拡充を進めています。CTやMRIまで含めたすべての画像診断装置におきまして、高精細な画像に優位性のある製品が出揃い、市場での認知度を高めています。

国内市場におきましては、医療業界の環境変化を受けまして、高額な装置を中心に投資が先送りされた影響を受けていますが、こうした新製品が海外では順調に売上を伸ばしたことによりまして、メディカルシステムビジネスユニットの売上高は前年を上回った増収を達成しています。

最後に、産業機器その他ビジネスユニットでございます。半導体の露光装置が高い生産性と顧客へのきめ細かなサポート体制によりまして、メモリーを中心とした旺盛な需要を取り込んで販売台数を大きく伸ばしています。

一方、フラットパネルディスプレイの露光装置と有機EL蒸着装置の売上は、パネルメーカーの投資の一巡の影響を受けまして減少しています。以上の結果、産業機器その他ビジネスユニットの売上高は、対前年1.6パーセントの増収となっています。

2019年見通しのポイント

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続きまして、今年2019年の、年間の通期業績見通しでございます。

その前提条件でございます今年の世界経済の見通しでございますが、堅調な個人消費に支えられて、米国が引き続き牽引していく見通しでございますけれども、米中の貿易摩擦のさらなる激化や、中国および新興国での景気減速の懸念、それからブレグジットに代表されます欧州政治の混迷等の多くのリスク要因により、不透明感がますます高まっている状況でございます。

為替レートの前提につきましては、こうしたマクロ環境あるいは足元の状況を勘案いたしまして、ドルは105円、ユーロは125円と、2018年の実績に比べますとそれぞれ約5円の円高で設定をしています。

通期の業績のサマリーでございますが、このように大変厳しい経営環境を踏まえまして、今年は収益力を再強化することがもっとも重要な課題であると考えています。為替の円高の影響を受けまして、結果的には減収減益の見通しではありますが、売上につきましては、現行事業でもカラー複合機あるいはミラーレスカメラ等、拡大が期待できる事業におきましては、今年も積極的に新製品を投入して伸ばしてまいります。

また、ネットワークカメラやメディカルなどの新規事業につきましても、非常に良好な事業環境を活かしながら拡販を進め、全社の売上の最大化を図っていきたいと考えています。

利益面では、経費につきましても、開発から生産・販売に至るすべての事業活動において選択・集中を徹底させながら効率性を高めるとともに、生産におきましては引き続いて内製化の推進を続け、原価の低減を加速させることで、収益性のいっそうの向上を図ってまいります。

2019年 全社PL(年間)

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以上によりまして、2019年の売上高は対前年1.3パーセント減の3兆9,000億円、営業利益は同じく5.2パーセント減の3,250億円となる見通しでございます。今年は、先ほど申した5ヶ年計画の4年目にあたります。5ヶ年計画で掲げました戦略的大転換を加速するために、引き続いて事業ポートフォリオの転換を進めながら、グループを挙げて収益力の再強化を図っていきたいと考えています。

2019年 セグメント別PL(年間)

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続きまして、今年(2019年)12月期の、ビジネスユニット別の売上の状況でございます。

まず、オフィスビジネスユニットでございます。為替の円高の影響によりまして減収の見通しでございますが、複合機では、オフィスへのセキュリティ強化が求められている中で、販売が好調な次世代カラー機をベースに、プログラムの改ざんの防止や不正アクセス検知などのセキュリティ機能を追加した新しいモデルを投入して、拡販を図ってまいります。

レーザープリンターにつきましては、純正消耗品費率を高めるなど、収益性の改善を目指してまいります。以上によって、オフィスビジネスユニットでは、対前年2.4パーセントの減収となる見通しでございます。

次に、イメージングシステムビジネスユニットでございます。レンズ交換式カメラは、市場縮小の影響を受けて減収の見込みでございますが、当社は今年を、将来の事業の安定化に向けた種まきの年と位置付けまして、ミラーレスカメラのラインナップの拡充をさらに加速させていく予定でございます。

昨年下期に投入いたしました、当社初のフルサイズミラーレスモデルの「EOS R」は、マウントを一新して光学性能を高めた点が市場からは評価されまして、順調に売上を伸ばしています。

この新製品を柱にいたしまして、今年もレンズを含めたミラーレスの新製品を順次投入して、市場でのプレゼンスを高めていきたいと思っています。また、採算性の良いフルサイズモデルの売上構成比を高めるとともに、レンズの販売にもつなげて、事業全体の収益性の再強化を目指していきたいと考えています。以上によって、イメージングシステムビジネスユニットの売上高は、対前年3.9パーセントの減収となる見通しでございます。

次に、メディカルシステムビジネスユニットです。昨年までに投入いたしました新製品の販売許可を海外の全地域で取得できたことから、年間を通して、一連の新製品の本格的な拡販を図ってまいります。加えて、シェアの向上を目指す海外市場におきましては、北米を中心とした販売人員の増強、あるいは南米での代理店の現地法人化等、販売体制の強化も進めながら、新製品の拡販を加速していきたいと思っています。

以上によって、メディカルシステムビジネスユニットの売上高は、対前年9パーセントの増収となる見通しでございます。

最後に、産業機器その他ビジネスユニットでございます。半導体の露光装置は、イメージセンサーや車載向けデバイスの需要が拡大して、前年を上回る販売台数を計画しています。またFPD露光装置も、大型テレビ向けの需要が下支えすることによりまして、露光装置全体では、前年並みの売上となる見通しでございます。

有機ELの蒸着装置は、パネルメーカーの設備投資の調整局面が続き、売上が減少する見込みでございます。しかしながら、ネットワークカメラにつきましては、拡大する需要を当社の強みであります豊富なラインナップで取り込んで、引き続き2桁パーセントの成長を目指してまいります。以上によって、産業機器その他ビジネスユニットの売上高は、ほぼ前年並みとなる見通しでございます。

なお、以降には参考資料が添付されていますので、後ほどご確認いただければ幸いでございます。私からの説明は以上でございます。どうもご清聴ありがとうございました。

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