4.3 家計収支は平均で3万4058円の赤字
- ひと月の赤字:3万4058円
65歳以上の夫婦の家計状況を詳しく見ていくと、毎月の収入は25万2818円の一方で支出合計は28万6877円です。
支出の内訳を見てみると、食費や住居費、光熱費など日々の生活に必要な消費支出が25万6521円、税金や社会保険料などの非消費支出が3万356円でした。
「月に28万円も使わない」と感じた方もいるでしょう。家庭の状況はそれぞれ異なるので、「我が家の場合」で考えることが重要です。
ただし、エンゲル係数が29.8%とやや高めである点に注目しましょう。
エンゲル係数は、家計の消費支出に占める食費の割合を示すもので、一般的にこの数値が高いほど生活水準が低い傾向にあるとされています。65歳以上の夫婦の場合、食費が生活費の中で比較的大きな割合を占めていますね。
子どもたちが巣立てば食費は下がると考えがちですが、
- 料理の回数が減って外食や総菜の利用が増える
- 宅食を利用する
- ミールキットの利用が増える
などにより、食費が増えることはめずらしくありません。思った以上に生活の質を下げるのは難しく、現役時代の生活費が続くこともあるのです。
さらに、平均消費性向が115.3%と100%を超えており、収入に対して支出が多い状態、つまり赤字になっていることもわかります。
年金生活になると、現役時代のような安定した収入が見込めなくなることが多いため、このような毎月の赤字は、長期的に見ると貯蓄残高を減少させてしまいます。
5. まとめにかえて
本記事では、シニア世代のお金事情についてお話していきました。
70歳代の家計は年金が主な収入源となっており、不足分は貯蓄を取り崩している世帯が多く存在します。老後を迎えた時に貯蓄額が不足していると、生活レベルを落とさなければいけなくなります。
そういった状況を避けるためにも、現役時代から老後へ向けた準備をする必要があります。
また、今後さらなる物価上昇や医療費・介護費の増加も考えると、今まで以上に支出は圧迫される可能性があります。
ご自身に合った方法で準備をしていくことが、老後生活を豊かに過ごす鍵となってくるでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」
- 厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」
- J-FLEC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」
- 厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」1 主な年齢の平均余命
長井 祐人